20 歴史眠る古代の石塔 その1



ロバート。





ロバート!





ロバー――――――――





ぐう……ウグ……ァ……ぁ……





どうし……て





見殺しにした……の……?





ぐああああああああああ!……!


布団をはねのけ、飛び起きる。



ぐぅげ……うぷ……っ ガタガタガタガタ





どうしましたかファンバルカ様。





んぅ!?


覗き込む、見慣れた顔。
それは先程の悪夢。血に塗れた恐怖の姿と寸分たがわぬ。
――だが構わない。



!


その存在を確かめるように、固く、固く抱きしめる。



震えていらっしゃるのですか、ファンバルカ様。





わたくしは熱を持ちません。暖を求めて抱き寄せたとて無意味、素直に横になられたほうが





黙り……たまえ……!


震えは収まらぬ。それもそのはず、これは真似事。意味などない。
ただ意味は持たずとも――



うう……ううう……っ……っ





・ ・ ・


必要なのが今、であるならば――
その手を、そっと背中に回す。



!!





・ ・ ・





……暖は取れないんじゃなかったのかい?





これは学習です。ファンバルカ様が何をなさっているのかを。





それをこの手で、感じるために。





そう……何か、わかったかい?





ファンバルカ様の貧相な背骨の形が。





ふふ、ふ……ククク……


それは本物の抱擁ではないのだろう。だが、本物でないならなんだと言うのか。
気の抜けたやり取りを行いつつ、ファンバルカの心は確かにやすらぎを得ていた――



んぅ!? ちょっと、あれ……?





ちょっと痛くなってきたよ……





いや、ちょっとじゃない! だいぶ! 万力! 僕は今、万力で挟み込まれている……!





熊すら押しつぶすこの腕力が恨めしい。わたくしは、豆腐を包み込む繊細さなど持ち合わせていないのです。





それ僕のこと言ってる!? 嘲りを受けながら押しつぶされる……! どんなシチュエーションなのこれ……!?





さて――――





久々に役所の依頼も入っていない。





今日も遺跡探索と勤しもうじゃないか。





かしこまりましたファンバルカ様。


イーダーマウレッツの石塔
深い森の奥に隠された、古き時代の塔。



この遺跡は長らく誰の目にも留まることはなかった。





それが先日の地震で土砂崩れを起こし、木々の隙間から、姿を現した。





未踏の遺跡だ。何が眠っているか、今からワクワクするねえ~





眠っている? ゾンビやヴァンパイアの根城なのですか?





いや、眠っているというのは比喩表現だが。生き物とは限らない。





とは言え、そういうおどろおどろしい存在が待ち受けていたとしても。





それはそれで心躍るじゃないか。


遺跡探索の妙!
二人は石塔に足を踏み入れる――
続く
