花燐はぼんやりと目を開けた。
花燐はぼんやりと目を開けた。



ここは……病院? そうだ私確か死に掛けて……


そう思うと同時に看護師が驚きの声を上げるのが聞こえた。



先生! 患者の意識が戻りました!!


それに医師も驚いた様子で応じる。



本当か!?





はい!


看護師が返事をすれば医師は花蓮に声を掛けて来た。



花燐ちゃん、私がわかるかい?


花燐はそれに頷いた。
すると医師は歓喜の声を上げた。



君の心臓は後少しで止まる所だったんだよ!きっと神様が授けてくれた奇跡が起きたんだろう





違う……神様じゃない。死神さんが……


そう声に出して言いたかったが、そんなことをすれば変な目で見られるのは明らかだから声には出せなかった。
数日後、通常病棟に移された花梨はお見舞いに来た施設の職員や子供達と談笑をしながら過ごしていた。
身体の調子は驚く程良くなっており、今であれば死神と名乗った彼と話した花畑のように動き回れるという気がしていた。
しかし面会時間は限られている為定刻を迎えればどうしても1人になってしまう。



どうしようかな……


そんなように思った時だった。別世界に居たあの時のように唐突に声がした。



少し、話しませんか?


見知ったその声に弾かれたように顔を上げると其処にはあの死神にそっくりな男性が立っていた。
唯花畑で見た時とは違いフードが無い為雰囲気が違うような気もする。



死神さん?


花梨が驚いて言うと彼は優しく微笑んだ。



ええ、良くわかりましたね。
そうです私が花畑であなたと盟約を結んだ死神です





どうして此処に……?





私と盟約を結んだ貴女には私の血が入っています。
その為私は基本的に気配も姿も消してはいるのですが、常にあなたの傍に居るんですよ。
盟約の相手の様子を監視する為と、悪い者に狙われた場合に護れるように





ごめん……わたしのせいで仕事を増やしちゃったんだね。
……でも本当にありがとう





これはあなたのせいでもありませんし、謝罪も礼も必要ありません。ただ私の気まぐれで好きなようにやっているだけですから





そうだとしてもとても嬉しい。だから……有難うだけは言わせて死神さん


言いながら花燐が微笑めば彼は驚いた様子になる。
しかし数秒沈黙した後、静かに言った。



……遼波(りょうは)、です





え?





私には遼波という名前があります。何時までも死神さんでは呼び難いでしょう?





遼波……そう呼んでも良いの?





……ええ


そんな遼波の様子が花燐は嬉しかったが、同時に気になっている事があった。



でも名前を教えたくない特別な理由があったんじゃないの?





確かに私達にとって名前は特別な意味を持ちます。
名前を明かすと言うことは相手に全てを委ねる証ですから。
ですから私も少し悩みました……


遼波は静かに答え、微笑む。



しかしあなたになら全てを委ねても良いでしょう





本当に……?


驚く花燐に遼波は微笑みながら静かに答えた。



あなたを信じてみたくなったんですよ


