家に着いた瞬間に躰の緊張が一気に抜けた。
鞄を放り出し、畳の上に横になる。
家に着いた瞬間に躰の緊張が一気に抜けた。
鞄を放り出し、畳の上に横になる。



…………


目を閉じると、さっきの江岸の顔が脳裏に蘇る。



……バカ


その通りだと自分でも思う。
江岸に会って、少しでも変わろうと思ったんじゃ無かったのか。
こんな早速躓いていいわけないのに……。
ドアが開いた。
誰かが部屋に入ってきた。



入るよ





既に入ってるじゃないですか


露樹さんだった。
チューハイ片手に俺の顔を覗き込んでいる。



梨奈が外であんたを待ってるわよ


呼びに来たらしい。
そういえば、江岸の下の名前は梨奈だった。



みんなに知らせて来たんだって。あんたは二次会に参加しないって


衝撃が躰を貫いた。
また視界がぼやけそうになる。



……入れてあげて下さい





分かった


5分後、俺は机を挟んで、江岸と向かい合うように座っていた。
露樹さんは俺達の間で仁王立ちしている。



…………っ


江岸の顔は昨日と同じくらい真っ赤だった。
こうしてる今も、彼女の頬を涙が落ちていく。
罪悪感で胸がいっぱいになる。



……ごめんね。一人になりたいって言われたけど、やっぱり気になっちゃって……


クラスのメンバーにはメールで事情を説明し、今日の予定を撤去してもらったらしい。



ごめん、俺のせいで…





ううん、あたしのせいだよ。あたしが工藤くんにちゃんと聞かなかったから、不快な思いさせちゃったんだよね…。
本当にごめんなさい……


江岸は悪くない。
その言葉が喉につかえたように出なかった。



事情は分かった





今回は、柊作くんは…仕方ないか。君の過去を考えると、クラス全員との昼食に耐えれただけで大したものだ


再び顔を歪める江岸。
俺は戸惑いながら江岸を見ていたら、横から襟を掴まれた。



……でもね!!


乾いた音が部屋に響いた。
江岸が息を呑む。
露樹さんが俺に張り手を浴びせたのだ。
思わず床に倒れる俺。
江岸が駆け寄る。



甘えるなよ…


露樹さんは怒り、肩で息をしていた。
鋭い視線が俺を貫く。



あんたに何があったかは知ってる、同情できる程にね。
でもね、世の中甘くないんだ。いつまでも過去に縛られて前に進めない人だって沢山いる。あんたは過去と向き合って、乗り越えるんだ!それがあんたが前に進む唯一の手段なんだ!





…………っ!


露樹さんの言葉が矢のように胸に突き刺さった。
