朝目覚めた私は、パジャマから制服に着替えてリビングへと顔を出した。

　私よりも一時間以上早起きしたであろうお母さんが、ご飯の用意をしながらそう言ってきた

　今日の朝ご飯は、栗ご飯に卵焼きとお味噌汁に焼き魚。特に栗ご飯はお母さんの得意料理だ。

　でもこれは作り置き。全て昨日の夜ごはんのメニューだ。多分時間がない朝の時間節約の為に、昨夜のうちに余分に作っていたんだろう。

　返事をして早々に、私は鼻をくすぐる美味しそうなご飯に勢いよくがっついた。

　カバンを肩に背負い、鏡の前で髪形を整えていた時、玄関のチャイムが私の耳に届いた。
　おそらく裕美が迎えに来たのだろう。

　やっぱりそうだった。髪を完全に整えることは諦めて青いリボンでくくると、私は足早に玄関に行く。

そのまま振り返らずに、私は裕美と学校への道を歩き出した。

　こんな取り留めもない会話をしながら、私たちは片道十分くらいの道を歩いていた。

　と。突然裕美がこんなことを言ってきたのだ。

　裕美はいつもこう言った、少し不思議で不気味な都市伝説をどこからか集めては、楽し気に私に教えて来るのだ。

　ぞわっと。その時私の背中に寒気が走った。そうだ。

　悪い予感のような、虫の知らせの様なものが、頭の中にやって来た。

　少し怖がって損をしてしまった。いや、怖がってなんかいないけど。

　話しを聞き入ってるうちに学校が見えてきたので、私たちは教室に駆けて行った。

　その日の授業を終えて、放課後日直の仕事を終えた私と裕美は、少し寄り道をしたせいで帰りが遅くなってしまった。

　夕方の七時。いつもご飯を食べる時間だ。
　私はお母さんの言葉に、手を洗ってリビングへ急いだ。

　用意されていたのは栗ご飯。それに卵焼きとお味噌汁と焼き魚……これって

　私の疑問をよそに、お母さんとお父さんはもうご飯を食べ始めた。

　あまり気にも留めず、私はすぐに美味しいご飯に没頭した。

　その日はお風呂に入って、ちょっとベットでダラダラして、夕食時に感じた小さな疑問などすぐに忘れて眠りに落ちた。

　その疑問ががはっきりとした違和感に変わったのは、次の日の朝のことだ。

　今日は日直でもないので、いつも通りの時間、つまり昨日より三十分遅く起きて、リビングにいるお母さんに声をかけた。

　今日はお母さんも起きるのが少し遅かったのだろう。そう思った私は、テーブルに置かれた朝ご飯に目をやった。

　それは、昨日と全く同じ朝ご飯だった。

　その時もさして気にも留めなかった私の耳に、

　そんな音が届いた。

　呟いた私に、お母さんが言う。

　今日は早めに行く約束などしていないはずなのに。茫然とする私の目に偶然入った時計の針は、昨日の約束の時間と同じ時刻を示していた。