コペのほかに誰か住んでいるにしては、人の気配がないけど・・・。



豊かなる者、流れる者よ、
知恵と豊穣もたらす者よ、
数限りなし、なんじの救いし身は。
傷つきし魂に触れる指先に今、
清らかに癒やし与える息吹満ちた。
やさしき腕に心安らぐ楽しき日だ。
――回復〈メディキニア〉





終わったよ。足はどう?





――痛くない。腫れも引いてる。これが回復魔法・・・





これで、ゲンカクマホウとおさらばですね!





コペ、すごいなあ。僕と同じくらいの年なのに。この病院、君が一人でやってるんだろ?





本当はあたしじゃなくて、あたしのおじいちゃんの病院なんだけどね。





おじいさん?


コペのほかに誰か住んでいるにしては、人の気配がないけど・・・。



半年前に、死んじゃったんだ。





そうだったのか・・・





それで、あたしが後を継いだんだ。あたしじゃ、お客さんが来ないんだけどね。





暗い話になっちゃったね! ベシワク、おなかすいてない? うちでご飯食べてってよ!





え? 悪いよ、大変だろ?





それが、そうでもないんだなあ。


コペはにやりと笑うと、戸棚から布を取り出した。



この布、知ってる気配が・・・?





ここに取り出したるは何のへんてつもないテーブルクロス! これをテーブルにサッとかけて、ひとたび呪文を唱えれば・・・





テーブルクロスよ、食事の支度!





これこの通り、あっという間に豪華な食卓の出来上がりな~り、っと!





コペの口調が変な感じに!





えっ、魔法の食卓さしおいて驚くほど変だった!?





そ、そうだった。コペ、その布って・・・





えっへん、うちに代々伝わるマジックアイテムだよ!
この〈仁者のもてなし〉があるおかげで、年中閑古鳥でも毎日おなか一杯食べられるんだ。





それ、もしかして魔結晶?


布をまとう不思議な気配。
島で聖殿に足を運ぶたびに感じた、〈勇者の魂〉と似た感覚だ。



あれ、わかっちゃった? ずっと昔のご先祖様に、すっごく魔力の強い人がいたらしくてね、その人が亡くなったときに体から出てきたんだって。





ヒトのカラダからデたものを・・・ショクタクに??





あっ、でもほら魔力の塊だからね! 物理的な汚染や損傷は受けないし、衛生面の心配はないよ!


コペが慌てたように言うが、僕は目の前に並ぶ料理の清潔さよりも、気になることがあった。



魔女リリーシカは、魔結晶を集めている。もしかしたらここにも現れる?





コペ、あのさ!





なあに、ベシワク?





仲間をここに呼んでもいいかな。相談したいことがあるんだ、その〈仁者のもてなし〉について。


