俺たちは、たくさんの人で賑わう商店街にいた。ついさっき買った芋の串揚げを食べながら、さっき違う人の部屋に入ってしまったことを話していたらこれだ…。



ぶっ……!
あっははははは!!!ばーっかでー!!!!wwwwww





いやいや笑い事じゃないでしょ!?
その女の人も災難だったわね…知らない人に裸見られるなんて…


俺たちは、たくさんの人で賑わう商店街にいた。ついさっき買った芋の串揚げを食べながら、さっき違う人の部屋に入ってしまったことを話していたらこれだ…。



間違いなんて誰にでもあるよ…それにほら、疲れてたんだし…





でも、よりによって着替え途中の女の人の部屋に入るとはな!傑作だわwwww





ほんとうにびっくりしたんだって…声もネプトにそっくりだしさ…!





ネプトって、確かに男の人にしては高い声してるわよね…





じつは女の子でしたーって言われても、あたし驚かないと思うわ





あー、それはウィルとかにも言われるな。
家事全般できるし、料理もできるし、女だったら嫁に欲しいってさ





まあ俺男だし?ざーんねん☆





ノロケか





ノロケね





ノロケだね





ちげえよ!!


その後も和気藹々としながら祭りを堪能し、俺たちは広場に戻ってきた…と、何やら人だかりができている。何かやってるのかな?



ん…?何かやってるのかな?





あー、多分階級試験の要項が発表されたんだろう…見てみるか?





見ましょ見ましょ!!アルトだって受けるんだから、なんの試験受けるのか決めとかなきゃ♪





試験って種類ごとにわかれてるもんなのか?





ああ、アルトには軽剣士の試験に挑んでもらおうと思ってる。獲物はナイフやダガーだな。あとは体術も出来るといいんだが…





アルトは…ちょっとキツイかもね…今日の感じ見てると…





うーん…ごめん…


人だかりがある程度収まるのを待って、俺たちは要項を見に行った…が、俺には全く読めなかったので、ネプトに読み上げてもらう形になったけど…。



軽剣士の項目は…っと、あったあった……
『武器は各自用意することとする。試験内容は、魔導製物との簡単な実践試験のみとする』……だってよ





良かったな、簡単な試験だけだ





まあ、軽剣士の試験だからね…そう言えば、エルクはどの試験を受けるの?





ああ…アイツはトリックスターだ。





トリックスター!?…王族ってホント大変なんだな…





んー…ホントは双剣士とかナイトとかでも良かったんだが…挑発しすぎたというか…なんというか…





挑発って…一体彼に何をしたのさ?





んー?俺より強くなれーって言った。ただそんだけ。





ああ、それでトリックスター……ネプト、前から思ってたんだけど、あんたって変なところで無茶ぶりするわよね…





トリックスターにならなくたって、俺より強くなる方法はいくらでもあんのにな…





…………





ま、目指したいなら目指せばいいと思うし!俺は止めねえよ





でも…今回のトリックスターの試験内容…





これ……ふざけてるとしか思えねえんだけど…





あー…やっぱ、そうよね。私の基準が甘いわけじゃないわよね?





ん…?そんなにヤバイのか?


俺が聞くと、4人はそれぞれ言いずらそうに目をそらした…え、何その反応…すごい気になる…!



……『リプシュケーにトドメをさせ』…だ。





リプシュケー…?なんだそれ…





リプシュケーは、モンスターの一種だ。それも、タダのモンスターじゃない…リプシュケーは『記憶獣』っていう、神獣に並ぶくらい強いモンスター…記憶獣種の中でも弱めで温厚なほうだけど、それでも十分な強さを誇るモンスターなんだ。





リプシュケーを利用した試験は他でも見たことあるけど…その大半はマジナイトの試験だった。けが人はもちろん毎回出てるし…下手したら死人も…





死人!?だ、大丈夫なのか…エルク…?





それだけ、魔戦士の試験は厳しいってことだ…試験会場には上級職の職員が常駐してるから、早々馬鹿な戦い方しなきゃ死人は出ないようになってる。





だから多分…大丈夫だ……多分……


ネプトが言うと、それ以来みんな黙ってしまった…エルク、本当に大丈夫なのか…?
それから2日間、俺とエルクはネプトとアルマに稽古をつけてもらった。エルクはその間に目を見張るほど成長し、明日に控えた階級試験も安心だとネプトからお墨付きを貰えるほどになった…でも、俺は……。



………





試験…明日か…俺、大丈夫なのかな…今日まで何回か実戦もしてもらったけど、1度も2人に届かなかった……





………はぁ……





アルト?





ふえ!?


ふと声が聞こえた方に目を向けると、隣の部屋のベランダに、シルフが立っていた。薄く湯気がたっているところを見るに、風呂上がりだろうか…



なーにセンチメンタルになってんだ?
明日の試験、そんなに心配?





……うん。
だって、俺…ナイフの構え方とか、全然ダメだし…2人に傷一つ付けられなかったし……





ま、そうだろうね。ネプトは知らないけど、アルマは強いし…アルトじゃどうにも出来ないよ。





はは…そうだよな…俺なんかじゃとても…





……俺も、アルマには結局一度も勝てなかったよ





えっ…!?嘘!?だって、アルマは普通に戦ったらシルフには叶わないって……





そんなの謙遜だよ。俺と戦う時は、アルマはいつも手ぇ抜いてたし…本気のアルマには、一度も勝てたことなんてない





そう、なんだ……


ふわりと優しい風が吹き、俺たちの髪を揺らしていった。眼下では祭り後の静かな空気が流れている…。



俺、さ…最初は、誰かの騎士になるなんて、思ってもなかったんだ。





へ?自分で志願したんじゃなかったのか?





いや…俺元は、その…あんまし言えないような仕事しててさ…アルマが、それじゃいけないって、俺をそこから救い出してくれたんだ…俺を騎士にするって名目で…





でも俺、剣技とかてんでダメでさ…独学で練習しまくって、魔法で何とかなったって…そんな感じで…でも足も出なかったんだ。騎士なんて夢のまた夢って感じで…





…………





でもさ、試験で何とかなっちゃったんだ。やらなきゃって思ったら、何とかなっちゃって……そんで、俺は「今の俺」になったんだ。





天族の王子には、イマガイに出て、人間の一生と同じだけの時間を過ごさなきゃならないっていう修行があって…それに、俺も騎士としてついて行ってさ、そこで友達とか出来て、今までじゃ考えられなかったような、幸せな時間を過ごしてさ……





本当に…あの時は幸せだったんだ……





シルフ……でも、アルマにはその時の記憶が…?





…………





別に、今はそんな事どうでもいいんだ。そう。
俺が言いたいのは…あれだ。





今がどんなに心配でも、当日は何とかなっちゃうってことだ!だから、そんなに重たく考えるな!!





シルフ……





うん、ありがとう…!
なんか、なんとかなる気がしてきた!!





そうそう、なんとかなるって!
そんなもんだよ


シルフのその言葉には、妙に説得力がある気がした…うん、大丈夫…大丈夫…!!なんか自信が出てきた!!



俺、明日頑張るよ…そうすれば、ちょっとは頼れるようになるだろ?





それはどうかなー?
アルマも俺も、素が結構強いから…





まあでも、何もできないよりかは、少しでも頼れる方がいいだろうな。これから、機会があれば頼らせてもらうよ、アルト。





……ああ!!





で、あの…さ、シルフ





うん?


改めてこんなこと言うのも、なんか小っ恥ずかしいや…でも、今を逃したら、一生伝えられない気がする…だから、今言わなきゃ…!



シルフさえ良ければ、だけど…





俺と、友達になってくれないか?


ーー五年前・盗賊団のアジト



親方さん、親方さん!!!いや、死なないで…親方さん!!





ああ、ネプテューン……すまないなぁ…俺も、老衰にはかなわねえってこったなぁ……





親方さん!やめてよ…不吉なこと、言わないでよぉ…!!私、あなたがいたから…あなたがいてくれて、世界を知ることが出来たの…!あの時、あなたが教えてくれたから…団のみんなにも…ウィルにも会えたの…!親方さん…行かないで…置いてかないで…!!





ネプテューン……ごめんな…本当に………ありがとうなぁ……





親方…さん…





………団を……俺の………家族を……頼む…………よ……………





……………………





親方………さ、ん……?





親方さん!!親方さん!!!いや……いやあああああああ!!!!!





………ネプテューン……?入るよ。





ちょっ……!?ネプテューン、その姿…!?





………違うよ、ウィル…私は………いや、「俺」は……





………『ネプト』。ネプト・シャーウッドだ。


