突然ですが、質問です。
あなたは鎌倉幕府を知っていますか?
突然ですが、質問です。
あなたは鎌倉幕府を知っていますか?
鎌倉のシンボル鶴岡八幡宮。石段を登り切った拝殿前からは、鎌倉時代に作られた参道・段葛を始めとする鎌倉の街並みや、海までも見下ろせる。今も、二人の女性が青空を背景に、眼下の街並みを見下ろしていた。



いい国作ろう、鎌倉幕府!いやー、ぴったりなフレーズだね!





少し前の暗記法ですね。最近は使わないそうですが。





そもそも、幕府設立が何年だったのか、はっきりしないよねー。1180年や1185年だった、て、説もあるし。





ちなみに、先ほどの「いい国作ろう鎌倉幕府」の語呂合わせは、鎌倉幕府創始者である源頼朝様が、征夷大将軍職に任命された1192年を幕府設立としたものです。





まあ始まりはあやふやだけど、鎌倉幕府とか初代将軍のことは有名でしょ?教科書に載ってるし。皆知ってるよね?





あなたが本気でそう思っておられるなら、我々がここにいる必要はありませんね。





政子、話の振り方が意地悪だよー。でも、確かに将軍は怒っているね。ドラマや漫画では義経の方が美形扱いで人気だし!





将軍や妻であった私・北条政子はともかく、主要な御家人たちすら現代人にはほとんど知られていませんしね。





みんな、懸命に命散らして生き抜いて、素敵な明日を目指したのに、忘れ去られてしまうのはとっても悲しい……。





その無念や嘆きを救うため、私たちが考え出した策。それこそが――


「KAMAKURA☆892」
計画!!



簡単に言うと、将軍こと源頼朝をはじめとする、鎌倉幕府の皆が、現代美少女に転生し、アイドルになって人気と知名度獲得する作戦だよ!





私・北条政子がプロデューサーとして、皆さんを支えていきます。アイドルユニット名は「かまくらばくふ」と読んでください。





そのまんまだねー。





では、早速他のメンバーたちを探しに行きましょう。





えー。せっかく二人きりなんだから、もうちょっとゆっくりしていこうよー。久しぶりの生身だよ?ぎゅー。





こ、こんなところで抱きつくなんて……





慌てる政子も可愛いー。ちゅー





ま、まずは将軍と私の愛の深さを現代人に知らしめるべきか……





何やってるんですか!二人とも!





何って……元夫婦ならではのスキンシップ?





堂々と答えないでください!姉上も、将軍のペースに呑まれないでしっかりしてください!





よ、義時……いや、これはその……





義時いつからいたのー?覗きはよくないと思うな





最初からいましたよ……。紹介されるの待っていたら、あなたたちが勝手に始めたから……。将軍はまだしも、姉上まで私の存在忘れるなんて……。





すまん……忘れていたわけではないのだが、将軍への愛を抑えきれなくて、つい。





ごめーん、自己主張の薄い胸してたから、将軍ちっとも気がつかなかったよー。





胸のサイズは関係ないでしょう!





まあまあ、ここにある鳩サブレでも食べて落ち着きなさい。ほら、将軍も。





さっすが政子!気が利くねえ。おいしーい!





私が買ってきた差し入れなんだけどな……





いつも気を遣わせて、悪いね。ありがとう





! い、いえ!姉上に喜んでいただけるなら、このくらい!





姉上に撫でられた!今日は髪の毛洗わない!





じーっ(氷のような眼差し)





どうかしました?





んー……まあ、初登場だし許してやろう。
ところで、義時。他の皆はどうしたの?





大江さんと盛長さんは途中まで一緒だったのですが、先に事務所で待つとのことでした。





私がメンバーを代表して、お二人をお迎えに上がりました!





前世でも頼もしい弟だったけれど、女の子になっても真面目なところは変わらないね。





将軍と政子の邪魔さえしなければいいんだけどなー。





……何か言いました?





何にもー。じゃあ、早速新しい鎌倉御所……じゃなかった。事務所に向かおうか。あっちかなー。





そっちではありませんよ。子供じゃないのですから、はしゃがないで。





だって、皆に会えるの楽しみだもん!
あ、義時先に行って、「すぐ行く」って伝えておいてよ。





構いませんが……本当にすぐ来てくれますよね?





うん、政子と軽ーく現世デートしてから行くよー。





でしたら、護衛も兼ねて私もお供します。





むー。このお邪魔虫ー。前世みたいに空気読めー。





読んでいるからこそです!姉上を強引に連れ回して、夜まで戻らないつもりでしょう!





夜までなんて中途半端なことしないよー。明日の朝までしっとりしっぽり桃色吐息だよ?





…………





……頼朝様、お気持ちは嬉しいですが、今の発言はさすがにいかがかと……。仮にもアイドルなのですから。





もー、やだなあ、二人とも。軽い冗談だってばぁ。あんまり待たせると悪いから、そろそろ行こうか。政子、腕組んでいい?


政子が返事をする前に、頼朝は腕を組む。政子も微笑んで受け入れた。



前世から熱愛夫婦だったけど、ここまで堂々とされると突っ込む気力も萎えるなぁ。





義時ー?ぼさっとしてると置いていくよ?





あ、はい!すぐ行きます!





大丈夫?荷物なら私も持とうか?





このくらい大丈夫です!お気遣いなく!姉上は将軍のお手を離さないでください!





将軍を何だと思ってるのさー。子供じゃないんだからね!


