【町の中央広場】
ゲインとバイヤー
二人は全裸で逆さに磔にされており、死体の陰茎には無数の釘が刺されていた。そして体中の至るところに拷問を受けたような生々しい傷痕がいくつもあった。酷く惨い殺され方だった。
【町の中央広場】
ゲインとバイヤー
二人は全裸で逆さに磔にされており、死体の陰茎には無数の釘が刺されていた。そして体中の至るところに拷問を受けたような生々しい傷痕がいくつもあった。酷く惨い殺され方だった。



あの人達同性愛者ですって





嫌だわこんな片田舎で同性愛者が隠れ住んでいたなんて


ローマ帝国では同性愛は禁忌とされ、同性愛者は異端とされ迫害の対象にあった。そして禁忌を破った者は粛正される運命にあった。
帝国軍の兵士が広場に集まっていた住民達に告げた。



我々はローマ帝国軍がこのレスボス島に来たのは諸君らも知っての通りつい先日になる。今回我々軍の任務は異端討伐である。


住民達はざわめいた。この平和な島で異端者が出るなんて思わなかったからだ。



静粛に! 昨日、我々軍は異端者を二名発見しこれを粛正した! この島に隠れている異端者がまだいるはずだというのが帝国の考えだ。よって今より島にいる全員に一人づつ尋問を始めることになった! これより異端討伐をはじめる!


ローマ帝国軍が異端討伐を始めようとしていた。不安がる住民の中にルシファーがいた。



ケッケッケ、ドウヤラコノコトノヨウダッタナ。


ルシファーの第六感である人の負の感情を察する予知能力に似た力は、この軍による異端討伐を示していた。



やることは決まった。


ルシファーはダーインスレイブを携えて帝国軍が駐留しているという鉱山に向かった。
【レスボス島 鉱山跡地】



ここか・・・


ルシファーは鉱山に来ていた。大分使われてなかったのだろう。寂れた鉱山だった。
鉱山の入口付近にはローマ帝国軍の野営地が設置されていた。だが・・・



妙ですね。





ベルゼブブもそう思うか





はい、ここには戦略的アドバンテージがありません。帝国は何故ここに布陣したのか気になりますね。


ベルゼブブの言う通り、ここに陣を構えるのは不自然だ。何故軍はこんなとこを駐留している? ここ以外に他にいくらでも布陣する場所なんてあるはずだ。ここじゃなきゃいけない理由が帝国にあるのか。



金でも掘りにきたんじゃねぇか





帝国がわざわざそんなことしにここに来たわけじゃないでしょう。ちゃんと考えてから物を言いなさいベルフェゴール。





んなことわかってんよ。ジョークだよジョーク。んなこともわかんねぇのかよ。





少しは真面目にやれ。





あー嫌だね。ほんと冗談通じねえ堅物だな。


ルシファーの中で火花を散らす二人。
本当に仲が悪い。しかしベルフェゴールの意見も的を得ていた。



ベルフェゴールの言ったこともあながち間違いではあるまい。帝国は何かを探すためにこの廃鉱山に駐留しているのなら辻褄があう。





ほら見ろ!ルシファーは話がわかんな。どっかの堅物は頭が硬すぎて駄目だ。





なんだと貴様!!!





ああん?やるか!!!





やめろお前ら!!!


こんなとこでも喧嘩を始めようとする二人にルシファーは怒鳴った。



いい加減にしろ!そんなに喧嘩したいのなら後でやれ。





も、申し訳ありません主よ





ケッ!





フンッ!





ハァ・・・


こいつらの仲の悪さはどうにかならんものか、先が思いやられる。



我が主よ、どうかお気をつけください。中に何があるかわかりません。





わかっている。お前たちは俺の中で待機だ。


気になる点もあるが、ひとまずルシファーは帝国の拠点に近づき様子を見る。



・・・・・・・・





・・・・・・・・





見張りは二人か





コロセ! コロセ!


ダーインスレイブが血を欲しているようだが、それを無視して一気に二人の見張りに接近した。



何者だ!? ぐわっ!





き、きさ…ぐはぁ!


手慣れたように二人の見張りの後ろ首に手刀を当てて一撃で気絶させる。それを見ていたダーインスレイブは不満そうにしていた。



オイ、前カラ思ッテタンダガ、何デ殺スコトヲ躊躇ウ?





命を取るまでもない。屑相手ならば別だが





チッ、ホントメンドクサイ奴ガ俺様ノマスター二ナッチマッタ。オ前ト契約ナンカスルンジャナカッタゼ。





なんだ今更契約を破棄するのか?





イヤ、最後ニハ俺様二特上ノ血ヲ飲マセテクレルナラ人間ノ血ハ我慢シテヤルサ。タダノ忠告サ、ソノ甘サガ、イツカオ前ヲ殺スッテナ!





忠告どうも


無益な殺生は極力避けるルシファーにダーインスレイブなりの皮肉だ。それを気にすることもなくルシファーは鉱山の奥に進んだ。



人間を殺すことに躊躇いはない。だが・・・


かつて愛した一人の人間と遠い昔に交わした約束をルシファーは思い返していた。



彼女と約束したからな・・・


ルシファーは先を急いだ。
【レスボス島 鉱山内】
鉱山の中はすでに鉱石を取りつくしていたのだろう。発掘のための機材は錆び付いていてもう何十年も使われていない様子だった。



ゲインの奴の言った通りだな。この鉱山は廃棄されているようだ。


辺りを調べていくうちに、ルシファーはある形跡を発見する。どうやら線路の跡のようだ。土を見る限りつい最近できたような跡で比較的真新しい。おそらくトロッコでも使って奥から何かを運び出したようだった。



何かを運んだ跡か。





そうみたいね。何を運んだのかしらね?


いつの間にかルシファー横にイシスがいた。



お前・・・





何?





何故ここにいる?





ついてきた





なんだと?





あんたがコソコソして不審だからちょっとついてきただけ。


迂闊だった。まさかイシスに尾行されていたことに気づかなかったとは。



遊びにきたわけじゃないんだぞ。





わかってるわよ。ローマ帝国を潰しに来たんでしょ?





・・・・・・





私だってバイヤーさんとゲインさんの仇とりたいもん。抜け駆けはさせないから


イシスの目には怒りが溢れていた。当然である。この島でできた友達があんな無惨な殺され方をしたんだ。その気持ちはわかる。



やれやれ


どうせ何を言っても、この女は聞く耳もたないだろう。ルシファーは溜息をついて諦める・



ここまで来てしまったんなら仕方ない。俺の邪魔になることだけはするなよ。





はいはい、むしろ頼りになるんじゃない。


イシスは自慢のチェーンナイフを見せながら言った。どうやらやる気満々のようだ。



それと俺の狙いはここの司令官だ。頭をとれば軍もこの島から引き上げる。





わかった。


帝国全員を相手にでもするつもりだったのか、イシスはあまり納得はしてなかった。全員を相手にしてたらキリがない。あくまで撤退させるのが目的だ。
この島にはレイズやビアンもいる。帝国が次の異端討伐の対象に彼女らを狙うのはわかっている。彼女らの安全のために軍をこのレスボス島から引き上げさせるのがベストな選択だ。



だけど、妙じゃない?


イシスは疑問に感じていた。それはルシファーも同じだった。



ああ、兵がいなさすぎる。


軍の野営地にしては兵士が少なすぎた。先程気絶させた二名以外いないような気がした。



どうやら本隊のほうは留守のようだな。


そう、本隊はもぬけの殻だった。



どこかに出てるのかしら?





さぁな・・・ぐっ!?





レイ・・・ズ・・・





きゃあああああああああ!!!





たす・・・けて・・・





きゃあああああああああ!!!





うっ・・・


突如ルシファーの頭の中にフラッシュバックのような稲妻が走った。それは無惨に殺されていくレイズとビアンが映った。



この感覚は・・・





ど、どうしたのいきなり!?


イシスが心配そうに聞いてくる。だがルシファーには聞こえていない。
ルシファーの第六感が告げていた。これからまた悲劇が起こることを予知した。ルシファーは急いで踵を返して鉱山の入口のほうに走った。



ちょっ! いきなりなんなの!?





急いでレイズ達のとこに戻るぞ!


ルシファーとイシスはレイズ達の元に戻る。
