02 どうしてお口が大きいの?



急がなくっちゃ急がなくっちゃ。





急が……





あっ 急いでたら到着しました!





大きなツリーハウス。おばあさまはここに住んでるんですよ。





木を削る音、弦を弾く音。笛の音。たくさんの音楽でいつも溢れてるの。





だけど……





どうしたのかな。なんだか今日は静かなの。





ごめんくださ~~い……





大変!





うう……ううう……





おばあさま、臥せってどうしたの!? お加減が悪いの?





やあ、おまいさんかね……ちょいと夏バテじゃよ……歳にはかなわんのう。





それは大変……





あのね、あのね、ダナエ贈り物を持ってきたの。これを食べて早く元気になってくださいね。





おお、これは嬉しいねえ……


その時です。ダナエはぎこちなく動きを止めます。何か気になることがあったのでしょうか。



ねえおばあさま。わたし気になることがあるんです。





どうしてお口がそんなに大きいの?





それはね、妖怪じゃからだよ。





何を今更。そんな事とっくに知っとるじゃろうが!





妖怪にしか感じ取れぬジンのざわめきを木に刻み込み、この世のものとも知れぬ楽器が出来上がるのじゃ!





それはそうだけど、舌がそんなに長いのはどうしてかなって。





便利なんじゃよこれがぁの! 不届きな連中をまとめてはたき倒せるんじゃよ!





道理で異常に強いオバアだと思ったわよ!





まあびっくり!


予想もしていなかったところから声が聞こえてきてダナエはびっくり仰天。
なんとそこは、ベッドの上で更に――おばあさんの下からだったのです!



生意気なチビ狼が襲ってきたからしばいて敷布団にしてやったわ。





へ、へん、あれは油断してただけで本気のアタシにかかれば――





――いて、イテテテ!これ以上潰さないで!おせんべいになっちゃう!!


夏バテしてても元気そうなおばあさんを見て、ダナエも安心します。



それじゃあね、おばあさま。また来るときは素敵な楽器の音を聞かせてくださいね。





おうおう、任せておき。丁度いい狼の皮も手に入ったことだし、いい楽器のアイデアが閃きそうなんじゃ。





それってアタシのことかしらーー!? まだ死にたくないわーー!





邪魔するぜ。





おお、あんたは猟師。





りょ、猟師……! まさかほんとに皮を剥いで売りさばこうって言うんじゃ……!





いや、今日は楽器を引き取りに来ただけじゃが。





そうじゃった、そうじゃった。棚の2段目に置いてあるから持っていっておくれ。





うむ。では代金は今まで通り。


滅多に森から出ないおばあさんの代わりに、町まで楽器を運ぶ手伝いをする猟師さん。このようにして、おばあさんの素敵な楽器は町に広められていくのですね。



それにしても……寝ているのかバアさん?





おばあさま、夏バテで体調を崩してしまったんです。少し休めばきっと良くなりますよ。





ふぅん、では――





え? あ……え!?





死んでもらうぞ妖怪。


続く
