第二回「店員さんに話しかける」
第二回「店員さんに話しかける」



さて、それじゃ早速試奏しましょう!





ちょ!ちょっと待ってください!
僕ギターまだ弾けませんよ?





ああ、違う違う。
「試奏」って言っても、実際に曲を弾くんじゃなくて店のギターを何本か持たせてもらうのよ。





なるほど。確かに、実際の重さとかもわかりますもんね。





そうそう。
運命の相手にすぐ出会えるわけないでしょ?まずは一通り触らないとね。





なるほど……。触ります……。





OK。それじゃ店員さんを呼ぶわね。
店員さーん!





いらっしゃいませ。
なにをお探しでしょうか?
お客様。





(ひそひそ)
い、いきなりヴィジュアル系の店員さんが来ましたね……。





(ひそひそ)
そう!
でも、ここで肝心なのは「ドキドキしない事」よ。





(ひそひそ)
え?でも、僕、他人と話すのは大の苦手なんですけど!?





(ひそひそ)
大丈夫!
楽器を弾く人なんて大抵どこか様子がおかしいものよ♪
店員さんも同じよ!
だから全然気にしないで♪





(ひそひそ)
はい♪ その一言で安心しました!





で?何をお探しかな?
俺は常に「究極の愛」を探してるんだけどね。まだ見つからないのさ…。
紅の涙は乾きにくく、刹那の想いは絶え間なく流れるものだね。





(ひそひそ)
たいへんです!
この店員さん!
だいぶ変ですよ!
言ってる事がワケわかんないです!





(ひそひそ)
全然大丈夫よ!
許容範囲内だわ!
この程度の変人はバンドマンには大勢いるわ。
むしろ、まだ序の口よ!
さぁ!
「ギターの試奏を希望している」と伝えて!





(ひそひそ)
は。はい!





えっと、これからギターを始めようかと思ってるんですけど、何本かギターを持たせて貰ってもいいでしょうか?





OK……。そういう事なら全然OKだよ。
ちょっと待っててね。
揺るぎない想いで待っててくれ……。


店員はギターを探しに行った。



あー、良かった。
ホッとしましたよ。





ね?簡単でしょ?
店員さんも優しいでしょ?





楽器屋って「初心者なんて来るな!」みたいな雰囲気出てるんで、ちょっとビビりましたよ。





違うわ!それは逆よ!





え?





お店にとって、一番利益になるのは「楽器初心者」なのよ。





ど、どういう事ですか?
だって、上級者の方が高い楽器とか買いそうな気がしますけど……。





それはギターに関してはそうかもしれないわ。
でもね。
アンプやエフェクターやDAWの機材なんかは上級者程ネットで買うのよ。
店には、使い心地を試す時にしか来ないわ。





へぇ~……。
なんか、イヤですね。その買い方。





それに比べて初心者は、アンプもエフェクターも弦もシールドもどれを選んでいいかわからないでしょ?
だから親切に説明してくれるお店で買うのが一番良いのよ。
つまり、お店にとっても初心者は「良い客」なの。





えー。
でもそれだと騙されそうでこわいです。
変なギターとか売りつけられそうで……。





そうね。確かに。
自分の考えを押し付ける店員もいるにはいるわ。
そういう最低のクズ店員のいう事は聞かなくても良いわ。
あなたには、時間をかけてゆっくり選べる権利があるのよ。





そうか!
お金を払うのはボクだ。
だからじっくりゆっくり何本も試奏させてもらおうっと!





その意気よ!





お待たせしました。
ギターを用意しましたので、
どうぞ、こちらへ。





やったー!さっそくギターに触れるぞ!





さて、店員さんのお手並み拝見といきましょうか。


つづく
