カンタベリーでのコンサートは大聖堂の近くで行われていた。昔から続く大聖堂直属の聖歌隊のコンサートだった。総裁は休暇を取ってそれを鑑賞していた。警備が甘かった、そう結論付けられる事件が起きた。消音処理された銃声は誰の耳にも届かなかった。が、聖歌隊の少年が総裁に向けた銃口を僅かにずらした。結果、彼は暗殺者に殴り飛ばされたが、それが総裁の命を救ったことになった。血に染まる胸元、即座に失った意識。緊急事態に動いたドクターカー。トマスは暗殺者を冷静に射撃していた。
カンタベリーでのコンサートは大聖堂の近くで行われていた。昔から続く大聖堂直属の聖歌隊のコンサートだった。総裁は休暇を取ってそれを鑑賞していた。警備が甘かった、そう結論付けられる事件が起きた。消音処理された銃声は誰の耳にも届かなかった。が、聖歌隊の少年が総裁に向けた銃口を僅かにずらした。結果、彼は暗殺者に殴り飛ばされたが、それが総裁の命を救ったことになった。血に染まる胸元、即座に失った意識。緊急事態に動いたドクターカー。トマスは暗殺者を冷静に射撃していた。



「殿下…」





「脳は無事ですから」


リチャード・リースの言葉にはっとする。



「ドクターカーで治療受けてます。レイモンがいてよかった」





「三世陛下…」





「レイモンなら肺動脈損傷の重症でも助けられます」





「でも、あの怪我では」





「この世界では脳さえ無事なら命は助かります。危ないところでしたけれど、お忘れですか」





「そうだった…」





「ドクターカーに行ってください。この場はカンタベリー聖堂の関係者が何とか致します。予備役兵士もここにはいますから」





「わかりました、ところで…殿下をかばった従卒は」





「フランシーの、ですね、残念ですが亡くなりました」





「そうですか…」





「フランシーには僕から告げます」





「お願いします」


