刃と刃がぶつかり、独特の金属音が寺院内に鳴り響く。
刃と刃がぶつかり、独特の金属音が寺院内に鳴り響く。
地面を蹴って勢いをつけた俺の一撃を、レイスは短剣で受け止めた。



…なかなかやるわね





そりゃ、どうも!!


刀身に力を入れると、相手の短剣から伝わる力の反動を利用し、数歩後ろへ飛び退く。



俺のショートソードの一撃を短剣で受け止められるということは、力は俺以上にあるということか…


ふと、相手の短剣を見ると、俺のショートソードと接触していた部分が欠けていることに気付く。



おやおや、そのショートソードには、どうやら『魔法』が込められているみたいだね…どこでその剣を…いや、そんなことはどうでもいいさね





どういうことだ!





どうせ、その剣は数分後には私のモノになっているからだよ!


するとレイスは短剣を勢いよく寺院の壁めがけ投げ捨てた。
そして、背負っていた鞘から2本のショートソードを両手で抜き去ると同時に、地面を蹴り俺に突撃してきた。



グワッ…





…今のあんたに、そのショートソードは『宝の持ち腐れ』だよ!


レイスの片手の一撃を俺はショートソードで防いだものの、もう一方のもち手の一撃をわき腹に食らいその場に蹲ると同時に、口から生暖かいものが吐き出されるのを感じた。



いくら魔法に耐性があるとは言え、弱っている身体にこの魔法を弾くだけの力はあるまい…





スピリットドミネーション!!


俺の頭上に、再び紫色の雲のような物体が突然現れ、俺を包み込む。



くっ…そ…


俺はレイスの精神支配の魔法に犯され、その場に倒れ込んだ。



…ア……ド……アコー………アコード、アコード!しっかりして…


朦朧とする意識の中、俺は俺の名を呼ぶ馴染みとなった声に導かれ、目を開けた。



アルモ…ここは一体…





寺院で出くわしたあいつに、ここに運ばれてきたみたい…


周囲を見渡すと、そこは洞窟の牢の中のようだった。
鉄格子の外の廊下には、たいまつが轟々と燃えているのが見える。
そして、その下に俺のショートソードとアルモの剣が立てかけられていた。



そうか…俺たち、捕まってしまったんだな…





そうみたい…早く王都に行って、ガイーラさんと合流しないといけない、というのに…





ガイーラ、とは?





フォーレストの近衛隊長を務めている、私の友人なの





その人と合流する途中にフォーレスタにたまたま立ち寄って、俺たちの村を救ってくれた、という訳か…





そういうことになるわね





シッ…誰か来たわ…





…この2本の剣は、確かあの子が持っているはずのもの…





!!その声は、ガイーラなの!?





アルモ!アルモなのか!?


鉄格子の向こう側に、長身の騎士が現れる。



やっぱりアルモだったんだな…一体どうしたんだ!?





ガイーラ!あなただったのね…良かった…あなたこそ、どうしてこんなところに!?





王都近くの村の寺院が襲われている、という報告を受けて調査をしに来たんだが、酷い有様になっていてな…





それで、それを仕出かした犯人と思しき人物の後をつけてきたら、ここにやってきた、という訳だ…アルモは、まさか…





その人物と戦って、見事に負けたわ…私は、精神支配の魔法をかけられて、すぐに戦線離脱しちゃったんだけど…





アコード!あなたは、もしかして…
って、まだ紹介していなかったわね…
アコード、ここにいるのが、さっき話をしていたフォーレスト国の近衛隊長ガイーラさん!





アコード=フォーレスタです





フォーレスタって…フォーレスタ村の村長の一族か?





はい。今は私の母が村長を務めていますが…





そうか…それでアルモ、何か言い掛けていたようだけど…





そうだったわ!アコード。私はあいつの魔法にやられてしまったけど、貴方はどうだったの?





俺は、最初の魔法を弾き返せたみたいで、そいつと…レイスと戦った





レイス…あいつはレイスというのね…





レイス…


レイスという名を聞き、首を傾げるガイーラ。



ああ。でも、俺の攻撃は通じなかった。レイスの攻撃をもろに食らって、2回目の魔法で俺は気を失ったんだ…





そうだったの…





2人とも、立てるか!?とりあえず、ここから急いで出たほうがいい





そうね。ガイーラさん、この鉄格子、どうにかできる!?





ちょっと待ってろ。2人とも、そこから離れて


牢の奥へ下がる俺とアルモ。
次の瞬間、ガイーラは剣を鞘から抜き去ると、目のも留まらぬ速さで錠前を攻撃し、破壊した。
鈍い音と共に、鉄格子の扉が開く。



さぁ、こっちだ





ありがとう、ガイーラさん





ありがとう


牢から脱出した俺とアルモは、たいまつの前に立て掛けられたそれぞれの武器を手に取ると、ガイーラの後に続いた。
しばらくすると、出口らしき光が見えてきた。



もう少しでここから脱出できるぞ!





そうみたいね。急ぎましょう!





ああ


そして、外に出た瞬間…



ご苦労さん!お三方!!


俺たちは、聞き覚えのある声に立ち止まり、振り返った。
第4話 へ続く
