ーー日の出の村・アルバス
聞き込みを始めて数時間がたった・・・しかし・・・
ーー日の出の村・アルバス
聞き込みを始めて数時間がたった・・・しかし・・・



だめだ・・・全然情報がない・・・





ねえ・・・本当に天空のルビーなんてこの村にあるの・・・?


村の人に聞いても、「天空のルビー」というものすら知らないという回答ばかりだった。もしかしたら俺たちいいように騙されてるんじゃないか・・・?



やっぱり嘘なんじゃ・・・





そうじゃないと信じたいけど・・・ここまで何もないとな・・・。





しかも・・・あいつどっか行っちゃったし・・・ついてくるんじゃなかったの?





そう言えば・・・あいつどこ行ったんだ?


きょろきょろと辺りを見回すが・・・いない。もしかして逃げられた!?



逃げたか・・・?





うわああああアルマ抑えて!!ファントムショットの構えとらない!!





でも・・・これもう見つけ出して襲撃した方が早い気がしてきたわ・・・





やる?アルマ?





あー・・・それいいね!





ルナ!!火に油注がないで!!


二人が殺気立ってきてしまった!!心なしか村人からも避けられてる気がするし・・・!
「二人とも落ち着いて!」と声をかけようとしたときだった。



おいおい、逃げたなんて人聞きの悪いこというなよな?


いつの間にか姿を消していた男が悠々と歩いてきた・・・助かった・・・のか?



ああ!!
ちょっと、あんたどこ行ってたのよ!!





チッ・・・





舌打ちしない!!





おお、怖い怖い・・・。





そんなカッカすんなよ。昼飯買ってきてやったからさ!


そう言って、男は持っていた紙袋を俺に手渡した・・・何だろう、暖かい。それにいい匂いもする。
開けてみると、まだ湯気が立っている肉と野菜が挟んであるサンドイッチが三つ入っていた。



うわぁ!美味しそう!!





そう言えば・・・朝から何も食べてなかったわね・・・思い出したらお腹すいてきちゃった・・・





あっ・・・そっか、イマガイの人は定期的に食事が必要なんだっけ・・・





気づかなくてごめんね・・・


逆に天族が食事を必要としないことに驚きながら、俺たちはアルマを励ました・・・天族は基本食事を必要とせず、一種の娯楽としてとらえているそうだ。
立ちながら食べるのも何なので、近くのベンチに座って食べることに。
いい色に焼き上げられたトーストは手に持つのにちょうどいい温度に保たれ、かぶりつくとサクッといい音を立てた。挟んであるレタスとトマトも瑞々しく、軽く酢漬けにしているのか、ほんのりと酸味を感じる。そして何よりもこの肉だ。味は淡泊なのに、肉汁が次から次へとあふれてくる・・・



うま・・・!





すごい美味しい!!こんな美味しいサンドイッチ、初めて食べたわ!!





うん・・・確かに美味しい・・・!
でも、これ何の肉?





気に入ってくれたようで何よりだ。





野菜はこの村の朝どれ野菜、パンは店独自の製法で焼かれた特製食パン・・・そして肉は、この村の名物であるベビーグリフォンの肉だ!


グリフォン?・・・って、もしかして・・・?



ええ!?ベビーグリフォンって食べられるの!?





ああ、これがそうなんだ・・・。
グリフォン種を食すのはこの村唯一の風習なんだって。見た目があんなだから、なかなか受け入れがたいモノもあるし。





でも、その肉は油が少なくどんな料理にも合わせやすい。なのに、一度火を通すと、見た目からは信じられないほどの肉汁があふれ出す・・・不思議な肉だよなぁ・・・。





そうなの!!新境地開拓ね!!





うん!これから立ち寄った先で名物を食べてみるのもいいかもな!





それはいいかもね!せっかく知らない土地に行くんだったらそういう物も楽しまなきゃ!


一時「天空のルビー」のことを忘れ、ゆっくりサンドイッチを食べていると、一人の男性が話しかけてきた。



この村の名物、気に入ってくれましたか?





はい!すっごい美味しいです!!





はは、それは良かった!





ところで旅人さん、今朝、日の出見れましたか?





へ?日の出?





あー・・・その時間はまだぐっすりで・・・。





疲れてたもんね・・・





え、見てねぇの?もったいな!!





え・・・?そんなに・・・?


俺が聞き返すと、男性は何度も頷いて言う。



まだ滞在する予定がありましたら、是非日の出を見ていってください!イマガイの中で一番綺麗な朝日を見ることができますよ!





はい!あと一泊はする気なので、明日にでも見てみます。





それがいいですよ!
朝六時半から七時までが一番綺麗に見えるので、その時間を狙ってみてください!





ええ!わざわざありがとうね!!





いえ、朝日はこのが誇る宝ですので!それを見て感動してくれる人がいれば、そんなに嬉しいことはありませんよ!


朝日かぁ・・・そう言えばテレビでしか見たことなかったな。明日は絶対早起きしなきゃ!
男性と別れ、サンドイッチも食べ終わったので、聞き込みを再開することに・・・今度はちゃんと男目を離さないように・・・。
ーーが、やっぱり情報は何一つ得られなかった・・・。
ーーアルバス村・宿屋
何も進展がないまますっかり日が暮れてしまい、俺たちは昨夜泊まった宿に戻ってきていた。



はあ・・・どうしよう・・・





このまま見つからなかったら・・・スコアとバトンが・・・!





んん・・・何か引っかかるんだけどなぁ・・・





ふっふっふ-、悩め悩め!
答えはもうすぐそこだぜ?





へ?・・・すぐそこ・・・?


思わず辺りを見回してしまう。が、案の定それらしい物は見つからない。



違う違う





その場所に辿り着くためのヒントはすべてそろってるんだよ。後はそれを組み立てるだけだ。





ええ、うそ!?





ううん・・・今まで聞いたことを整理する必要があるかな・・・?





うわ・・・俺そういうの苦手なんだよな・・・


一気に意気消沈した俺たちをみて、男はケラケラと笑った。



ほんとほんと!さ、後もう一息頑張りな!





んじゃー、俺は夕飯を・・・





ちょっと待て。





あ、安心しな!夕飯もおごってやんよ!





違うよ。
僕もついてく。





さっきみたいに帰ってくるとは限らないし・・・





う・・・確かに・・・





えー!俺ったら信用なーい!!





当たり前っちゃ当たり前ね・・・


話し合いの末、ひとまず俺とルナ、アルマと男に別れて行動することになった。フロントで二人と別れ、俺たちは受付に向かう。



おや、お帰り。宝物は見つかったかい?





へ・・・?何知って・・・





村中で噂になってるよ!聞いたこともない宝物を、旅人さんたちが必死に探し回ってるってさ!





そ、そうだったの・・・何か恥ずかしい・・・


少し顔を伏せて恥ずかしがる俺たちをみて、女将さんはカラカラと笑った。



あっはっは!!そんなに恥ずかしがることはないよ!何かに熱中することはいいことじゃないの!





うう・・・





で?いったいどんなモンを探してるんだい?私にも聞かせてちょうだいよ。





え、っと・・・


「天空のルビー」について、男から聞いたことを軽く説明すると、おばさんはふむふむと頷いた。



確かに、そんな宝物があるなんて聞いたことないねぇ・・・





ううーん・・・女将さんでもわかんないかぁ・・・





ますますわからなくなってきちゃったなぁ・・・





そうねぇ・・・もしかしたら、何だけど・・・この村の何かを「天空のルビー」って言い換えてるだけ・・・とかじゃないかい?





言い換えてる・・・?





ええ。そう・・・この村の宝、と言ったら「アレ」しかないし・・・それなら合わなくもないわ。





「アレ」?アレって何?





おや、聞いてないかい?
この村の宝といえばーー。


女将さんが言った一言で、すべてがつながった。
思わず受付のカウンターに乗り出し、二人で思いっきり叫んでしまったーー。
ーーアルバス村・酒屋



・・・・・・・・どうしてこうなった





いいじゃんいいじゃん!!せっかく酒場に来たんだから、エール一杯くらい飲まなきゃもったいないだろ!





夕ご飯は?アルトたち待ってるんだよ?





エール一杯飲む時間くらいあるって!!注文した物が完成するまで時間もあるし!





・・・・・・・はあ・・・わかった。一杯だけだよ。





やったね!あ、ねーちゃん!エール二つちょうだい!!





僕も飲むの?





あたりまえだろ!一人で飲むんじゃ気分良くないし♪





・・・もしかして飲めなかった?





いや、飲めるよ。かなり久しぶりだけど。





久しぶり・・・ねえ・・・





おっ、きたきた・・・さんきゅ!!





・・・!?なにこれ





なにって・・・エールだけど





うそ!これが・・・?だってエールってもっとどろどろしてなかった?





進化してんだよ、エールだって!
ほら飲もうぜ!!





う、うん・・・





うーん、うまいっ!!





おいしい・・・なにこれ・・・口当たりもなめらかだし、何より喉に引っかかる感じがしない・・・!するする飲める・・・!





相当びっくりしてんな!何年エール飲んでなかったんだよ?





うーん・・・800年くらい、かな・・・?





800年・・・





なあ、アルマ?ちょーっと聞きたいことがあるんだけど。





なに?





いや、正直に答えてくれりゃいいんだけど・・・





・・・「ラムゴの亡霊」と「ソドモの崩壊」って、聞いたことあるか?





・・・・・・・・・・・え?
ラムゴの亡霊と・・・ソドモの、崩壊・・・?





・・・ルマ・・・げて・・・もう・・・から・・・





っ・・・!い゛っ・・・!!!





お、おい!?大丈夫か!?





う・・・だ、大丈夫・・・ちょっと、頭が・・・





・・・・・・・・・・・・





・・・アルコールが回ったか?





そう、かな・・・?本当に久しぶりだったから・・・。





そっか・・・ならいいんだけどよ。
で、聞いたことある?





ううん・・・ないよ。





ラムゴとソドモなら知ってるけど・・・そう言えば、みんなそのこと全然触れないよね。あんなに大きな戦争なのに・・・停戦協定でも結んだの?





・・・知らないんだな、本当に。





へ・・・?うん・・・。





・・・戦争は終わったぜ。とっくに・・・ちょうど800年前にな。





えっ・・・!?
け、結果は・・・?ラムゴは・・・!!





・・・・・・結果は、ラムゴの惨敗だ。ひどいもんだったらしい。ソドモがラムゴの王を殺し、逃げた姫を捕らえ・・・拷問の末処刑したそうだ。





・・・・・・・・そんな、ことが・・・





ラムゴには・・・友達がすんでたんだ・・・覚えてないけど・・・確かに・・・





・・・・・・・・・





そんで・・・その後起きた事件が、ソドモの崩壊だ。





・・・・・・もしかして、ソドモも・・・?





・・・ああ。一人の魔族によって、一晩で壊滅させられたそうだ。





・・・・・・・・・・・・・・・





その魔族は、現在も大罪人として、魔界領の無限監獄ーー「キュートス」の最奥に収容されているそうだ。





・・・・・・・





んでな。これら一連の話に、最近面白い話が付随して・・・





面白い、はなし?





ああ。それがラムゴの亡霊伝説だ。





戦争で殺された姫を求めて、その恋人だった天族の魂が、今もラムゴがあった土地をさまよってるって話だ。ロマンチックだろう?





・・・報われないな・・・その魂は・・・もう姫はいないのに・・・。





・・・それでな、その天族ってのが変わった奴で・・・。





人間と恋人になるって時点で相当だけど・・・まだ何かあったの?





・・・・・・・・・・・





いや、やっぱいいわ。この話し終わろう。





は!?





ほら、ちょうど注文したモンもできたらしいし!帰ろうぜ!!





ちょ・・・!待て!!そこまで言って止めるな!!気になるだろ!!





ほーらほらほら!!二人が待ってるぜ!
それにたいしたことでもないからさ!!





あっ・・・こら待て!!





・・・・・・その天族はーー。



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