夜暮は一つ欠伸をした。



ふぁーあ


夜暮は一つ欠伸をした。



昨日も書類整理で帰り遅かったのに、朝っぱらから事件とか……


言いながら KEEP OUT のテープを潜る。
その拍子に陽を正面から浴びて、目を細めた。



お疲れ様です。ふぁ、どんな感じです?


担当の刑事がちらりと見やった。



夜暮か。……あれ、『クイーン』は?


五日町環は一部の同僚から『女帝(クイーン)』と呼ばれている。
彼女は美しい女性だ。
それも、誰もが振り返らずにはいられないような、彫刻のように彫りの深い完璧な美人だった。
背が2メートル近くあることも、その神々しさにも似た美しさを引き立てていた。
しかも仕事熱心、男には屈しない。異例の若さで警部にもなっている。
しかし、彼女は男のような言葉遣いをし、女性らしいところ……微笑んだり、恥じらったりというところを見せない。
美しい顔も、いつもほぼすっぴんであることは噂好きの婦人警官たちによって明らかにされていた。
その理由は誰も知らない。



僕も知らないんですけど、前々からこの日は捜査には参加できないって言ってたんですよね





あの仕事第一みたいな人が?
まさか彼氏でも出来たんじゃ





いやー、そんなこと……






! 環ちゃん?





……入るぞ





ああ、来てくれたんだね、環ちゃん
逢いたくて恋しくて胸が張り裂けそうだったよ!





……そうか





さ、入ってよ





ああ





……今、嫌な予感しました





え?





環さんに彼死できてたらどうしよう……





そんなこと……ないよな?


