Episode　5

島は立一に、彼の記憶が抜けている間の経緯を一頻り説明した。


この部屋の状況、ノルやC-HU達の素性。


そして、立一の身に起こった事。


ソルの一連の出来事については、島なりに気を効かせて割愛してくれたようだ。

立一は眉を寄せ、こめかみを押さえる。

立一は、再び黙り込むと気鬱そうに溜息を吐き、苦々しく言い捨てる。

声の方へ目を向けると、ノルの吸い込まれるような瞳と視線がぶつかった。

その色彩を見つめていると、何故か気持ちが落ち着かず、わざとらしく目を反らす。

一体何を。


立一がそう言いかける間も無く、部屋の風景がぐるりと反転する。

初めて、この状態の部屋を見た島は、物珍しそうに辺りを見回す。


立一はと言うと

一瞬驚いた表情を見せるも、そのまま押し黙ってしまう。


そうして、暫くすると搾り出すような声を出した。

船内を興味深そうに観察していた島へ、立一は冷たい視線を投げつける。


当の本人は「残念」と悪びれる事も無く、意にも介していないようだが。

二人の様子を見ていたC-HUは、手元にコンソールを開くと前足で器用に、それを操作する。

部屋は再び反転し、元の立一の部屋へと戻っていた。

傷ついたとばかりに、近くにいたノルの肩を引き寄せる島。

ノルが、抵抗しないのを良い事に、肩口に顔を埋め頬ずりする。

その様子に、半ば呆れ溜息をつく立一。


真面目に対応するのも、だんだん馬鹿らしくなってきたというのが、本音でもある。

正直この友人、頼りにはなるが信用は出来ない。
殊の外、色恋が関わると特に。

島の立ち回りが功を奏し、なんとか立一の説得には成功した。


傍らで目線を上げたノルは、島と目が合ったのだが、彼は、こっそりウインクを返してくる。


島の思惑通り……といった所だったのだろうか。


ただ一人先程から、わなわなと肩を震わせている人物への対処を除いては。

ソルは、ノルにべったりくっついている島を指さしながら憤慨する。

島は、今にも噴き出しそうになりながら、その様子を面白がっている。どうやら分かっていてやっているようだ。


ソルが、忌々しげに睨みつけてくるのだが、ノルの腰に手を回し、さらに煽る始末。

事態を静観している立一に気づき、C-HUが慌てて二人を止めに入る。


せっかく話が纏まりそうなところ、要らぬ事で立一の気が変わってしまっては、今までの苦労が水の泡だ。

しかし、予想に反して、立一は島の方を咎めた。

ソルの必死な訴えに、ノルは首を傾げる…そんなやり取りの中。

C-HUは、独り言つのだった。