教室では普通に授業の最中だった。野沢心は黒板に書かれた数式を書き写しているようだ。

　鮫野木は勢い良く開けた。

　野沢は驚いた様子でこちらを見つめる。当然だ。授業中に突然、勢いよくドアを開けて入る人が居れば驚くのが普通だろう。

　野沢は小声で囁いた。周りを気にしてるらしくオドオドとしている。

　教壇に立っている中年ぐらいの教師が数式を指して居た。それを生徒達はノートに書き写していたり、眠たいのを堪えようとしている。ただ、部外者が教室に入ってきた事が無かったの用に授業をしている事を除けば普通の授業だろう。

　教室中に六十部の叫び声が響く。俺は思わず変な声を出してしまった。

　気が付いたらアンノンが数十体が鮫野木達を取り囲んでいた。

　鮫野木は野沢の腕を掴んだ。

　強引に野沢の体を引っ張って、教室から出て行った。アンノンの動きは鈍く、あいにく捕まることはなく逃げ切れた。

　走って逃げて、気が付いたら中庭に居ることに気づいた。俺は野沢心を近くにあったベンチに座らせた。

　鮫野木はうついている野沢を黙って見つめていた。彼女を見ていると胸の奥がズギズギする。この感情は何だろうか。

　野沢は教室から出てから、喋らないでいた。そんな野沢に小斗は隣に座って優しく話しかけた。

　好きな物は無い。そう野沢は小さな声で言った。その時の彼女の悲しそうな表情を見て、鮫野木は昔の自分を思い出してしまう。

小斗ちゃんに助けられる。あの時の自分を……。