


……何者だ、あの鬼は? 柳生殿のことを知っているのか?





今柳って言ってた……柳のことを覚えてる鬼がいたの?





柳……無事だったんだ





楓も……生きてたんだね





うん。なんとかね





……柳、傷だらけだよ。治りかけのも多いけど……大丈夫?





心配ないよ。ちゃんと手当はしてもらってるから





まさかお前が……楓がずっと探してた幼馴染か





そういう貴方が、覚ですか





あぁ。俺が覚だが、何か用か?





御命、頂戴する!!





なっ…………!?





………っ!!





楓………!?





柳………どうして………?





…………





……楓、その人を渡してくれ





できない。せめて理由を教えて





………その人が、弾正様の敵だから





弾正様の敵ってのはどういうことだ? 俺は特に何かした覚えはないんだが





しらばっくれるな。災禍という鬼が全て吐いたぞ。化け狸に指示を出して弾正様を暗殺したことをな!





あの馬鹿野郎……全部擦り付けて逝きやがって





やはりあの餓鬼が災禍と部下を皆殺しにしたのか……





私は弾正様の仇を執るために今回のみ指揮権を与えられました。そして我々の悲願である戦の終焉を迎えるため……覚を討たねばならない





貴方一人の首を頂ければ、もう山を攻めないと約束します。貴方の命で戦を終わらせてもらえませんか?





…………っ





できません!!





……楓?





覚様は2年前に私を助けて下さった……ずっと私を見守って育てて下さった………この人は私にとって大恩ある方なんです





そんな人が殺されると分かって……素直に渡せると思いますか? 覚様は柳にとっての弾正殿と同じなんだよ?





楓………





柳……貴方が人間軍の中で強くなって弾正殿に恩義を感じてるのは伝わってくる。きっと私が想像もできないようなことが沢山あったんだと思う





けど、もうやめよう。これ以上誰も死んでほしくないし血を流してほしくない。それに、私は柳と争うなんて嫌だよ……





やっと会えたんだよ……一緒に山に帰って、また一緒に暮らそう?





…………っ





………ごめん楓





僕は既に化け狸や災禍達、同族だった鬼を大勢殺してきた。もう、昔に戻るのは無理なんだ





そんな…………





それに、僕はこの2年で松尾軍の皆さんにも沢山助けてもらった。もう私は鬼には戻れないんだ





人間軍の将・柳生として松尾軍のために戦う……それが私が決めた道なのだ!





駄目だよ……柳…………っ





だから楓、頼むからどいてくれ。覚の首が取れれば……この戦は終わるんだ





…………っ





駄目です!!





…………!?





楓…………?





たとえどんな事情があっても、覚様を殺すわけにはいかない。それに柳も……これ以上殺してほしくない





だから、どかない! もう大事な人を失いたくないから……私が柳を止める!





本当は…………今でも君が好きだよ。君とだけはこんな形で会いたくなかった





だけど…………っ


