人の形をした何かは鮫野木に徐々に近づいてくる。確実に近づいてくる。俺は恐怖で動けない。
人の形をした何かは鮫野木に徐々に近づいてくる。確実に近づいてくる。俺は恐怖で動けない。



……





く、来るな、来るな





なんだあれ? 人なのか?


人の形をした何かは鮫野木のすぐそばにまでに近づいた。



……


人の形をした何かは手を伸ばしてきた、鮫野木に触れようとする。



……





あっ、あ





淳くん!


鮫野木の手を引いて小斗が走った。鮫野木は間一髪の所で曲がり角を離れた。



ユキちゃん、ありがとう





ううん、それよりアレは?





アレか……


鮫野木の脳裏に浮かぶ人の形をした物、陰みたいだった。思い出しただけで背筋が震えてきた。アレはいったい——



……六十部に聞けばわかるかも





淳くんが会った女の人?


鮫野木は頷いた。確信はないが彼女なら俺に起きている良くわからないことを知っているはずだ。



ユキちゃん。俺の家に来てくれないか?





良いけど、どうして?


鮫野木はあることを思い出した。



そうそう、夜は何処でも良いから建物に入りなさい。それが良いわ





嫌な予感がするから





……うん


鮫野木達は家に向かった。鮫野木が家に入ると異変に気付いた。



やっぱり、いない





いないって、誰が?





母さんと父さん





えっ


家の明かりは付いているが普段この時間帯なら両親はリビングに居るはず。だが、何の冗談か家に居るはずの両親は何処にもいない。
なるほど、この世界ね……。



ハァ―





淳くん?





なぁ、小斗ちゃん。廃墟の噂、知ってる?





噂?





そう、噂だよ。ただの噂


俺は机に二人のカバンを置いて話した。
あの廃墟の噂、所詮たいした事ない噂だと思っていた。人が消えるなんて、でっち上げだと思って心の何処かに閉まっていた、あの噂。消える側になるまで、信じなかった噂。



それじゃ、ここは?





消えた人の行く付く場所……かも





本当に?





わからないけど、明日、六十部に聞けばわかるかもしれない


あくまで可能性だ、彼女だって全てを知ってるわけじゃない。少なくても情報が欲しい。



明日の朝、公園に行ってから、K・S記念病院に行こう





うん、二人、公園に戻っているかもしれないしね





心配だな





大丈夫、アイツら頑丈に出来てるから!





淳くんが威張る?


その後、俺達は明日に備え早めに寝ることにした。
翌日、軽い食事をとって、朝早く公園に向かった。



居ませんね……





置き手紙を置いていこう


あいにく、二人の姿は見当たらず、小斗がベンチの上に置き手紙を残した。
そのまま、俺達は街の中央部にある、K・S記念病院に向かった。病院に行く途中、誰とも会うこともなく、たどり着く。違和感を感じつつ、病院入る。



おかしい? 何で、ここに来る途中で人と出会っていないんだろう?





ねぇねぇ





何?





淳くん、もしかして、あの人が六十部さん?





……


小斗が言う通り、病院の待合席に六十部が座っていた。俺は六十部に近づいて話しかけた。



六十部さん、あの聞きたいことがあるんですけど





あら、おはよう。早いわね





そうですか





あら、腕時計持ってないの? 便利よ





へー、そうなんですね!





いやいや、知ってますよそのぐらい。そうじゃなくて、話が——





あなた、昨日見なかったわね。私は六十部紗良。あなたは?





初めまして、小斗雪音です





……あのー、六十部さん





小斗さんね、あなたもこの世界に来てしまったのね





この……世界?


やっぱり、彼女は知っているんだ。



あの良いですか





そんなに慌てなくても、鮫野木くんが知りたいこと教えてあげる





お願いしますよ





六十部さんが楽しそうで、なりよりです


六十部は一度目を閉じて、鮫野木を見る。



聞きたいことは何?


