恐る恐る封を切った。
兄さんはずっとこっちを見ている。
どうせ今見せなくても、あとで盗み見られるだけだ。



アヤを、殺す…どうして…?
あの後、すぐに追い出されて理由を聞けなかった…





ハロルド





…父様





10歳おめでとう、愛しい息子よ





あ、ありがとうございます!





…そういえば、殺すとなると、圧倒的に難しいのが父様だ。だって…





盗聴器…いったい誰が仕掛けているんだろう…





やあハロルド、そんな顔してどうしたんだ?





そういえば、兄さんは俺がどんな動物をこっそり飼おうと、すぐに見つけ出して始末した…まさか…





に、兄さん、あの…





なんだい?弱みでも握りたいのかい?





ち、違う…昨日のことなんだけど…





ああ、あれのことか





やっぱり…





お父様が手紙を寄越した事だろう?一応お前当てにも来ていたよ。隠そうと思っていたが、やっぱり知ってたのか





あ、あれ…?





…チッ
ほら、これだ。受け取りなよ…
流石に中身までは見てないからさ





あ…ありが…とう…





お父様も変だよな?大至急で手紙を寄越したって聞いたのに、書いてあるのは日常の事ばかりだった





な、なんでだろう…な…





「息子二人が寂しがってないかと思って」って…まあ、今までそういうことはたまに言ってきたけどさ、手紙は初めてだ。よっぽど心配性なんだね





…





…何してるんだ?さっさと開けなよ





えっ…





なんだ?お父様の手紙を読まないつもりか?





ち、違う…!わかってる…今読むよ…


恐る恐る封を切った。
兄さんはずっとこっちを見ている。
どうせ今見せなくても、あとで盗み見られるだけだ。



”親愛なる我が息子ハロルドへ―”


兄さんに聞こえるよう、小さな声で音読した。



”長く家を空けるから、寂しがってないかと心配です。
さて…この手紙を書いたのは他でもない、君のためだハロルド。
私は君を…”





”…正式な跡継ぎにしようと思う”





なん…だって…?





”君は聡明で、何より伸びしろがある。そういう点でケヴィンよりも相応しいと判断した。考えておいてくれ。
父より”





………ありえない、絶対にありえない!
僕は今まで何一つ間違った選択なんてしていない!お父様に尽くしてきたのに!





……はは、そうか、なら、それならば





息子が僕一人だけになればいい話だな?





…!!!





…冗談だよ。ああ、大体わかった。じゃあね、ハロルド


そういうと、兄さんは部屋に戻っていく。
心なしか背中が少し丸まっているように見えた。



…


俺も手紙をしまって、部屋に戻ろうとした。



あれ…?
封筒の中に何か…書いてある?


透かしても外からは見えなかった。
特殊な紙を使用しているらしい。
急いで部屋に戻り、中身を覗いた



えーっと…何々…


まさか、これに気づくとは予想外だ。
でも、そうでなくてはね?上手くおやりよ、ハロルド
私は君を大いに応援する。
かの師にも、そう伝えなさい。



…これって!?





間違いない…この内容は…
盗聴器のことだ…父様が仕掛けてたんだ…!





それに、気づいたって……
俺が盗聴器に気づいたことがバレたんだ…
でもなんで…?アヤと会ってから、長い間無言だったから…?そこも、やっぱり聞かれていたってことなのか…?





で、でも…目的はバレてなさそうだ。応援するって、書いてあるし…





上手く…やります…やって見せる…!





どこまで知られているか、わからない…





あれから、一つも俺のやること成す事に口出ししてこない…
俺が盗聴器について話題に出そうとしても、何も知らない振りをする…
どうしてなんだ?
目的は知られてないはずだが、どこまで白を切るつもりなんだ?





…何か考え事かな?君のためのパーティなんだ、今日くらいは何も考えず楽しんだほうがいい





あ、はい、そうですね!ごめんなさい父様!





うんうん…勉強もいいが、息抜きも大切だからね…
では、私は少しばかり挨拶をしに行くよ





いってらっしゃい、父様!





何が、目的なんだろう…
まあ、今は楽しむ振りをしないと。
母様にまで怪しまれちゃたまらないし…


父様は、おそらく母様に内緒で盗聴器を仕掛けている
母様はこそこそするのを嫌うから



ああ、ハロルド!確か10歳のお誕生日だったわね?おめでとう





母様…!あ、はい。ありがとうございます!





これからも、いい子に頑張りなさいね?
応援していますわ





ええ、勿論!





私も、久々に皆様とお話してきますわ。
貴方も、話しかけられたら失態がないように。さっきのように、ぼーっとしていてはいけないのよ、いい?





はは…申し訳ありません、もうしません。ところで、最近父様とは話されたんですか?





そういえば、あの人と会話するの何年振りかしら…それが何か?





行ってあげてください、きっと父様も喜ぶでしょう!





そうね、ふふ…行ってくるわ。ありがとうハロルド





ええ、いってらっしゃい!





やはり、言ってない…か…まあ探りを入れるのはここまでにして、パーティに集中しよう…





次、アヤに会ったら、ちゃんと理由を聞くんだ…


