その日、また露樹さんは俺の部屋にいた。
江岸はあのあとすぐに帰ったが、直前に
その日、また露樹さんは俺の部屋にいた。
江岸はあのあとすぐに帰ったが、直前に



工藤くん、あたしに出来ることがあったらなんでも言って


と言い残した。



…………っ


露樹さんに殴られてから、涙が止まらなかった。
止めようとしても、まるで洪水のように流れ落ちていく。
江岸が帰るまではなんとか耐えれたが、すぐに泣き崩れてしまった。
そんな俺を、露樹さんは昨日のように包み込んだりせず、外の月を見ては、時折チューハイを口に運ぶだけだった。
日付が変わり、今日は日曜日。
学校が休みであることに、今ほど感謝した時は無かった。



あんた、どうするの?


結局夜通し付き合ってくれた露樹さんが言った。



昨日ドタキャンしちゃったんだ、ちゃんとみんなに謝るとか、そういうのを行動で示すとかしないと





そうですね……。何とかしないと、評判が悪くなって住みにくくなる





なんか捻れてる気がするけど…まぁいいか


ため息をつく露樹さん。
正直なことを言ったつもりなんだが。



策はあるの?





一応、昨日泣きながら考えてたんですが……





泣きながら考えれるって……器用だね


変なところで感心された。



昨日の二次会が市の人間を全員集めてパーティーするという内容だったんですが……それをやろうと





うーん…。悪くはないかもしれんが、昨日と同じ内容をそのまま催すのはどうだろう?少しでも工夫しないと、相手に何も感じてもらえんぞ


真面目にアドバイスをくれる露樹さん。
だが、俺の中では既に案が出来上がっていた。



大丈夫です。みんなが楽しめる企画を考えてありますから





……それはどんな?





じきに分かります


はぐらかす俺に襲いかかる露樹さんを退け、家の電話を取る。



もしもし…?





もしもし。江岸?





うん。どうしたの?





ちょっと頼みがあるんだけど


電話越しに江岸が緊張するのが分かった。



いいよ。どんな?





綾瀬さんの家って料亭だったよね?





うん


計画は既に出来ている。
……計画と呼ぶのも気がひけるほど単純なものだが。



家、どこか分かる?





うん、よく遊びに行くし


だが、成就させるには終始俺が動かないといけない。
気を抜けば簡単に破綻する。
すべては俺次第だ。



今から岸ノ荘に来れる?





うん


だが……



…連れていってほしい


成功させないといけないんだ……
視界の端で、露樹さんが小さく笑うのが見えた。
