再び釣り糸を、川へ投げ入れる。



先輩。





どうした?





お友達、見つかったッスか?





いや。居ないな。





そうッスか。
僕の方もさっぱりッス。





まぁ、焦ったって仕方ねーだろ。
元々再会なんて諦めてたんだ。会えればラッキーぐらいに考えようぜ。





……そうッスね。





あっ、鯛釣れたッス。





お、いいじゃねーか。





川で鯛が釣れるというのも変な話ッスけどね。





そりゃそうなんだが、ゲームでそんなこと言ってもな。





でも、ある程度のリアリティはあった方がいいと思わないッスか? 鯛は現実にあるものなんスから。





んー、そうか?





こいつはどうなんだ?





こいつはファンタジーの生き物なんで、何処にいてもセーフッス。





そうかい。





お、俺も鯛出た。





いいッスね。
早速料理しましょう。





これとこれを合わせて……。





出来上がりッス。





だからトマト混ぜるのやめろって。





おかしいッス……こんなハズじゃ……。





トマト混ぜて失敗したらこうなるってわかってんだろ。





過去の自分を乗り越えたいッス。





……言葉の意味はよくわからんがまぁ、頑張れ。


再び釣り糸を、川へ投げ入れる。



そういえば、お前の友達ってどんなヤツなんだ?





僕と同い年ぐらいの女の子ッス。
このゲームを始めてすぐくらいからの付き合いで、一番仲が良かったッス。





ただ色々あって、その子がゲームから離れてた間にサービス終了。それっきりッス。





俺とは逆のパターンだな。





サーバーが止まる瞬間まで待ってたんスけど、その子は結局……。





でも、あの子もこのゲームはお気に入りだったッスから。
きっとまた。何処かで会えるって信じてるッス。





そうか。
会えるといいな。





先輩のお友達はどうなんスか?





概ね同じだな。
ゲームを始めた直後にパーティを組んだヤツがいて、それからは何をするにも一緒だったよ。





最後は……まぁ、以前話した通りだな。





そのお友達も僕みたいに、最後まで待ってたんスかねぇ……。





あいつなら、待っててくれたかもしれないな。





もうあれからどれぐらいだ? 4, 5年は経ったよな。大学に行っていれば、そろそろ社会に出ているはずだ。しっかりやってればいいんだがな。





いつか、その後の話を聞けたらいいッスね。





そうだな。





あ、そうだ。
アイツといえば……、お前、これ要るか?


そう言って取り出したのは、透き通るような青色の大剣。かつてヤクルトに贈ったものと同じ種類だ。



お、それ。
もう作れるようになったんスか?
すごいッス。





生産ばっかりやってたからな。





貰っていいんスか?





これは俺用だからダメだが、欲しいなら同じの作ってやるよ。





そうッスね……。
折角なんスけど、遠慮するッス。
今回は片手剣をメインにしようと思ってるッス。





要らないならそれでいいんだが。
片手剣にするのは何か理由があるのか?





ほら、今基本的にペアで行動してるじゃないッスか? やっぱり戦士だけだと回復と火力が問題なんで、上級職は聖騎士を選択しようと思ってるッス。
聖騎士は補助が使える代わりに、大剣使えないッスから。





なるほどな。
まぁ、その問題は誰かさんが職被りさせなきゃ起き得なかったんだけどな。





過去のことは気にしないッス。
なんだかんだで上手くやっていけてるからいいじゃないッスか。





影の群れとの戦いはかなりキツかったけどな。





僕にかかれば楽勝ッスよ。





楽勝とはほど遠いが……あれを乗り切れたのは、流石といったところだな。





そういえば、次の街に向かうためのクエストがあっただろ? でっかい植物を倒す内容のやつなんだが。





ああ、あるッスね。





あれは2人じゃ厳しいんじゃないか? 最低3人は必要な感じだったが。





あー、確かに。
あれは3人居ないとしんどいッスね。





実は1人でも倒せないことは無いんスけど、3人居たほうが楽なことは事実ッス。





それじゃ、その時はもう1人入れるか。





そうッスね。
レベル的にもそろそろ頃合なんで、今のうちから人探しておくッスか。





ちょうど来週からイベントが始まるッス。
新しい仲間を探すにはうってつけッスね。





イベント? 何かあるのか。





公式見て無いんスか?
街の防衛イベントッス。
モンスターが攻めてくるんスよ。


