ジャハの壁のすぐ手前にある一般家屋。
その一室が、軍属魔法師たちの臨時の職場になっていた。
僕たちはその部屋に突入した。



ほっ、ホントにやんのかよ!? 軍属魔法師を襲撃なんて・・・





大丈夫、勝てば官軍って奴!





向こうはリアルに官軍なんだよ!





今暴れても、あとでジャハを解放すれば罪にはならない。





なるからな!? だいたいその理屈、解放できなかった場合はどうなんだ?





負ければ賊軍! さあ行くよ!





さあ行くよ、じゃねえ! ああもう、こうなりゃヤケだ!!


ジャハの壁のすぐ手前にある一般家屋。
その一室が、軍属魔法師たちの臨時の職場になっていた。
僕たちはその部屋に突入した。



なっ、何者だ!





このヘヤにゴニン、オクのヘヤにゴニンです!





援軍が来る前に倒そう。ヤムカは左半分を!





確かなる者、導く者よ、
うつろを満たし駆動せよ!
──操人形〈マリオネット〉!!





うわあああっ!?


奇襲が成功し、部屋にいた五人はろくな抵抗もなく倒れた。
隣の部屋から残りの魔法師たちが駆けつける。



魔風斧〈ウィングラックス〉!





魔氷槍〈アイスランス〉!





火炎球〈フレイム〉!


魔法師たちがヤムカの戦闘用人形を攻撃する。だけど人形はびくともしない。



氷結界〈グラキエス〉!


一人の魔法師が、剣を抜いた。
そして氷魔法で僕の足元を固め、飛びかかってきた。
僕は剣で受けたが・・・速い! 一瞬遅ければ斬られていた。



ほう、受けたか。見かけによらず力があるな!





あなたこそ。魔法師が剣を使うと思わなかった。





俺はダグラス、魔法剣士だ。魔法師は詠唱時間が無防備になるからな。軍の魔法師部隊には、物理戦の得意な奴が一人はいるんだよ。





その説明してる間に詠唱すべきでは?





この説明しなきゃどうにも中途半端呼ばわりされるもんでな。


複雑な思いがあるらしい。



もう多芸で無芸とは呼ばせない! 食らえ、これが魔法師の斬撃だ!!


鋭い一閃がひらめき、僕の剣が弾き飛ばされた。
しかし刃が振り下ろされる直前、魔法剣士の体は、力が抜けたように崩れ落ちた。



くかー・・・





眠り魔法!? みんな気をつけろ、もう一人隠れて――





――眠り〈ソムニア〉


仲間に警告しようとした魔法師は、最後まで言えずに倒れた。
敵が全員床に沈んだところで、じわりと、何もない空間からコペの姿が現れた。



やぁやぁ我こそはコートン山地一の魔法師、眠り魔法のコペ!





そんな二つ名が?





みたいな口上をやりたかったのに、誰も聞いてない!





君が眠らせたからね。危ないところだった、助かったよ。





ベシワクの作戦がよかったんだよ。透過魔法を使いながら同時に眠り攻撃、意外とできるもんだねえ。





僕のアイデアじゃないけどね。


前に戦った盗賊たちが使っていた作戦のアレンジだ。
あの盗賊たち、無事に山を下りられただろうか。



荒らかなる者、くるめく者よ、
勇気と力もたらす者よ、
石の硬きもやがてはひずむ、
時のかなたに残るはしずく。
――氷融解〈リキシムス〉


コペの呪文で、僕の足を固めていた氷が溶けて消えた。



ありがとう。





どういたしまして。ところで、ジャハが見えるのはこの窓だよね?
・・・うん、結界、なくなってるよ!





術者が意識を失って、張り続けられなくなったんだな。暴れた甲斐があったぜ。





よし、今のうちに通ろう!


僕らは部屋をあとにして、ジャハの壁に急いだ。
──同時刻、ジャハ中央・翠緑の塔──



やあ、リリーシカ。いい部屋だね。





・・・やあ、ルーガル。何しに来たの?





何しに? そうだな・・・





君と遊びに?


