さてさて。
女性に関しては、国を制したと言っても過言では無かったオオクニヌシだが、肝心な国づくりは全然進んでいなかった。
さてさて。
女性に関しては、国を制したと言っても過言では無かったオオクニヌシだが、肝心な国づくりは全然進んでいなかった。



うーん。だいたい、噂になってる子はコンプしたし、そろそろ国づくりやらなくちゃなぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・





国づくりか ・ ・ ・ 正直めんど ・ ・ ・ ・
いや、でも、オオクニヌシなんて立派な名前もらっちゃったし ・ ・ ・ ・ ・ ・
どうしよっかな。


オオクニヌシは、悩みがあると、よく出雲の美保関に行った。
そこで海を『ぼぉーーーっ』と眺めていると、遠くから船が漕ぎ寄って来るのが見えた。しかし、近付いても近付いても大きくならない。目の前まで来て、やっとその理由がわかった。それはガガイモの実を削った10cmほどの船だったのだ。
中には小さい神が乗ってる。服のサイズが無いのだろう。蛾の羽を纏っていた。



・ ・ ・ ・ ・ ・ こんにちは。君は?





・・・・


しかし、返事がない。こっちを凝視しているので、言葉は通じてはいそうなのだが。



喋れないの??





・・・・


・・・やはり返事はない。超気になる。
散歩に付いてきていた家来たちにも知ってるか聞いてみたが、誰もわからなかった。そこで、道端にいたヒキガエルの神に聞くと、カカシの神のクエビコなら、知ってると教えてくれた。
特に抵抗もしなかったので、小さい神を肩に乗せてクエビコの元を尋ねると、クエビコは、カムムスビの子供のスクナビコナだと教えてくれた。



カムムスビ様か ・ ・ ・ ・ ・ ・ あのオネェ、正直ちょっと苦手なんだけど ・ ・ ・ 。
でも、命の恩人だしなぁ。





・・・・





まぁ、せっかくだ。お礼も兼ねて、高天原まで確かめに行くか。


こうして、オオクニヌシは高天原に向かった。
宮殿に着き、侍女に部屋まで案内されると、ハイテンションのカムムスビが迎えてくれた。



あっらー!!オオクニヌシくんじゃなぁいっ!!来てくれたのねぇ~嬉し~〜い♪♪
あれから随分立つけど、やっぱり、タイプだわぁ!!生き返らせて、本当、良かったぁ〜~!!





うぅん ・ ・ ・ ・ ・ ・ やっぱり、この女子とは言い切れないテンション、苦手だ。


しかし、嫌味のない営業スマイルはオオクニヌシの得意分野だった。



・ ・ ・ カムムスビ様、お久しぶりです。あの時は本当にありがとうございました。あなたがいなかったら、今の僕はありませんでした。





いいのよぉ!気にしないでっ!!


カムムスビはとっても上機嫌だ。



ところで今日は別件なんです。出雲でこの小さい神を拾ったんですけど、あなたのお子さんだと聞いて・・・





・・・・





あら!スクナビコナじゃない。良かったわぁ。見つけてくれてありがとう。
この子ったら、小さすぎて、指の隙間から落ちちゃったのよ。





そうでしたか。





えぇ。でも、ちょうどいいから、お礼に国づくりを手伝わせましょうか?





えっ、国づくりを?


スクナビコナに気を取られて忘れていたが、そもそも国づくりに悩んで美保関に行ったことを、オオクニヌシは思い出した。



あ。そういえば。 ・ ・ ・ 実は、国づくりの方向性を悩んでいたんです。
スクナビコナさんの力を貸していただければとっても助かります。





よかった!!オオクニヌシくんのお役に立てて嬉しいわぁ〜。
ね、スクナビコナ、オオクニヌシくんのお手伝いをするのよ。わかった?





うんっ!まかちょ~け~!!





うわっ!喋った!!
しかもテンション高っ!!





スクナビコナさん、よろしくね。





ハイサイ!うにげ~さびらっ!!





・ ・ ・ 何なんだこのキャラは。


オオクニヌシがリアクションに困っていると、カムムスビがフォローを入れた。



ごめんなさいね、オオクニヌシくん。この子、琉球に憧れてて。





あぁ、なるほどね。いるいる。無駄に方言、真似したがる人。
でも琉球はまだ日本じゃないし。ややこしくなるから、中途半端にに設定持ち込まないで欲しいな。


オオクニヌシはカムムスビにお礼を言い出雲に帰ると、早速スクナビコナと2人で国づくりをはじめた。
彼は見た目によらず、山や丘を作るのが得意だった。国づくりは順調に進み、みるみるうちに国の形が整った。
そんなある日、オオクニヌシは肩にスクナビコナが乗っていないことに気付く。心配になり、そこらじゅうを探したが見つからない。



まずい ・ ・ ・ 知らないうちに潰しちゃったかな ・ ・ ・


しかし、机の上に小さな手紙が置いてあるのを見つけた。サイズ的にスクナビコナからだろう。手紙を開くと、辛うじて読めるサイズの文字が並んでいた。



あげっ!!クソ。あいつ、国造りの途中でバカンスに行きやがった!!
しかも、帰ってくるつもりねぇだろコレ!!てゆうか、こっちじゃ『ニライカナイ』って言わないから!!
『常世国(とこよのくに)』だから!!!!





全部、『桃源郷(とうげんきょう)』と同異義語って言うけど、ややこしくなるから、変に設定持ち込まないでくれっ!!





くそっ!!僕だって時間さえあれば、誰かヒメと2人でだな ・ ・ ・ ・ ・ ・
あ、いや、現地でちゅらさん調達ってのも ・ ・ ・ ・
あぁ!!くそっ!!うらやましい!!!!


国造りのパートナーを失ったオオクニヌシは、悩んだ時のいつもの場所、美保関のほとりで体育座りをしながら海を眺めていた。



あぁ、いいなぁ。僕もバカンス行きたいなぁ。正直、国のために一人で頑張る気になれないんだよなぁ ・ ・ ・ ヒメ達のためならどこまでも頑張れるんだけど。





はぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ なんかまた、国づくりに都合のいい神様とか何かが現れないかな。
僕としては、他力本願のポリシーは貫き通したいところなんですよねぇ。


そんなことを考えていると、突然海が光出した。その光は徐々に近付いて来る。よく見ると、そこには神がいた。今度は初老のいかにも神様っぽい神だ。



おぉ~なんて都合のいい展開!!こんにちは、僕は、オオクニヌシ。君は?





うむ、ワシはオオモノヌシノ神と言う。お主、国づくりに悩んでおるな?





へぇ!!なんか、もう事情全部知ってますみたいなキャラなのかな??
オオモノヌシとオオクニヌシで名前がめっちゃ被ってるのが難点だけど、この際どうでもいいや。





ワシはお主の分身だからな。ワシを丁寧に祀れば、手伝ってやらなくもないが?





へ??分身っ!?そ、そうなんだ ・ ・ ・
でも、なんだろう。この認めたくない感じ。それに、祀るって言っても何か実績が無いと、何をどう祀ったらいいものか ・ ・ ・





祀らなければ、国づくりを全力で失敗に追い込む。





わぉ。それ、選択肢無じゃん。





どうするんだ?今すぐ決めろ。





うぅん ・ ・ ・ まぁ、いいか。それなら祀ってあげるよ。どうやって祀ればいいの?





うむ。大和の三輪山の上に祀るといい。





おけー。もともとノープランだったし。ちょうどいいや。じゃーやりますかっ!


オオクニヌシは、早速オオモノヌシを大和の三輪山に祀った。
しかし、気軽に承諾したものの、彼を祀った途端、みるみるうちに豊かな土地が広がり、作物がよく育つようになった。食物に恵まれた出雲は短期間で見事に繁栄し、徐々に国全体も潤った。
こうして富も名声もヒメ達も手に入れたオオクニヌシだったが、ここで高天原から待ったがかかる。アマテラスが、葦原の中つ国は天つ神が治めるべきだと言い出したのだ。
そして話しは『地上の国つ神』VS『天界の天つ神』のドロドロした展開に進むことになる ・ ・ ・ ・ ・ ・
