俺が謝っていると、赤ずきんがすかさず入り、



すみません、これ溶けてたんですけど





申し訳ございません……


俺が謝っていると、赤ずきんがすかさず入り、



良いんですか? そう言ってる間にも、お客様の大切なゴリゴリ君はダラダラ君になっていますよ


……と言う展開にだけはさせたく無いので、赤ずきんが来ないうちにと謝罪を繰り返し、溶けていないであろうアイスと交換をした。



この店は、ロクに冷房管理も出来ないわけ?





すみません


すると、お客様に黙って溶けかけのアイスを突き返され、俺の手はドロドロに。まぁ、それは良いんだけど。
お客様が背を向けて歩き出したので、俺は清掃道具を取りに行こうとレジを離れようとした。その時、赤ずきんが俺の手元のアイスに気づいた。



あ、そのアイス当たってるね!





!!





え、あ? 本当だ……





返された物でしょ? 折角だから棒だけ貰っちゃえ





……ちょっと、その棒当たってるの?





はい。当たってますよ?





……それ、もともと私が買ったものだってことは分かってるわよねぇ





ですが、お客様はもう既に新しいアイスを……





あ?





少々お待ち下さいませ!!


一触即発になる前に、俺は急いで手を布巾で拭い、アイスを取りに行った。レジへ戻り、笑顔でお客様にアイスを手渡すと、お客様は嬉しそうに微笑む。



どうも


お客様は、アイスを両手に嬉しそうに外へ出た。その様子を見て、赤ずきんは珍しく不機嫌そうな顔をして俺を見る。



良かったの?





うん、もともとはお客様の商品だし、店の人間が自分の物にするのはいけないことだろ? それにさ……





何となく、今日はあの人と同じアイスを食べたくなかったんだ





……ふふ、そっか





ゴリゴリ君、何味が好きっスか?





俺、んめェ~棒派


~赤ずきん退勤時刻~



狼さんお疲れ様、お先失礼致します





お疲れ様、今日は随分と買って……





……コレ





いやぁ、お客様が返品してるの見たら、食べたくなっちゃって





……


やっぱり彼女は血も涙も無いなぁ、と思った。
