ヘルフリートは、その声に何が起こったか分からず周りを見渡す。
何故かルルーとグレータが巨大化していて混乱する、恐る恐る自分の手を見ると両手は緑色になって、立派な水かきがついていた。



お兄ちゃんがカエルになっちゃった!!!





!?!?!?!???!!


ヘルフリートは、その声に何が起こったか分からず周りを見渡す。
何故かルルーとグレータが巨大化していて混乱する、恐る恐る自分の手を見ると両手は緑色になって、立派な水かきがついていた。



!!!!!


ヘルフリートはそこでやっと、ルルーとグレータが巨大化したわけではなく、自分が小さなカエルになってしまったのだと気がついた。



ルルーどうしよう、どうやったらお兄ちゃんを元に戻せるの?





え?えーっと。びっくりしすぎて頭がまわらない。何でヘルフリートがカエルに…えーっと……そうね、元に戻す方法は……





そうだ、確か本に書いてあったはず。


何故カエルになってしまったのかわからなかったが、ルルーはそう言って慌てて本棚を探る。



これは、おばあちゃんが作った魔法薬なんだよね、……で……えーっと……


パラパラと本をめくりながら、ルルーはその薬の項目を探す。作り方と共に解除方法も載っているのだ。
グレータは、混乱したまま床で固まっているヘルフリートを持ち上げる。
ヘルフリートはグレータの手の上にちょこんと乗っかるくらいの大きさになってしまった。



おばあちゃんは結構変な魔法薬を開発するのが好きで、これもその一つだったんだよね……





あ、あった。えーっと、カエルを元に戻すには……“その人を心から愛している人のキスで元どおり”……





キス……?





……





……





キ、キス!!


混乱中のヘルフリートは、愛する人のキスと聞いて2人を見上げる。
ここは深い森の中だ、人はほとんどいない。



ど、どうしよう。ルルーには振られてるからそんな事たのめないし……


ヘルフリートはこの間、ルルーに言われた言葉を思い出して絶望的な気持ちになる。
なんせこのあいだルルーに告白して、ごめんなさいと振られたばかりだった。



そ、そうだ!グレータ家族愛も愛の一つだ。グレータ、お兄ちゃんとチューしよう!





うわ、喋った。気持ち悪!





ひどい!


グレータが間髪入れずそう言って、嫌そうにヘルフリートを作業台にぽいっと投げ捨てるように置く。



うわ、手がなんかヌルヌルしてるし、キモい





キスとか無理無理。マジで気持ち悪い





グ、グレータ……そんな、ひどいよ……お、お兄ちゃんカエルの姿で、これからどうしたら……





いや、ちょうどよかったじゃない。一人分の食料が余るし。かなり楽になるわ





お兄ちゃんはカエルなんだから虫でも食べたてたらいいのよ





虫を食べる!





それに喋れるんだから、街に行って女の子をナンパでもしてこれば?口が上手いお兄ちゃんならなんとか騙せるでしょ?





あ!そうだ。この国の王様のお城に行ってみたら?可愛いお姫様がいたでしょ?池にボールかなんか落としたところを狙って、友達になってくれたら拾ってあげるから、とか恩着せがましく言って口車に乗せてナンパすればいいのよ





お姫様なんてどうせ世間知らずの箱入り娘なんだから、どうにでも丸め込めるわよ





グレータなんて恐ろしいことを……





うん、我ながらいい案だわ。じゃあ、問題解決ってことで私はまだ仕事があるからいくね!





グ、グレータ!待って!お兄ちゃんはそんなこと無理だよ!





どうしよう……


ヘルフリートは、水かきがついた手を床にぺたりとついて、項垂れる。
どう考えてもグレータの案はいい案とは思えない。そもそも単体でこの森から出て行くことが、まず難しそうだし、途中で本格的に冬になってしまう。
それに運良く森から出られたとしても、話すカエルなんて気持ち悪がられるに決まっている。
殺されるか捕まってどこかに売られる未来しか想像できない。



……





ル、ルルー。なんとか春までここに置いておいてくれないか





でも食べ物は虫じゃない方が……いいんだけ……ど……


ヘルフリートが最後の望みをかけてそう言いかけたところで、視線を感じて上を見上げる。すると棚の上にいたレオと目が合った。



……


レオはまるで獲物を見るような目でじっとヘルフリートを見ていた。



ッヒ!


ヘルフリートは慌てて目線をそらす。しかし、後ろを向くと今度は棚においてある、瓶の中にいるカエルと目が合った。
ルルーが魔法薬を作る時に使うカエルだ。もちろん死んでる。



あわわわ……


作業台の上にいるヘルフリートは、ただの魔法の材料にしか見えない。
そのことに気がついたヘルフリートは慌ててルルーに向き直る。



……


思いつめたような顔をして、ルルーがゆっくりこちらに近づいてきた。



!!ル、ルルー!俺はもう食事は虫でいいから!お願いだから殺さないで!……ぎゃー


ヘルフリートは無様に命乞いをしてみたが、ルルーは黙ってヘルフリートを掴み持ち上げた。
なすすべもなく、死を覚悟したヘルフリートはぎゅっと目を瞑った。
可愛い女の子に殺されるならむしろ本望だ、ヘルフリートはそう諦めようとした。



っ……!??!!!!


しかし、持ち上げられただけで何も起きなかった。



????


ヘルフリートが疑問に思ったところで。
ルルーが顔を近づけ……
ヘルフリートにキスをした。
そうするとヘルフリートの周りに、もくもくと煙が立ちあがる。
そうして煙と共に人間の姿に戻ったヘルフリートが現れた。



へ?……あれ???





どうなったんだ?何が起こったんだ……?





これでいいでしょ?じゃあ、私も仕事があるからもう行くわね





え?ル、ルルー!





ちょ、ちょっと待って!


なんとか状況を把握したヘルフリートは、慌ててルルーを追いかける。
ルルーはすぐに捕まった、ヘルフリートはルルーの手を掴み引き止める。
ルルーは恥ずかしくてヘルフリートの顔を見れない。



!!!





もしかして俺にキスしてくれた?





っ……





カエルになる魔法は、愛する人のキスがなくちゃ元に戻らないんだよね?





……





ルルー、もしかして俺のこと好き?


ルルーはもう全身が真っ赤だ、恥ずかしさとヘルフリートが近くにいるせいで心臓が爆発しそうなくらい高鳴っている。
黙っているルルーにヘルフリートは更に近づき言った。



ルルー。俺も、もしルルーがカエルになっても俺は同じようにキスするよ……





へ、ヘルフリート……わ、私も……


ヘルフリートはそルルーの頬を撫でると、ゆっくりと顔を近づける。



……





ゴホン!ゴホン!





え?わぁ!





わ!!グレータ





うまくいったみたいね、お二人さん


グレータは2人が想い合っているのに気がついていたのだが、何も出来ずずっとじれったいと思っていたのだ。



本当にお兄ちゃんは世話がやけるわよね。……じゃあ私はお邪魔だろうから、ちょっと薬草を摘みに行ってくるわ。ごゆっくり





え?グ、グレータ!あの。1人じゃ危ないわよ





何言ってるのいまさら!それに、レオが一緒に来てくれるって





ニャーン





え?え?いつの間に二人ともそんなに仲良くなったの?


ルルーが呆気にとられている間に、グレータとレオはあっという間に森に入ってしまった。



……





……





や、やっぱり心配だから私も行って来る


ルルーはそう言って赤いローブを掴んでかぶって外に向かおうとした。



ルルー、待って


ヘルフリートはそう言って、ルルーを後ろからぎゅっと抱きしめた。



っ!あ、あの……ヘルフリート……





せっかくグレータが気を利かせてくれたんだし……





きゃ!


ヘルフリートはそう言うと、ルルーを横抱きに持ち上げる。
驚いたルルーは、慌ててヘルフリートの首にしがみついた。



あ、あの……ヘルフリート?


ヘルフリートはルルーの戸惑った言葉を無視して、ルルーを抱き上げたまま。ルルーの部屋に連れていく。



え?あ、あの……


そしてヘルフリートは部屋に入ると、どさりとルルーをベッドに押し倒した。



へ、ヘルフリート?





さっきの続き、いい……?


ルルーはヘルフリートの行動の意味がやっと分かり。さらに顔を真っ赤にさせて慌ててフードを被り顔を隠した。
時間はかかったが、ルルーは自分の気持ちは自覚していた。
この状況は嫌ではなかったが、やっぱり恥ずかしくてどうしていいかわからなくなる。



わ、私……





ルルー、嫌なら言ってくれすぐにやめるから……





い、嫌じゃない……





参ったな……こんなに可愛いいこと言うなんて、途中で嫌だって言ってもやめてあげられそうにないな……


ヘルフリートはそう呟くと優しい手つきでルルーの手をどかしフードをめくる。
ルルーは今度は抵抗しなかった。
ヘルフリートはルルーにキスをする。
そして微笑み冗談めかして言った。



じゃあ、いただきま~す


