


やあやあ天文部諸君。元気しているかね?





あ、金町先輩いらっしゃい





まだ雨水溜まってないですよ?それとも、他に何か?





いつもアンジェリカ水を溜めてくれて感謝しているよ。
今日はその話なのだけれどね





はぁ





アンジェリカ水ってなんですか?





いつもガラスの器に雨水溜めてるでしょ?それのこと





なるほどー





アンジェリカ水はもう必要無くなったんだ。
今までありがとう





必要無くなったって、どういう事ですか?





もしかして、賢者の石が出来上がった……とか?





賢者の石を作れたら良かったのだけれどね、賢者の石は、もう、必要なくなったんだよ





え?それって、あの……





どういう事かは、察しておくれ





賢者の石はもう必要無いって、金町先輩はこれからどうするんですか?





ん?そうだね。医学部に入れるように、勉学に励むよ。
もう焦らなくて良いからね





んんん……あんなに一生懸命やってたのに、何か勿体ない気はしますけど





確かに、勿体ないかも知れない。
でも、今はちょっと錬金術から離れたいんだ





そうなんですか?





詳しくは訊かないでおくれ。
そろそろお暇するよ。
僕は外で泣く





え?金町先輩、ほんとにどうしちゃったんです?





葛西君、金町先輩がなんで賢者の石を作ろうとしてたか、その話は聞いたよね?





はい。病気のお兄さんのためでしたっけ





それが必要無くなった。
どういう意味だかわかるな?





ん~……お兄さんの病気が治った?





それなら良いんだけど、そういう風に見えた?





んんん……
あっ!あ~……そっかぁ……





……しんどいなー……





あ、僕、ちょっと生物室行ってくる





え?なんで?





ちょっと金町先輩と話してくる





金町先輩





おや、新橋君。何の用だい?





先輩、これから受験勉強が大変だと思いますけど、良かったら偶に、天文部の天体観測に参加しませんか?





天体観測?
そうだね、余り根を詰めるのも良くないし、偶に参加させて貰うよ





金町先輩は、今までの高校生活で何か思い出とか、有りますか?





ふふっ。言われてみると、これと言ってないね。
錬金術の事ばかりだ





錬金術以外の思い出は必要無いですか?





……やめておくれ。そんな事を訊かれたら、泣きたくなってしまう





あ……ごめんなさい





でも、そうだね。これから少し、君たちに甘えさせて貰うよ





……はい





僕に、天文と地学と文芸のことを、教えておくれ


