銀色の……
銀色の……
chapter1-1:庄司霧子、浅羽大
新宿のとあるバーガーショップで、20代のパンツスーツ眼鏡をかけた女性と、50代の白髪混じりの男性が小さなテーブルで向き合って食事をしていた。
女の名前は『庄司霧子』
男の名前は『浅羽大』
2人は食事をしながらも、通りを行く人を見ていた。



この『月見サンドイッチ』は美味いよな!この時期だけは、ここに来るんだよ





浅羽さん『月見バーガー』ですよ





あれ?ショージ……俺は今、なんて言ってた?





『月見サンドイッチ』です





そんな事言ってたか





はい。語呂の悪さから、普通は間違えないかと……これは、何となくウケを狙った予感しかしませんね





ははは。
そんな、まさか~。
そうそう!サンドイッチ!……サンドウィッチ!ウィッチ!ウィッチ!





いや、発音の方じゃなくて……





ウィッチ……witch………魔女さん。
発見したよ。





えっ?





アレだろ?フード被った全身真っ黒の女性





………行きましょう





まだ、食べてる途中だぞ





持って出れば良いでしょ!





……はいはい。
最初からお持ち帰りにしときゃ良かった





ウルサイ!!


庄司と浅羽は、一人のフードを被った女性を見付けると、バーガーショップを出て後をつけた。
『怪しい集団が活動している』
『フードを目深に被り、まるで魔女の様だった』
『全身黒い服を着て、マツコ・デラックスみたいな服装でした!』
『何かぶつぶつ言いながら歩いてて怖い』
噂が絶えずSNSなどで言われて、目撃証言が多いのに、いざ探そうとすると、なかなか見付からない。
庄司と浅羽は探偵だ。
正しく言うなら、浅羽は探偵事務所の署長で、庄司が社員という立場だ。
浅羽探偵事務所の他のメンバーは経理の浅羽鈴子という、浅羽大の奥さんがいるだけで、3人だけの小さな探偵事務所。
今回、噂の真相について依頼を受けて、数日の聞き込みの末、二人は新宿のバーガーショップでの張り込みを決行した。
本当は庄司だけで行う予定が、浅羽が『どうしても食べたいものがある!』と、勝手に着いてきて今に至る。



ショージ……あいつ、たぶんこっちに気付いてんぞ





えっ?





別にとっ捕まえるわけじゃねぇ。本当は集会みたいなのをおさえたかったが……早いとこ声をかけよう





そ、そうですね


しかし、フードを被った女性は、更に歩く速度を上げて路地へと入る。
2つほど、角を曲がったところでーーー
フードを被った女は、コチラを向いていて両手を広げて立っていた。
それは、ハッキリと私たちを待ち構えていた様で………



あの!すみません!聞きたい事があるんです!


返事はなかった……フードを被った女は、広げた両手を、ゆっくりと空に向けて伸ばすとーーー
とてつもない輝きだった……人工的な光とは異なる、太陽光を鏡に反射させたような。
いや、銀色の……何かに反射させたような、なんとも形容しがたい光。
そして、フードを被った女の姿は消えていた……。
突然の出来事に言葉を失っていると、更に一つの違和感に気が付く。
路地裏から見上げた景色に、見慣れない大きな銀色の何かがあった。
いや『大きな』という表現は正しくない……巨大だ。
巨大な板?建物が、そこにあったのだ。



浅羽さん……あれって……なんですか?





なんだ……あの銀色の……


……つづく
