「もし私がお嫁に行くまでにこのクリプテックが解けないようならば、骨法院通りにある璃玖堂という骨董屋に持っていてきなさい。手元に謎を残しておいたままじゃ気持ち悪いでしょう?」



悔しかったらこのパズルを解いてみなさい、という20世紀からの挑戦状なのかもしれませんよ?





挑戦状って…アライヲさんはまた話を大きくして~。お客様も待ってることですし勿体ぶらずにさっさと鑑定を…





もしかして店長さんは祖母の事をご存知ですか?





なぜそう思います?





おばあちゃんに本当はこう言われたんです。


「もし私がお嫁に行くまでにこのクリプテックが解けないようならば、骨法院通りにある璃玖堂という骨董屋に持っていてきなさい。手元に謎を残しておいたままじゃ気持ち悪いでしょう?」



では私も本当の事をお話しましょう。





それは昔に私…の父、ここの先代から聞いた話なのですが、
どうやら彼はあなたの教会のアンティークを出張鑑定したことがあるらしいのです。





まあ、そんな経緯が。道理でお店の名前まで指定していたわけですね。





あれは戦後間もない頃の浅草。
このお店が骨董店を名乗る前に万屋、つまりなんでも屋をやっていまして商品を売るほかにも、
銭湯のペンキ塗りや建物の簡単な補修を生業にしていました。





さきほど教会の補強について話がありましたが、
実は先代が建物内の備品の修理と鑑定を頼まれて足を運んだことがあったらしいのです。





あら?という事はやはり補強工事をしていたのですね。
おばあ様、なぜ嘘をついたのかしら?





聞いた話によると、とても気の強いシスターだったそうで。
父とはあまり折り合いがよろしくなかったそうですよ?だからその…





借りを作ったなんて事は他人に知られたくない…という心情からですかね?





いにお君?





あっ!!





まあ!それは祖母が大変失礼な事を。代わってお詫びいたします。





いえいえ、謝る必要などありません。
それはあくまで私たちではなく、上の世代の因果ですから。





いいでしょう。その鑑定お受けいたします。
但し、もしお客様にお時間があればなのですがそのクリプテックスをみんなで解いてからにしませんか?
ちょうど良い暇つぶしになりますからそうしていただけると助かります





よろしいのですか?
それはとても楽しそう。うふふ





お客様まで乗り気になってしまった。
ちょっと複雑だけどここは空気を読んで、僕も謎解きに参加しよう…





いにお君、あなたはお茶を淹れてきて下さいね。
お客様は何になさいます?





申し訳ありません。ではコーヒーをお砂糖抜きで一ついただけますか?





ええ!?
ここに来て僕は除け者!?!





そう。あれは今から半世紀以上前の事ですね。


昭和二十二年 浅草



御免下さい。
璃玖堂ですが破損した小窓(ステンドグラス)の修理と備品の出張鑑定にやってまいりました、二岡と申します。





ハイ…





OH,JESUS CHRIST!!
(まあ、なんて事なの!?)





どうかしましたか?





…





日本語覚えてないのか?





WHAT'S UP,MUM?
(どうしまシスター?)





YOU ARE CHRIST(あなたはイエス様なの)?





WHO?WHAT?(誰が?何が?)


続く
