スサノオに言われた通り、オオクニヌシは日本で初めて国を作った。
この国初の王様だ。
イケメンが若くしてこの国の王様になったんだもの。ぶっちゃけモテてモテて仕方がなかった。
そして何よりも彼自身、ウサギもびっくりする程のプレイボーイだった。
中でも因幡まで、わざわざ迎えに行ったヤカミヒメは、オオクニヌシのお気に入りだった。
しかし、正妻のスセリビメからしてみれば、たまったもんじゃない。スセリビメは事あるごとにヤカミヒメに嫌がらせをしていた。
スサノオに言われた通り、オオクニヌシは日本で初めて国を作った。
この国初の王様だ。
イケメンが若くしてこの国の王様になったんだもの。ぶっちゃけモテてモテて仕方がなかった。
そして何よりも彼自身、ウサギもびっくりする程のプレイボーイだった。
中でも因幡まで、わざわざ迎えに行ったヤカミヒメは、オオクニヌシのお気に入りだった。
しかし、正妻のスセリビメからしてみれば、たまったもんじゃない。スセリビメは事あるごとにヤカミヒメに嫌がらせをしていた。



平均より少し可愛いからって、ちょづいてんじゃねぇよ、このクソムシがっっ!!!





・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


まぁ、いくら一夫多妻制の時代とは言え、おおっぴらにイチャつかれたらイジメたくもなる。
ヤカミヒメは、身籠り赤子を生んだものの、スセリビメの睨みが怖すぎて、産まれたての子供を木の俣に置いて因幡へ逃げ帰ってしまった。
スセリビメは、いつの間にか家に住み着いていた5人の側室の中でも、最大のライバルを実家に返し、一安心した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ が、
問題はまだまだ山積みだった。だってそもそも、この家に肝心のオオクニヌシがいないのだ。
夫は全国で噂になっている美女をコンプリートするため、旅に出ていた。



チッ!!いくら、モテる男の方がいいとは言え、限度があるだろ。限度が。


・ ・ ・ その頃。
オオクニヌシは絶世の美女という噂のヌナカワヒメを口説くために、東北の越国まできていた。飛行機も新幹線も車も無い時代に、今の島根県から山形県までの長旅。
美女一人のために、ものすんごい執念だ。
しかし、やっとの思いでヌナカワヒメの家に着いたオオクニヌシだったが、部屋の前で呼びかけても呼びかけてもガン無視で返事がない。
時はすでに明け方になっていた。それでもせっかく苦労してここまで来たのに、ここで引き下がる訳にはいかない。そこでオオクニヌシは彼女に歌を詠った。



ねぇ、ヒメ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
聞こえてるんでしょ?





僕は今まで、自分にピッタリの妻を見つけることができなくて、国中を旅をしてきたんだ。でも、なかなかいい人に出会えなくてね。





そんな時に、美しいだけじゃなくて、知性にも優れているって君の話しを聞いてさ。いてもたってもいられなくて、ここまで来ちゃったんだよ。





もう明け方だって言うのに、刀も旅支度も解かず、君の寝ている部屋の前で扉を揺らしてるなんて、笑えるだろ?





・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ほら、君にも聞こえる?





山ではヌエが鳴き、野ではキジが鳴き、庭ではニワトリまで鳴いて朝を知らせてる。





あーぁ。ほんと、嫌になるよ。





あの鳥達、みんな殺しちゃおうかな。
そしたら、朝が来るのを止められるかもしれないだろ?


すると、ずっと静かにしていた扉の向こうから、くすっと笑い声が聞こえ、ようやく彼女も歌を返してくれた。



オオクニヌシさま・ ・ ・ ・ ・ ・ 私はヌエ草のようにナヨナヨとした、頼りない女でございます。
でも、心は引き潮の浜辺で遊ぶ水鳥のようにあなたを慕っております。だから、どうかあの鳥達は殺さないであげてください。





あの青山に日が沈めば、また夜が来ます。





夜が来れば、私は朝日のような笑顔であなたを迎え、ガーゼのように白い腕であなたを抱き、泡雪のように白い胸であなたを包みましょう。





その時が来たら、手と手を絡み合わせ、脚と脚を重ね合わせ、思う限りの夜を過ごすことができますから・・・・





そうして恋を急かさないでください。


どうやら、今晩はOKということらしい。



よっしゃ♪♪


っと、オオクニヌシはスキップで宿へと向かった。
こんな調子で彼は"シラミ潰し"に全国で噂になっている美女を制覇して行った。
しかし数ヶ月後。久しぶりに家に帰ると、スセリビメが鬼のような形相で待ち構えていた。



・ ・ ・ ・ あなたさぁ、何ヶ月この家を開けたと思ってるのかなぁ。
この国を収めたいとか言ってたの、どこのどちら様でしたっけ??





へ??





あれからずっと遊んでばっかじゃないっ!!





ビクッッッ!!


さすがスサノオの娘。迫力がある。



いやいやいやいや、これは仕事ですってば。全国に側女を作ればだな、その、えっと
・・・国づくりが円滑に進んだり進まなかったりするわけだから ・ ・ ・ これは必須でマスト的なあれなんだってば。





ほざけっ!!んなクソみたいな言い訳、聞きたかねぇんだよっっ!!!





あぅっ ・ ・ ・ ・ ・ ・





ま ・ ・ ・ まずい ・ ・ ・ ・ ・ ・ このままじゃ、夢のハーレム計画が ・ ・ ・
出雲じゃ無理か ・ ・ ・ ・ ・ どっか、大和とかにもういっこ家作っちゃおっかな ・ ・ ・ ・ ・


オオクニヌシは、スセリビメに隠れ、ハーレム計画の準備を着々と進めた。
そしていよいよ大和へ逃避行!と馬に手を乗せ、跨がろうと鐙に片足をかけた、その時 ・ ・ ・



オオクニヌシ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





ビクゥッッ!!!


後ろから、スセリビメの声が聞こえた。



やべっっ!見つかった!!!くそぅ。ココまで秘密裏に進めて来た計画が!!


しかし、スセリビメにはいつもの迫力がない。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ぐすっっ ・ ・ ・





ヒメ?
・ ・ ・ ・ ・ ・ 泣いてるの?





ヒメって呼ばないで。
・ ・ ・ だって、また行っちゃうんでしょ?どっかの違うヒメたちのとこに。


スセリビメは涙が見えないように俯きながら答えた。いくらチャラ男でも、正妻の涙は堪える。オオクニヌシは、困ったように頭をポリポリかきながら、彼女に歌を詠った。



あーーえーっと ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
実はさ、今日、おしゃれして出掛けようと思って ・ ・ ・ ・ 1人でファッションショーしてたんだよね。





最初は黒い着物を着てみてさ、水鳥みたいに袖をパタパタさせてみたんだけど、なんだか似合わなくて、脱ぎ捨てちゃった。





次はカワセミみたいに鮮やかな青い着物にして、また袖をばたつかせてみたけど、やっぱり似合わなくて、脱ぎ捨てちゃった。





最後に、茜で染めた綺麗な赤い着物を着て、またパタパタしてみたんだけど、これはなかなか似合うと思わない??





ねぇ、スセリ ・ ・ ・ ・





僕がこうして鳥みたいに飛び立てば、君はススキみたいに下を向いて泣くんだろうね。
その吐息は朝霧みたいに舞い上がって、僕は行き先を見失いそうになるんだ。





だって、心から君のことを愛しているから。





くすん ・ ・ ・ オオクニヌシ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ うん、ありがとう ・ ・ ・ ・ ・ ・
でも、ちょっと待ってて。


何を考えたのかスセリビメは、家の中に戻ってしまった。オオクニヌシは馬に跨がり、出るに出れず待っていると、彼女は酒の支度をして、また戻ってきた。
気のせいかさっきよりも、肌けている。



はい、オオクニヌシ。
旅の前に一杯どうぞ ・ ・ ・


スセリビメは、馬に跨ったオオクニヌシの脚に手をかけ酒をついだ。
馬の上からだと、胸の谷間がよく見える。
そして彼女は先程のお返しに歌を詠んだ。



ねぇ、オオクニヌシ。あなたは男の人だからいくつもの島や峰を巡りまわって、磯の岬まで隅々まで巡って、たくさんの妻を持っているんでしょう?
そのくらい、私だってわかってる。





でもね、私は女だから、愛しているのは1人だけ。あなただけが私の愛する夫なの ・ ・ ・





はぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・
あの、ふわふわの綾絹に囲まれた居心地のいい部屋で、シルクのシーツとコットンの毛布に包まれながら、あなたと一緒に手と手を絡ませて、脚と脚を重ね合わせることができたら幸せなのに ・ ・ ・





・ ・ ・ ・ ・ ・ っっっっっ!!!!!!





さ、もう一杯いかが??





・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ ・ ・ ・





ん?どうしたの??





馬、置いてきます。





あら、そう?じゃ、お部屋で待ってるわ。今日はお布団、干したてなんだぁ♪♪





うわぁーーい♪♪


オオクニヌシはさっさと馬を置いてスセリビメとハグし、2人は夫婦の愛を再確認した。
残念ながら、これで彼の浮気性が治ったわけではなかったが、オオクニヌシは出雲に留まり、夫婦の仲はずっと睦まじかった。
このチャラすぎる伝説からオオクニヌシは『八千矛神(やちほこのかみ)』とも呼ばれた。
(意味は漢字から察してください。)
