第三試練開始から10分後。
敬介は、
暗い山道を駆けなが後方の様子を確認すると、
近くの木々に身を寄せた。
第三試練開始から10分後。
敬介は、
暗い山道を駆けなが後方の様子を確認すると、
近くの木々に身を寄せた。



はぁ、はぁ……。
開始早々、いきなり襲ってきやがって。
一体どういうつもりなんだ。


左腕から流れる血を右手で押さえながら、
ゆっくりと呼吸を整える。
時は第三試練前に遡る。
参加者達に与えられた休息の時間は終了し、
第三試練の開始の為に、
再び鈴香が広間で説明を始めていた。



第三試練ですが、実践型の試練となっており、この夕暮れ灯台の隣にある森の中で行います。
試練の内容は簡単です。
6時間の制限時間内に、森の中で10体のシャドーを倒す事。
この中には、すでに経験者もいらっしゃるようですが、同化済のシャドーとの戦闘も想定して、他の参加者との戦闘も認めております。
参加者を一人倒すとシャドー10体分とみなしますので、周りにはお気をつけを。
では、外に出てください。


灯台の外に出ると辺りは真っ暗で、
灯台の明かりと月明かりの二つが目立っていた。
周りは海と森で他の建物は一切ない。
どこかへの通り道となっているわけでもないので、
車すら全く通らない。
かろうじてバスが一日に二本通るだけ。
こんな真夜中であれば、
なおさら人気はない。



ちょっと怖い感じがするね。





うん。
昼間と比べたら不気味だよ。





それよりも、やつらの視線の方が不気味だろ。


大宮は、
こっちを見ている参加者達のことを、
敬介と美咲に首を横に振って教える。



…………。





…………。





…………。





…………。





…………。





…………。





…………。





…………。





…………。





…………。





…………。





ああ。





やっぱり私達狙われてる?





だろうな。
正統じゃない人間を憎んでるやつも多い。
参加者を狙うなら、お前ら二人だろ。





…………。


参加者より少し遅れて到着した鈴香は、
開始前最後の注意を促した。



最初の30分間のみ、参加者同士の戦闘を禁じます。
森の中とはいえ、皆さんの行動は全て協会で把握しておりますので、制限時間終了までに最善を尽くして戦ってください。
協会からのアクションがない限り、ルール違反ではありません。





では、第三試練「退魔(たいま)」を開始します。


第三試練が始まり、
敬介ら三人を除く他の参加者達は全員、
森の中へと消えた。



俺達も行こう。





うん。





ああ。


敬介の声掛け後、
三人は森の中へと入って行った。



ふふ。
さて、カラウの弟子達の実力を見せてもらおうかしら。


三人は、
全く知らない森の中を、
敬介、美咲、大宮の順に警戒しながら歩いていた。



ねぇ。
シャドーを一人10体倒すってことは、この森の中にシャドーが100体以上いるってことなのかしら?





それ俺も思った。
そんなに沢山のシャドーを野放しにしちゃダメだろ。





この森に入る時に気付かなかったか?
あちこちに呪符で結界が張られてるんだ。
力の弱いシャドーは森から出られない。
いわば協会で飼ってるのさ。





飼ってるだと。
もし、その結界が壊れて街に行ったらどうするんだよ!!





そんなの俺も知らねぇよ。
そうならない自信があるんだろ。





くっ。


必死に人を守ろうとしているのに、
その光術士を束ねる協会のやり方に憤りを感じた。



二人とも。





うん。





きたか。





なんだ。
シャドーじゃないのか。





葉栗。





大宮か。
後ろのは例の奴らだな。





…………。





…………。





だからどうした?
開始から間もない今、参加者同士はまだ戦えない。





なもん、知ってるよ。
それに、お前らと戦う気はねぇ。
3対1じゃ不利だからな。





まぁ、せいぜい頑張りな。


名家の一人である葉栗陽平は、
さっさと三人から離れて別の方向へと向かった。



少しヒヤッとしたぜ。





私も。





ヤツは正統がどうとか気にするようなヤツじゃないからな。
ただ、気まぐれでってこともあるから警戒はしたが……。


三人は木を取り直して、
再び森の中を歩き始めた。



ふせろっ!!





ぐわーっ!!





形山君!!





煙玉か。
一旦散り散りになるぞ!!





ああ。





形山君!!
無茶しないでね!!





天野さんも気をつけて!!


煙玉によって視界を奪われ、
敵に狙い撃ちされる可能性があったので、
大宮の咄嗟の判断で散り散りになることにした。
煙が晴れた頃、
三人はすでにその場にはいなかった。
その誰もいない場所へ、
一人の人物がやってきた。



もういないのか。
残念だな。


真新しい血の跡を発見して、
次に向かう方向を決めた。



こっちに行くかな。





どこかに隠れないと。


