昔々、西の果てなる異国の
小さき村に、一匹のメス猫が
住んでおりました。
その名はベル。
薬草の知識に通じ、
病める者を癒し、天の気まぐれ
すら読み解く力を持つ賢き者。
その才をもって村人たちに
敬われておりました。
されど、彼女には誰にも
明かすことのできぬ秘め事が
ございました。
それは、村の絵師、若き猫
ラウルとの密やかなる契り。
彼はベルの姿に魅了され、
幾度となく筆を執り、
その面影を画布に刻みました。
微笑み、憂いの瞳
そよ風に揺れる柔らかき
毛並み──すべて
彼の筆先により生き生きと
描き出されたのでございます。