第7幕
リゾート列車エーデルワイス号



ルビーを眺む部屋にて、ともに燃ゆる少女の祈りを聞き届けよ…





さっすが兄貴っス!!ルビーって、この事だったんスね!!!





おうよ…あとはこの、少女ってのが何か分かれば…





くぅ~!!これで俺達も億万長者!!一体いくらで売れるんスかね!!





さあな…ただ、かつてヨーロッパ全土にその名を轟かせた大怪盗が盗み損ねたお宝だ…本物なら、かなりの値打ちになるぜ…!!





早く拝みたいもんだ…怪盗クラバットの忘れ物とやらをよ…!!





ーークラバット…?





っ!?





な、なななななんすか!?!?





……………





お、女の子…?





お、お前…いつから…!?





怪盗クラバット…流石ね。うふふ…





でも…次の問題、あなたに解けるかしら?





あ、兄貴…あの子…あ、あし…あしが…!!





あ…あああああああ…!


第7幕
リゾート列車エーデルワイス号



ふかふかベッド!





カジノ!





バーカウンターに…





最高級レストラン!!





リゾート列車だああああ!!!





リゾート列車だああああ!!!


俺達は、ミスコンの景品であるペアチケットを利用して、リゾート列車エーデルワイス号の搭乗ホームに来ている。
当の列車は既に到着しており、今は整備士が最終チェックを行っているところだ。俺とルオはというと…それすらも待ちきれずに、さっきからずっとこのテンションだ。しょうがないだろ、一般人なんだから。



もう…気持ちはわかるけどちょっと落ち着きなさいよ、二人とも…





恥ずかしいですよ…同行者だと思われたくないです


後ろから、小さな旅行カバンを持ったベルリーナとアマンドが呆れた表情で合流する。二人とも今日のために用意したというワンピースに身を包んでおり、非常に魅力的に見える。
ベルリーナに至っては、長時間の直視は危険な気がする…俺の心臓が持たない。



あはは、ごめんね。僕こういうの見るの初めてで…





こんなのテンション上がらない方がおかしいって!これから、三日間この列車で過ごせるんだよ!?





ルオは健気ね…





というか…今更なんだけど、本当に私でよかったの、リーナ?お父さんやお母さんは…





アマンドさんが良かったんです。両親も、せっかくだからお友達を誘って行きなさいと言っていたので…気にする必要はありませんよ





リーナ…


俺のペアチケットでルオを、ベルリーナのペアチケットでアマンドを誘い、



せっかくならみんなで行きましょうよ!こんなこと、もう人生で何回あるか分からないじゃない♪


という彼女の発案で、日にちを合わせて4人で行くことになった。
……その甲斐もあってか、あれからベルリーナとの関係は良好だ。『好き』って気持ちに変わりはないけれど…でも、以前よりかは断然溝が浅くなっている気がする…
いつかこの気持ちを御せる日が来たら…その時は…



ただいまより、搭乗案内を開始致します。お乗りのお客様は、乗り口の添乗員に切符をご提示ください





あっ…もう乗れるみたいだよ。行こ、サヴァランくん!





ああ、行こうか





うふふ、楽しみね、リーナ!





そうですね…沢山、思い出を作りましょう


小気味いい音を立てて、差し出した切符に切れ込みが入れられる。割り当てられた部屋の前でベルリーナとアマンドと別れ、俺は客室のドアを開けた。



わぁ…!





わぁ…!


そこは…高級ホテルの一室とほぼ変わらない作りだった。煌びやかな調度品と、シルクの遮光カーテン…電車の揺れで落ちないよう固定された花瓶には、真っ赤なバラが一輪挿さっていた。



すご…すごい…!





サヴァランくん…!すごいよ!ベッドふかふかだよ…!!


一足先にベッドダイブをしていたルオが、羽毛布団に顔を埋め、夢見心地な声で言う。
つられて俺もベッドに倒れ込むと、ふかふかのマットレスが優しく身体を受け止めてくれた…やばい…このまま寝そう…今日は朝も早かったからなぁ…



うーん……このまま寝ちゃうのももったいない…!サヴァランくん!!探検!!探検しよ!!





ああ、いいね…ここはまずい…寝ちゃう…


ベッドから跳ね起き、ティーテーブルの上に置かれた車内地図を手に取る。
ここは客室車両の8号車だ。ここから1番近いのは、すぐ隣の7号車…遊技場で、カジノやダーツが楽しめる場所だそうだ。後ろの9号車は貨物車両で、乗客の立ち入りは禁止されている…乗務員室、及び管理室は1号車、この列車のウリであるジェットバスや温水プールが楽しめるプール室が2号車、その更衣室、パウダールームが3号車、4号車は、ヨーロッパ、及びこの列車の歴史資料が保管されている資料室で、5号車がレストラン…そして…



これは…





やっぱ、ここに行くしかないでしょ…!


6号車はーー



バーカウンター!!





バーカウンター!!





よし!決まりだね!!





美味しいカクテル、飲みに行こー!!


せっかく飲酒できる年齢なんだし、軽く二三杯位は許されるはず…!すっかり浮かれたテンションになった俺は、ルオを先頭に6号車を目指して部屋を出た…。
*日本の法律では、未成年者の飲酒は禁止されております。飲むんならバレないようにしろよ…間違えてもTwitterとかに流すんじゃねえぞ…燃えるぞ……俺も…流さねえからよォ…(そうじゃない)



ほわぁ…





すげえ…





あの廃バーカウンターしか知らなかったから尚更…


煌びやかな装飾からは一転、シックで落ち着いた雰囲気のそこは、まだお客さんが入っていないようだった。車両の所々に小さなクリスタルの飾りが吊るされており、少ない光源を反射してキラキラと輝いている…。



バーカウンター・Cher Souvenirsへようこそ。切符を拝見致します





どうぞ





………ブリュレ様…2名様でご利用ですね。





開店直後で、ほかのご利用者様もいらっしゃいませんので、どうぞお好きな席でおくつろぎ下さいませ





Merci, 行こうか





うん!


席はカウンター席、ボックス席があり、パーティー用のスタンドスペースもあった。しかし、店内にはウェイターが言った通り、客が一人もいない。ジャズのレコードが、静かにその場を演出するのみだった。



……あれ、サヴァランくん…?


せっかくだからカウンターに行こうかと話していると、そのカウンター越しに聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。この声は…



サクラ、シオ…!?





うわホントだ!サヴァランじゃん!!





久しぶりだね。元気にしてた?


バーテンダー姿のサクラとシオが、カウンターの向こう側に立っていた…。
