【レイズとビアンの家】

　ビアンは夕飯の準備をしていた。そろそろ授業を終えて恋人のレイズが帰ってくる頃合いだからだ。ビアンは自分が創った詩を鼻歌で奏でながらレイズの帰りを待っていた。


　今日はレイズの好きなシチューにしたから、レイズ喜んでくれるかな？


そんなことを思っていたとき、玄関のドアが開いた音がした。

　レイズが帰ってきたと思い、ビアンは煮込んだスープの火を消してから笑顔で玄関へ出迎えた。

　しかし、そこにいたのはレイズではなかった。

　そこには白い鎧に身を纏う男が立っていた。男の眼はまるで獣そのもので、ビアンはこの男のただならぬ雰囲気に恐怖を抱いた。

　男は我が物顔で部屋の中に入ると、勝手に物を漁り出した。

鎧の男は手にしていた食器を床に落として割った。その音にビクッとするビアン。

男はわざとらしく何かを思い出したかのように話始めた。

　この男…レイズのことを知っている。

　ビアンは台所にあった包丁を男に見えないように掴んで背中に隠す。

ビアンは包丁を握りしめ男に斬りかかった。

　鎧の男は避けるまでもなく軽く女を平手打ちし、ビアンは床に倒れた。

　ビアンは鎧の男を睨みつける。この男、私達の関係を知っている。それを察して鎧の男は語り始める。

　まさかゲインとバイヤーが私達のことを話したの？


　鎧の男は昨晩のことを思い返しながら笑っていた。

　ビアンも広場で晒されていたゲインとバイヤーのことは知っている。酷い拷問の痕があった。ビアンは男に怒りの目で叫んだ。

　ビアンの叫びに男はこう答えた。

　ビアンは歯を食いしばる。

　床に唾を吐く鎧の男、そして忌々しそうにビアンを見下ろす。

　思わぬ答えが返ってきたので鎧の男は笑いだした。

　鎧の男はビアンの髪を鷲掴みにして顔を近づける。

　笑いがこみ上げてくる。しかしそんな男をビアンは憐れに思った。

　ビアンの憐れみを向けた眼に鎧の男はピキッと頭にきた。男は懐から貝殻を取り出す。

　鎧の男はビアンの目の前に貝殻を見せつけた。しかしそれはただの貝殻ではない。貝の口に鋭利なカミソリがついていた。

　ビアンはこの男がこれから自分に何をしようとしているのかを察して震える。

アーハッハッハッハッハッハッハッハッ！！！

　拷問器具の貝殻でビアンの肉を削ぎ落とす。
阿鼻叫喚の悲鳴をあげるビアンに容赦なく肉を削いでいく鎧の男。血が辺りを染め、男の白い鎧はビアンの返り血で赤く染まる。それはビアンが死ぬまで行われた。
　

しばらくし、ビアンが動かなくなると男は手を止めて確認する。

　鎧の男は絶命した女の股を開き中身を見る。

　鎧の男は満足して家から去っていった。












　

そして、その数分後ルシファーとレイズが遅れて到着する。
　ルシファー達が家の前までくると、そこは異様な空気が漂っていた。

　ルシファーは嫌な予感がして、急いで中に入ろうとするレイズを止めた。

　ルシファーはレイズを家の外に待機させて先に中に入った。そこはむせかえるような匂いが立ちこめていた。


　中はもっと血の匂いが酷いな。


　家の中は荒らされていた。食器が床に粉々にされ割られていた。そして、奥のほうにそれはあった。

　全身の皮を剥がされた死体が部屋の中に転がっていた。死体の背丈や状況から考えてもこの死体が誰であるかルシファーは一目でわかってしまった。


　

　

　ルシファーは怒りに震えた。あまりにも残忍な殺され方をしたビアン、それをやった相手に心底怒りを感じていた。

　ルシファーは背後に気づいて後ろを振り向く。


そこには放心して立ち尽くしているレイズがいた。レイズは心配になりルシファーの言うことを聞かず部屋の中に入ってしまったのだ。

　レイズは取り乱した。ビアンの身体はズタズタに抉られていて見るも惨い殺され方だった。

　ルシファーは暴れるレイズを無理矢理抑え込んで家から急いで出る。


そして、レイズはルシファーに担ぎ上げられたまま泣き叫ぶ。ビアンが置いてある自分達の家を見ながら絶叫をあげ続けていた。

【レイボス島　岬の灯台】

　ルシファーとイシスとレイズは岬にある灯台の中にいた。ビアンの死に発狂していたレイズを止めてなんとかこの灯台の場所まで来ていた。

合流したイシスにルシファーから話は聞いていた。イシスは俯きながら泣いた。

会ったのは最近だが、彼らはとてもいい人達だった。それを立て続けに失うなんてイシスにも相当堪えていたようだった。
　

ルシファーはダーインスレイブを携えて灯台から出ていこうとする。そして、泣いているイシスに告げた。

　ルシファーは黒い片翼を出すと、そこから一枚の羽を千切る。それはみるみるうちに姿を変えて一羽のカラスになった。

　ルシファーは塞いでいるイシスにカラスを置いておくとドアを開いた。すると背後からイシスが弱々しく聞いてきた。

　そう言ってルシファーは出ていった。イシスは止めなかった。ルシファーがどこに行って、何をするのかを知っていたから、それに・・・







今のルシファーは凄く怖い顔をしていたから。