異世界に来て一日目はアドベンチャーエリアを回った。
親父が終始うるさかったこの煩わしさも、今はすっかり大人しくなり、ようやく落ち着いて飯が食える。
異世界に来て一日目はアドベンチャーエリアを回った。
親父が終始うるさかったこの煩わしさも、今はすっかり大人しくなり、ようやく落ち着いて飯が食える。



勇者の剣……勇者の剣……





うん、ほっとこう


今はホテルに戻ってディナーバイキングを食べていた。



しかしこの料理……





見事なまでに普通のやつがねぇ……


マンドゴラのサラダに、
クラーケンの墨パスタ、
ドラゴンの肉のステーキ、
スライムゼリーetc.etc……



ゲテモノばっかじゃねぇか





あらそう? このゼリー美味しいわよ





よく食えんなアレを見て……





あのでかいナメクジでしょ?
エスカルゴみたいなもんじゃない


剣を抜いた後に見たスライムエリアにいたスライムが結構気持ち悪いものだった。
ナメクジみたいな巨大なスライムいたんだが、



今からスライムの補食するところが公開されます♪スライムの補食を楽しんで見てくださいね♪





メェェェェェェェェェ





メェェェェェェェェェ!!!


俺らはスライムの補食ショーを間近で見せられたんだが、それが生きたヤギをスライムが丸のみにして体内で溶かすというものだった。
生きたヤギがメェーメェーメェーメェー!
と悲鳴をあげていて、溶けかたがグロいのなんの。
あんなもん見た後にスライムなんか食えるかよ。



相変わらずうちのお袋の神経は図太いな





伝説の剣……伝説の剣……





無視無視





御食事をお楽しみ中のお客様へ、これよりディナーショーと致しましてマジックショーが始まります♪
どうか心行くまでご堪能していってください♪





マジックショー!?
よしよしよしよし!きたー!





げっ、もう立ち直りやがった!?


すると舞台にはマジックをやるお姉さんが立ち、
お客にむけて一礼をする。



地球の皆様、異世界ジェネシックワールドへようこそいらっしゃいました!





ひゅーひゅー姉ちゃん色っぺー!





俺はもう何も言わん。読者が代わりに突っこんでくれ。





本日このマジックショーを私が務めさせて頂きます!


客席から拍手がされる。



では、あちらに設置している蝋燭に今から炎の魔法を使って火を灯しますので、皆様!成功したら拍手をお願いします!


するとマジックショーのお姉さんが持っていた杖を振りかざして何かを唱え出した。



我、汝を操るもの……我、
汝の手を手繰るもの、
素は炎、素は大火の化身イフリート、
火の精霊よ我に汝の力を与えたまえ……
ジュリアン=ピラ=マックールの名において
命じる
……具現化せよ、全てを包むは火の咆哮!





ファイヤーーーーー!!!


お姉さんが叫ぶと杖の先から猛々しい炎が灯り、
台座に設置された蝋燭目掛けて火の玉が飛んだ。
そして蝋燭に火がついた。



おおーーー!!!


会場は拍手喝采だった。



あんま大した手品じゃないな





手品じゃないって!あれ魔法だから!





んなわけねぇだろ、あの杖は火炎放射機かなんかだろ。





魔法だっての!





はいはいわかったからそんなにムキになるなよ。魔法ね、はい魔法。うんあれは魔法だ。





ワーースゲーー





姉ちゃん次はメテオやってメテオ!
隕石落として!





そんなもんやったら、ここが災害規模で滅茶苦茶になるだろうが!!!





なーんだ。やっぱり魔法だって信じてるんじゃん♪





ぐっ……この糞親父がぁ


むかつくことに親父にまんまと一杯食わされた。
俺は少しむかっ腹が立ち席を立つ。



あら、どこにいくの?





少し夜風にあたってくる。





そんな俺に担がされたからって怒んなよ♪





うるせー


俺は捨て台詞を吐いてバイキング会場から出た。



はぁーもう帰りてぇ……


俺は溜め息をつきながら空を見上げた。
夜空に浮かぶ無数の星が煌めいていて綺麗だった。



月がない夜空を見るとはね。ほんとにここは地球じゃないんだな。


星空には本来あるはずの月がなかった。
それは自分が間違いなく異世界であるこのジェネシックワールドにいるんだと自覚させられた。



うぅ、さみっ!中に戻るか……ん?


なんとなく目に写った草むらのほうで人の気配がした。



うん、やっぱり誰かが草むらにいる。


俺は草むらの中を覗きこんだ。



誰かいるのか?





ひゃう!?





あっ


そこには日中パークであったあの女の子がいた。



ごめんなさいです!ごめんなさいです!道に迷ってここに来てしまって、決してお腹が空いたからドロボーしようとして忍び込んだわけじゃないんですぅ!





昼間のレイヤーの人





ふぇ?





俺だよ俺、伝説の剣のエリアであった





あ! 貴方は昼間の剣をくれた親切な人!





なにしてんの?





それは……





ぐーーー





あっ……





ハハハ、お腹減ってんのか?


こくりと頷くコスプレした女の子。



ちょっと待ってろ。なんか食いもん持ってくるから





あっ、でも……





いいからここで待ってろ。すぐ戻るから





あっ、はい……


俺は彼女に何か食べさせるものを探しにバイキング会場に戻った。
