塔のふもとまで辿りつき、僕たちは一斉に息を吐いた。



つ、着いたぁ~


塔のふもとまで辿りつき、僕たちは一斉に息を吐いた。



やっぱり、数が多かったね。なんとか倒しながら来られたけど。





ベシワク、回復魔法かけたげるよ!





コペの魔力量は大丈夫?





大丈夫!・・・だけど、少し休んだ方が安心!





オレも光線銃の点検しとくか。





もしコワれてたらタイヘン、タイヘン!


少し休んだあと、僕たちはいよいよ塔に入った。



魔力量だけど、二人にはこのあと頼みたいことがあるんだ。この先はなるべく温存してほしい。





頼みたいことって?





そうだなぁ。この町は結界に覆われてただろ。ああいうもの、範囲が小さければコペも張れる?





人一人が入れるくらいのモノならね。





それを張ったまま、水を作り出す魔法を使える? この前、雨を降らせたみたいにさ。





ムリムリ! 結界を張るのは集中力がいるんだ、同時になんてできないよ。





水を作り出すだけならオレでもできるぜ。





本当?





コペの魔法より小規模になるがな。大火事は無理でも、キャンプファイアーくらいなら消せる。だが、結界と水魔法で何する気だ?





うん。リリーシカを止めたいんだ。


ルーガルを止めるためにここまで来たけど、それだけでは不十分だ。リリーシカを何とかしなければ、ルーガルは考えを変えないだろう。



止めなきゃならない。でも、傷つけたくはない。だから話し合いの余地を作るために、いったん動きを封じたいんだ。





動きを封じる? どうやって?


ヤムカがいぶかしげに尋ねたときだ。
僕たちの頭上に影が落ちた。



よけて!





なんだ・・・!?


突然現れた巨大な拳が、僕たちのいた場所を叩き潰していた。
とっさに後ろへ飛んだので、無事だったけど――



ふふふ・・・





・・・・・・


死角から現れたのは、大きな魔物を引き連れた、髪の長い魔物だった。
髪は腰の下までもを覆い、その先から蛇のしっぽが見えている。



おまえは〈仁者のもてなし〉を奪った・・・!





我が名はユヌグット。リリーシカ様は今、客人の相手で忙しい。虫けらに会うお暇はない!





ぐぉおおお!


ユヌグットが指揮するようにしっぽを振った。
もう片方の魔物が大声で吠え、巨大な拳を振り上げる。
僕たちが避けた一瞬のち、拳は床を殴りつけた。
動きはのろいが、大きさが大きさだ。もし食らったら、ぺしゃんこになってしまうだろう。



魔物が魔物を使役してるのか!?





そいつ、もしかしてゴーレムか?





いかにも。これは我が愛しの人形、名をポウという。





へえ、魔物にも趣味のいい奴がいるんだな。オレも人形遣いなんだ。だが残念、人形遣い同士じゃ勝負にならねえ。





ほわ?


突然、ヤムカがグージィをつかんで塔の窓から投げた。
グージィは悲鳴を上げながら飛んでいき、すぐに視界から消えた。



ほわわわあぁぁぁ・・・





ヤムカ!? なんで!?





確かなる者、導く者よ、
うつろは忘る、一朝の夢を。
操人形解除〈アンチ・マリオネット〉!


ヤムカの呪文が唱えられる。
と同時に、ゴーレム・ポウが崩れ落ちた。



・・・? ふしゅぅううう





ポ・・・ポウ!





この呪文、一定範囲内の人形全部に効いちまうのが困りもんだ。だがどうせ、ポウとやらが床にひび入れてくれたせいで、この先オレの人形は進めねえしな。


戦闘用人形は頑丈な分、とても重い。
見ると、さっきまで光線銃を構えていた人形たちが、そろって腕を垂らしていた。その手からヤムカが光線銃を奪い、構えた。



食らいな!


放たれた光線がユヌグットを襲う! しかし――



ふっ・・・そんなものか?


光線をまともに受けたのに、ユヌグットは平然と立っている。
確かに光線はユヌグットの体を切り裂いた。しかし断面はすぐにくっついたのだ。名残として、体の表面が波打っている。



私は水の魔物。形なきものを壊すことはできんぞ。





チッ。光線銃が効かねえ。





でもコアは形があるはずだ。正確に撃ち抜けば・・・





いや、光線銃じゃ無理だ。





形ないものは壊せない、なら、形があればいいんだよね?





豊かなる者、流れる者よ、
知恵と豊穣もたらす者よ――





実体化魔法だな!? させん!


ユヌグットの手のひらに、水の塊が生み出される。
放たれた水魔法の攻撃を、ヤムカが戦闘用人形を盾に受けた。



邪魔させっかよ。





幻実体〈マテリアライズ〉!


コペが呪文を唱えると、ユヌグットの体が波打つのをやめる。



この――!





ウッ!


ユヌグットがコペとヤムカを気にしている間に、僕は相手の死角に回っていた。
背後から突き刺した剣をねじって、ユヌグットの体を斬り裂く。隠れていたコアが現れた。



えいっ!





うぎゃああああ!


コアを叩き割ると、ユヌグットは悲鳴を上げて姿を消した・・・。



ごっ、ごシュジン~!


僕たちが戦っている間に、投げ飛ばされたグージィは塔まで戻ってきたようだ。小さな体で駆け寄ると、怒った顔でヤムカをにらんだ。



ワタシ! ナニかしましたか!?





ああ、悪かったな。解除呪文を唱えるのにそばにいられたら困るからさ。





ヒドい、ヒドい! もうごシュジンとはクチをききません!





そう言うなよ。おまえが動かなくなるのがヤだったんだって――





キョウからはこのヒトをごシュジンにします!





は?


グージィが僕にしがみついた。器用によじ登り、僕の肩の上に収まる。



は?


ヤムカがにらんでくる。
でも正直、前もって説明しなかったのが悪いんじゃないかな・・・



グージィ! あたしの肩も空いてるよ!


コペが目をキラキラさせながら手を伸ばした。
ヤムカはコペのこともにらみ始めた。
