誘拐騒動 その5



ウソだった……!?





ええ……





わたしが考えたんです。





ジェニー!





いいの。……うちは両親がとても厳しくて、交際なんて許してくれないんです。





家柄がどうとか、ユーキとのこと認めてくれないから……





この屋敷が何か儀式をやってるというのは噂になってたから……そこで、さらわれて、助けてもらったら一目置かれるじゃない……?





可愛い顔してとんでもないこと考えるわね。





やれやれ、とんでもないものと遭遇してしまった。





結局、悪魔の儀式なんてなかったんですね。





ただの噂だな。暇な町人が考えたんだろうよ。





ククリたちにも伝えてやらんとな。


廊下を歩く二人。その時――


下へ降りる階段に。馴染みのある赤色。それは……血痕!



つまりどういうことだぜ!





よーするに、狂言ってことよ。





お嬢ちゃんが誘拐される。ウソよ? もちろん。そしてこの子が、さっそうと助けるってわけ。





そしたら、ヒーローじゃん。どんな厳しい親でも二人の仲を認めちゃうんじゃなーい?





そんなもん、うまくいくわけねーだろ……





なんで案外冷静なんだよ、そこで! いいけど!





どっちにしろ、浅はかだわ。ほんとうに怪しい儀式に巻き込まれたらどうするつもりだったの。





儀式か……
僕は、ここでお仕えしてるからわかりますけど、そんな大したものじゃないんですけどね。噂に尾ひれがついただけで。





さっきは騒いで、ごめんなさい。お母様が依頼した方々なんですよね? ユーキ以外に助けてもらったら意味がなくなっちゃう、って思って……





わたしたちのこと……どうするつもりですか? 連れ戻しますか……?





あほらし、あほらし。いいわ。二人で愛の狂言劇の続きするなり、好きにして。





お母様には適当に言っとくわよ。最終的にあんたたちが帰ってくるならどんな方法でもいいでしょ、別に。





帰るわよ、スネイク。





わーったよ。





ありがとうございます……! ご迷惑おかけしました。


礼をいい、奥の方へ下がっていく二人。
――そこに!



おい! 気をつけろ! 彼らを二人っきりにさせるな!





リチャード? お前も潜入してたのか。なんだよ?





はぁ、はぁ、儀式は、儀式は……!


駆けつけるリチャード。彼我の距離、十人分。ああ、ああなんということだ。絶望的に間に合わない。
娘たちふたりのそばに階段から……あやしき手!



ひ!


ついで顔を現す、あやしき男! 目を爛々と輝かせ、娘を羽交い締めにする!



ひひひ、生きのいい少女だ……生贄にふさわしい!


階下へと引きずり込まれる娘!



ジェニー!!





なによ、あいつ!





屋敷の主人だ。奥方のふざけた催しの裏で、密かに儀式を行っていたらしい!





儀式はほんとにあったのかよ!





あ……あ……お願い、ジェニーを助けて……


階段をめがけ駆け出す四人。交差する少年。ただ一度振り返り、



当然だ!!


それが、依頼なのだから。



ひーひひひ! わしは、神を召喚するぞ!





ま じ か


続く
