鮫野木は知りたいこと、自分に起こったこと、常識ではあり得ないこと、全てが聞きたい。俺は頭の中で考えをまとめる。
鮫野木は知りたいこと、自分に起こったこと、常識ではあり得ないこと、全てが聞きたい。俺は頭の中で考えをまとめる。



どうしたの? 話があるんでしょ


六十部は足をクロスさせる。一瞬、薄い青色の下着が見えた。



なるほど、嫌々そうじゃない。今は関係ない


鮫野木は六十部の目を見て話す。



あなたが知っている。この世界の全て





あら、貪欲ね。私ほどじゃないけど





貪欲ですか





別に貪欲で悪い?





いえ、まったく。俺もある一点において、貪欲ですから





そう





まぁいいわ、貴方たち座りなさい。その方が話しやすいでしょ





はい


鮫野木は六十部の二つ隣の席に小斗は鮫野木の隣に座った。



さて、知っていることね





最初に言っておくけど、私はこの世界に来て、まだ五日しか経ってないわ





その内の三日、私はある集団と行動を共にしてたわ。今から話すのはその集団の成果よ





してた……か





まず、その集団はこの世界の事を裏の世界って、呼んでいたわ。それと裏の世界から出れない事、正確には、この区画から出ようとしても、同じ場所に戻ってしまう。ループするのよ、私も試したわ。





無限ループって奴ですか





そうね、狭いようで広い、この区間に私たちは閉じ込められているの、何者かの意思でね





意思? 誰かがこの世界を作ったとか言いませんよね?


俺は冗談交じりに放った言葉に六十部はまじめに答えた。



もしかしたら、科学では証明できない力で出来た世界かもね





じょ、冗談ですよね





私も冗談だと思いたいわ。でも彼らと三日だけだったけど行動して、認めなかった物、認めないといけない物が少しだけ、ハッキリしたわ





そ、そうですか





少なくても、あの集団のおかげね





あの。今その集団は何処にいるんですか?





ユキちゃん……


小斗はさりげなく質問をした。
たぶんその答えは良い方向ではないと思った。恐らく、六十部が行動してた集団は……。



居ないわ。私を除いて、全員……アンノンになってしまったわ





アンノン? ですか?





貴方たちは見てないかしら、陰みたいな化け物





アレを知ってるんですか!





ええ、アンノンはこの世界、裏の世界のルールみたいな物かしら





アンノン? になったって言いましたけど、それって……





言った通りよ。私達がルールを破るとアンノンが現われて、しまいにアンノンになるわ。アンノンになったら、元に戻る事はない。ついでに、倒すことも出来ないわ


アンノンになる六十部が行ってることが本当なら、あの時、小斗ちゃんが助けてくれなければ、アンノンになっていた。



ルールがあるんですか?





あるわ、まぁ全部。受けうりなんだけど


六十部は語り出した。



まず、一つは夜、外を出歩かない。アンノンが活発に活動する時間だから





二つはNPCを攻撃しない。攻撃したら、アンノンが現われて襲ってくる





三つ目は視線に入ってはいけない。アンノンは例外なく私達を襲ってくる





この三つを守ればアンノンから襲われない





だから、あの時。夜は何処でも良いから建物に入りなさいって言ったんですね





そうよ





おかしいな? 私がアレを見たときは、まだ夜じゃなかったよ





それは、昼でも数体活動しているからよ。数は少ないけど、見かけたら気を付けて





うん、気を付ける





NPC……俺達以外に人が居るんですか?





ええ、居るわ。けれど、あくまでNPCよ





あくまで?





ねぇ。淳くん、NPCって何?





ユキちゃん。知らないの? NPC(ノンプレイヤーキャラクター)の略だ。ゲームとかで使う用語だよ。分かりやすく言うとゲームのモブキャラ、村人とかの事





ああ、村人ね。それなら分かるよ!





そうですか


割とユキちゃんに色々とゲーム用語も使って話しているはずなのに、覚えてないか、スルーされて聞いてないかの二つだな。
俺は質問を続けた。



えーと、NPCはどこに居るんですか?





それなら、もうすぐ現われるわ





現われる? NPCが?


六十部は腕時計を確認した。



補足だけど、NPCには会話をする人としない人が居るわ





それって、ゲームみたいですね





そうね。彼らも同じような事を言ってた





はぁ


六十部は少し悲しそうな表情を見せた。



鮫野木くん、そろそろ来るわ





何がですか?





NPCよ


すると、三人しか居なかった。K・S記念病院に人が現われた。一瞬の事に俺は驚いた。病院は人で混雑し始めた。
NPCはまるで決まった動きをしている用に見えた。
これがNPCか、まるで……ゲームみたいじゃ……ないか。
