――2月18日、水曜日。
――2月18日、水曜日。
昨日は夜更かししちゃったから、少し眠い。あの『世界の魔術大全』って本面白いな。何か魔術を題材にした物語作ってみたくなる。
朝の支度を終え、カバンを持つ。忘れ物がないか振り向いた時、机の上のあの箱が、朝日を受けてかギラリと光った。



あれ?
今日もるり来てない。





メールしたら
まだ体調が悪いって
返信あったよ。





2日続くと
ちょっと心配ね。





今日帰り寄ってみようか?





私もそうしたいけど、
今日は用事があるから
やめとくね。
るりによろしく言っといて。





うん、分かった。
じゃ、龍太郎と
二人で行ってくる。





…………。


るりが来てない以外は、いつもの風景。正木先生がギリギリホームルームに入ってくるのも、いつもの風景だった。
――放課後。



あ、るりから返信がきてる。





何て書いてるの?





今日、病院に行ったら
流行ってる伝染病に
罹ってるみたい。
安静にしてたら大丈夫みたいだけど。
うつったりするらしいから
絶対に来ちゃ駄目よ。
心配してくれてありがとう。





で、伝染病!?





インフルエンザとかかな?





そんなの最近聞いてない。
ホントに大丈夫かな?





心配なのは分かるけど
るりの言う通りにしようよ。
お見舞いに行って、もし真悠に
うつっちゃったら、それこそ
るりが悲しむよ。





大丈夫。そう信じようよ。





心配する気持ちは
私達も一緒だよ。
ね、真悠。





うん、そうだねアゲハ。


アゲハの言ってる事は正しい。
私も信じてるりを待とう。
私は家に帰るなり『世界の魔術大全』を開く。るりの事を信じて待つって決めてからも、気にならないわけはなかった。その気持ちを抑え込むように、創作への意欲を高めようと本に集中する。



面白い、すっごく。
今、書いてる小説に
なんとか自然に
盛り込めないかな。





それとも、
同時進行でもう一作
書いていこうかな。
でも、両方中途半端に
なりそうだし……。


誰に言うわけでもなく独り言を漏らしてしまう。創作意欲が高まるのはいいんだけど、つい、思いついたものを書きたくなってしまう。



!?


机の棚にある箱が目に止まった。そう言えばこの箱は、誰からのプレゼントなんだろ。これ以外の五つは、おおよそ検討がつくんだけど……。誰かが二つ入れてるのは、確かだと思うんだけど。友也君は何考えてるか分からないし……、でもやっぱり正木先生が怪しい。
そうじゃなかったら、もしかして全員犯人説? 実は全員で私にドッキリを仕掛けているとかかな?



あーもう分かんないよ。


最初は気味悪かったけど、よく見るととても綺麗なデザイン。



友也君が言うように、
本当に眺める為の
ものかもしれないな。


私はまた独り言を呟き、机の棚にある箱を手に取ってみる。見れば見るほど美しいデザイン。美術的な知識は詳しくないけど、引き込まれるような魅力を感じる。



開けられないって
決めちゃってたけど、
鍵穴はあるんだよね。


その穴をまじまじと見てみるけど、開けれる気なんて湧いてこない。だって鍵ないし。
私はその鍵穴の闇に意識が吸い込まれそうになる感覚を覚えた。



はー、いけない。
寝落ちするとこだった。


背筋を伸ばし両肩を回す。親指の付け根にある眠気に効くツボをグリグリして、私は小説を書くことにした。
次の日へ続く
