


急ぐぞ、人間側が攻め込んできたら覚殿なしでは勝てぬ





はいっ!!





覚様!!





楓? なんでお前こんなところに





迎えに来たぞ、覚殿。先ほど人間軍が進軍してきた





嘘だろ……いくらなんでも早すぎないか? 松尾弾正が死んで、もう少し沈黙すると思ったのによ





連中はどこまできてる?





平原に布陣している。まだ明確な攻撃はしてきていないが……





きゃっ!





な、なんだ? 地震の予兆は感じてないぞ?





地震にしちゃ短すぎるし揺れ方が極端だ……それに麓の方から音がしなかったか? まさか…………





天狗、のんびり行動してる場合じゃなさそうだ。仲間連れて麓の様子見てきてくれ。俺は前線に行ってみる。爺さん達もそこにいるかもしれねえ





承知した。戦は任せたぞ、覚殿





楓、一緒に前線に来てくれ。お前の力が必要になる





今のは……人間側の攻撃なのでしょうか? こんなの、今までに…………





……あぁ。今までとは何かが違う。連中が本気で俺達のことを潰しにきてるんだろう。恐らく今回が正念場だ。だからこそ、気を抜くなよ





ん? あぁお帰り。人間軍の……あれは何かね? 馬鹿でかい筒みたいのから爆弾みたいのが麓を吹き飛ばしやがった。あんなのみたことないよ





…………っ





……どうかしたかい、狸さん?





姐さん、人間の指揮を執ってる、一番前にいる人見えるっすか?





えーと……おいおい、ありゃ鬼じゃないか。しかも昨夜見た青い髪をしてやがるよ





やっぱり正解っすか………そいつが……そいつが…………





そいつが、師匠を……っ!!





………真狸?





………なんだ、これは?







これは………





ふざけるなよ……この子らが何故死なねばならないのだ……何故こんな無残な死を迎えねばならない






この子らが一体何をしたというのだ!!





もうすぐ平原だ楓! 急ぐぞ!!





はいっ!!





――――言ったはずです。私は無駄な殺生は好まない。ですが、貴方達は望むのであればいくらでもお相手しましょう





あれ この声……どうして…………





爺さんと見えてるのが大将か……随分と自信満々じゃねえか





鬼の底なしの体力はご存知でしょう? 一騎打ちでしたら、たとえ鬼でも全滅させられますよ?





やっぱりこの声……懐かしい。間違いない……





鬼って……どういうことだ? 人間の奴ら、遂に鬼の捕虜に縋りやがったのか……?





って、楓!? 何やってんだ!!





…………柳?





…………え?





………かえ、で?





久し、ぶり………


