


……


拙者より動きの速い相手……。
その相手を上回る速さを手に入れること……。



……


しかし、気付かぬうちに気絶させられるほどのスピード……。
そんな速さの相手を上回ることなど……。
果たして……出来るのか……?



……


眼で追うことすら……出来なかった相手……
まずは眼で捉えられなければ……。
だが……しかし……。



……方法が全く思い浮かばないでござるな


滝に打たれながら、独りごちる。
……師匠は拙者の力をもってすれば対応できるとおっしゃってたが、そうは思えなかった。
ちなみに勇者殿は、師匠と剣の稽古中である。



やっとるの……





師匠!


弟子を……いや、今は元・弟子ではあるが、見に来てくださったのか……!
その優しさに思わず笑みがこぼれた。
……しかし、拙者の姿を認めて、眉根を寄せる。



昔、あれほど教えたことを……





忘れてしまったようじゃの……





? 何でござったか?





滝行をするなら……





「白スク」を着ろ、と……!!!


※注「白スク」=白いスクール水着のこと。
白は透けやすい色であるため、一般的なスク水(=紺色のスクール水着)とは違った漢(=おとこ)の萌えとロマンが籠められている。
なお、この異世界において、女体の大半を白い布地が覆う水着を指しているのではあるが、あえて「白スク」と現代日本語に意訳することで、師匠のほとばしる熱いパトスを表現していることを理解されたい。
さらに言えば「白スク+金髪美少女=∞」という黄金の方程式についても決して失念してはならない……!!
それは「約束された遠き桃源郷」とも言うべき……。



この物語の作者は……もしかして、師匠でござるか?


※メタ発言禁止です。
(By作者)



……?





では……「白スク」を着るなら……





ヒントをくれてやる……と言えば、お前はどうする……?





なっ……!?





「世界平和」と「羞恥心」……





お前にとって……どちらが大事かということだ……





くっ……それは……!?


世界平和のためなら、この程度の辱めなど、耐えるべきということなのか……?



つまりだ……お前は「世界平和」より……





自身が可愛いのだろう……?





この痴れ者がっ!





ぬぬぬ……


拙者は保身を図っているだけなのか……?



……黙って聞いていれば





痴れ者はあなたの方ですよ?





このエロ頑固親父!





うっさいわ! 黙れぃ! ど痴女!





召喚士殿……





邪魔が入ったのぅ……





昔のお前は従順で……ぷにぷにで……金髪ロリータで……


そもそも、「世界平和」と「羞恥心」を秤にかけること自体、おかしな話だ。
さらに師匠の今の発言により、忌むべき記憶が頭をもたげた。



そうそう、そうでござった!





そうやって、師匠は拙者を辱めてばかりでござったな……


―回想―
-回想終了-



幼少のみぎり……無知な拙者に対して、セクハラ三昧・し放題……





おぞまし過ぎて……「ストリエ」では表現出来ないでござるっ……!


※メタ発言禁止ですってば。
(By作者)



まあまあ……怒りを鎮めてくださいな





代わりに……





「白スク」は私が着ますからっ!!!





ははっ! 全く意味が分からないでござるよ?





ああ……とっても恥ずかしい☆


言っている言葉とは裏腹に、この召喚士殿、実にノリノリである。



お前なぞに神聖なる「白スク」を着させてなるものかっ!


……そして、何故に召喚士殿に対してだけ師匠は流暢な喋りになるのだろうか?



聞け……大サービスだ……





相手を捉えられないと言うなら……





「先の先」を取れないと言うなら……





「後の先」を取るが良い……





「後の先」……で、ござるか?





加えて……





必ずしも「剣技」だけで対抗する必要はない……





お前には……「魔法力」も……「精霊の加護」もあるのだからな……





全てがお前であり……お前が全てだ……





……っ!


拙者は「いかに相手より早く動くか」ばかりに囚われていた。
そして「いかに剣技で切り伏せるか」ばかりを考えていた。
「魔法力」と「精霊の加護」をもってして「後の先を制する」新しい技を編み出すことが出来れば、きっと何とかなる……!



師匠! 召喚士殿! かたじけないでござる!





ふん……ようやく光明を得たようじゃの……





お力になれて良かったです!





師匠! 早速、試したいことがあるでござる!





手合わせ願いたいっ!





ふっ……その意気や良し……





手加減は……せんぞっ……!





では、頑張ってくださいね





はぁぁぁぁ!!!


力がみなぎるのを感じる。
師匠との剣戟を重ねるたび、士気の高揚は留まることを知らなかった――。
-次回を待てっ!-
