


さて、始めますか!


一人呟くと、魔獣転移のための魔法陣を描いた。
勇者様も、聖騎士さんも……もちろん、他のメンバーも強くなろうとしている。
私ももっと強くならなければ……。
そのためには、少しでも強い魔獣を召喚出来るようにならないと……。
「マンティコア」 魔獣レベル58



雑魚は出て来なくて良いですよ





次っ!


「フェンリル」 魔獣レベル65



また雑魚ですね……





そろそろ、使える魔獣が出てきて欲しいですね


「ベルゼブブ」 魔獣レベル82



もう一声です!


「ニャルラトホテプ」 魔獣レベル99



ま、これくらいで手を打ちましょう!





はぁぁぁぁ……





ブリザード・アロー!!!





も一つおまけに……





アイス・ストリーム!!!





あっ……





〇しちゃいましたね……


脆すぎる……。
魔獣を召喚獣として使役するためには、魔獣に力を誇示し、屈服させなければならない。
しかし、私の魔法力に耐えることが出来たのは防御力が最高レベルのゴーレムだけ。
しかも、あの少年に取られてしまったから、そのゴーレムすら召喚できない……。



こんな時、レイブルがいてくれたら、何て言ってくれたんだろ……





はっ……!


いけない、いけない。
未だに直らないクセに気付く。



な、何ですか、この夥しい量の血は!?





? 勇者様……?


勇者様がひょっこりと姿を現した。
良かった……魔獣との交戦中の時でなくて……。
最悪、知らないうちに巻き添いにしてしまうところだ。



修業はどうされたんですか?





それがですね、師匠殿が聖騎士殿の様子を見に行くと言ったきり、戻って来られなくて……





あまりに遅いので様子を見に行きましたら……何やらお二人で斬り合っておられましてね……





物凄い気迫で、声が掛けられませんでした!





そうですか……


うわー、まだやってるんだ……。



それよりも、この血の海は一体……!?





えっと、魔獣の血です





魔獣? モンスターとは違うのですか?





ええ、違いますよ


似ているようで全く違う両者。
――「モンスター」と「魔獣」――
前者は「魔王が創りだした生物」であり、後者は「魔の森で産まれ出る獣」である。
今はこの場所で魔獣を転移させ、召喚獣として使役することを試みていた。
しかし、見事に失敗に終わったことを説明する。



だから、いくら倒しても宝石にはならないんですね!?





その通りです!





なるほど……モンスターと魔獣の違いは分かりました





他にご質問はありませんか?





勘違いでしたら申し訳ないのですが……





? 何でしょう?





何か悩んでおられた様子……





もし、力になれることがありましたら、いつでもご相談くだされ!





は、はい……


どうやら、考えていたより前から、勇者様に見られていたようだった。
迷った……が、この機会にレイブルのことを話しておこうと思った。
……きっと、他の仲間は私に気を遣って、勇者様には話をしないだろうから。



では、お言葉に甘えさせていただきますね!


-回想-



え? 今、なんて……?





だからね





魔王を倒したら……結婚しよう!





……って、ダメ……かな?





ううん……嬉しい!





きっと、魔王を倒して……





私を世界で一番、幸せにしてね☆





うん、約束するよ!





ふっ……お前たちの力はこの程度か……





全く話にならん……





出直して来るが良いわ!





ごめん……僕が非力なばっかりに……





何言ってるの! レイブルは頑張ってたよ!





約束を守れなくて……ごめん





え……





今の僕じゃ、君を好きでいる資格なんて……ない……





え? え?





さようなら……





ちょっと……待って……!





どうして……?


-回想終了-



それから彼には会っていません……





そうでしたか……





あ、でも、昔の話ですから気にしないでくださいね☆





……





勇者様……





一つ、質問があるのですが……





レイブルさんは「今の僕じゃ」って、おっしゃったんですよね?





はい





あの時の言葉は一言一句、忘れてはいませんから……





だったら大丈夫ですよ!





きっと強くなって、迎えに来てくださります!





……





そう……だと、良いんですけど……





ええ! 信じて待ちましょう!





……はい


勇者様が言って下さった言葉は……嬉しかった。
根拠はなくても、心の底から信じて言って下さっている。
……でも、あれから3年の月日が経っている。
そもそも、レイブルは私のことを覚えているのだろうか……?
もしかしたら、私より若くて綺麗な女の子と出会って、幸せな家庭を築いているかもしれない……。
期待した分だけ、裏切られた時は……辛い。
……だったら、最初から期待などしなければいい。
その優しい気持ちだけ、有難く受け取っておこう。



……っ!?


魔法陣が発動した……!?
そう言えば……魔法陣の転移解除をし忘れていた。
一度、発動すると確実に魔獣は転移して来る……。
広範囲攻撃をしてこない魔獣であれば良いのだけれど……。
念のため、勇者様には私の後ろで様子を見るように言った。



あ、れ……?





どうしたのですかな?





どうしましょう……魔法力があとわずかです





え……それって……いわゆる……?





「ぴんち」ってヤツですね☆


そして、新たな魔獣が姿を現す――。
-次回を待てっ!-
