人数が多い。一人二人ならルーガルもあしらえるだろうけど、次々と増える。
直接の被害者だけじゃなく、強盗退治を手伝うつもりで来た人もいるらしい。これじゃリンチだ。



私の街も襲われた! 博物館の宝物を奪われたって!





ジャハの都を占拠して、住民を追い出したって聞いたぞ!





この連続強盗犯め、やっちまえ!





ちょ、ちょっと待ってくれ!


人数が多い。一人二人ならルーガルもあしらえるだろうけど、次々と増える。
直接の被害者だけじゃなく、強盗退治を手伝うつもりで来た人もいるらしい。これじゃリンチだ。



なっ!


ルーガルが指を鳴らした。
そして、姿が消えた。



あっ、そう言えば、転移魔法? が使えるんだっけ・・・


心配することなかったようだ。
それはいいんだけど、暴徒の中、僕一人残される。これはよくない。
逃げ遅れた。囲まれる!



・・・ッ、どうしよう・・・!


タコ殴りにされることを覚悟したとき、見えない手に首根っこをつかまれた。
ぐいと持ちあげられ、体ごと中に浮く。



うわーっ!?


誰かに抱きかかえられている。姿は見えないけれど。
そのまま僕は空を飛び、町の上を横切っていった。ポカンと見上げる人々を、地面に残して。



まったくお人よしだな。私が囲まれて殴られたところで、君は痛くないだろうに。


煙のように、ルーガルの姿がじわりと現れた。
――僕を横抱きに抱えたまま。
声にうっかり見上げてしまって、顔の近さに僕は大慌てになった。



うっ、うわああ!?





暴れられると支えきれない。落としても?





いい! 早く落として!





いてて・・・


ほんとに落とされた。地面に到着した後だったので助かったけど。
ここは町はずれの森らしく、むき出しの土は柔らかい。



しかし驚いた。なぜ彼らは私を憎きかたきのように攻撃するんだろう?





そりゃ君は、彼らの憎きかたきであるリリーシカと同じ顔だろう?





まあそうだな。





だからじゃないかな。





・・・・・・。


ルーガルは黙りこんだ。



思うんだけどさ・・・リリーシカが魔結晶を集めてるなら、放っておけばますます被害者が増える。つまり、勘違いから君を憎んで攻撃する人が増える。





まあそうだな。





君は魔結晶を持つほど魔力が強くて、戦うのもうまい。リリーシカのことを、君自身でどうにかした方が、君にとって楽な道じゃないか?





・・・・・・。


ルーガルは黙りこんだ。
少なくとも、たっぷり二分は沈黙した。
そして、



・・・わかった。君の魔女退治、私も協力させてもらおう。


しぶしぶ感を一切隠そうとしない顔で言った。



私はルーガル・フォレスター。君の名をまだ聞いていない。





そうだっけ? 僕はベシワク。ガトド島の首長イルクの孫だ。





よろしく、ルーガル!


こうして、魔女を追って大陸に来た僕と、魔女と同じ顔を持つルーガル、僕らの二人旅が始まった。
