太い鉄格子の中にいるドラゴンが咆哮をあげている。



グオオオオオオオオオオ!!!


太い鉄格子の中にいるドラゴンが咆哮をあげている。



ぐおおおおおおおおおお!!!


鉄格子の外から親父が咆哮をあげている。



ドラゴーーーーーーン!!!





やめろ親父!恥ずかしいから!





あらあらお父さんったら♪すっごい嬉しそうね♪


ゾンビの次に来たのはドラゴンのいる施設だった。



ドラゴンはな、ファンタジーを愛する者にとっては夢なんだよ!ロマンなんだよ!





わかったから叫ぶのをやめろ!周りの人から笑われてるじゃねーか!





すでに大興奮されているお客様もいらっしゃいますが、ここがドラゴンの見学エリアになります。


お姉さんは慣れているかのようにガイドを始めた。



全長20メートル、重さ600キロになるこのドラゴンは、皆さんもご存知のとおり、伝説上やファンタジーには欠かせない生き物といえます。





ドラゴン!よっ!ドラゴン!





やめろ親父、ガイドさんの仕事の邪魔すんな!





あ、あはは……





ドラゴンは大変狂暴な肉食獣です。ですのでこうして鉄格子に隔離した状態になっています。





まぁ怖いわね。こんな大きなドラゴンなら、簡単に鉄格子を破ったりしそうだけど……





それには心配ありません。当パークはお客様の安全と安心のため、最新鋭のセキュリティシステムと、檻には1000万ボルトの電流が流れておりますので、ドラゴンが暴れても感電して暴れられないようにしています。





それよりもドラゴンには!ドラゴンにはいつ乗れるんですか!





残念ながらこのドラゴンには乗ることはできません。


それを聞いて親父の顔が青ざめた。



そ、そんな……だってパンフレットには確かに乗れるって……





ドラゴンに乗れるのはこのアドベンチャーエリアではなく。別施設のアトラクションエリアのほうになります。





あ、そうなの?なーんだオジサン一瞬びっくりしちゃったよ♪





ガキかよ……





アトラクションエリアのドラゴンに乗れる施設は、子供のドラゴンですので、この成人したドラゴンよりも比較的大人しい種類がいます。





アトラクションのほうかーまっいいや。今日はアドベンチャーエリアを回って明日朝一でドラゴンに乗りに行くぞ!





朝一とかマジ勘弁





では次はスライムの見学エリアに向かいますので着いてきて下さいね♪





はーい♪


ガイドさんに言われて次のエリアに俺達は向かう。
そこで俺は周囲を見渡す。



しかし……





・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・





コスプレイヤー率たけぇ~


周りには戦士やら魔法使いやら勇者っぽいのがそこらじゅうひっきりなしにいる。
ここに着いてからまともな恰好してる人が圧倒的に少ない。



ほんとメルヘンだなここは、正直ファンタジーすぎて俺の頭では処理できん。





熱々のマンモス肉いかがですかー!ファンタジーの定番の美味しい美味しいマンモス肉だよ!





あっ、なんだ店員もコスプレしてんのか。





剣斗! 何してるのー!置いてちゃうわよー!





へいへい





今行くから


俺は親父達がいるガイドさんのツアーに戻った。



…………





……勇者様、この人ってあの時の……





ああ、魔王だ。





なんだか、ちょっと可哀想ですね……





かつては憎っくき敵だったが、こんな風に見世物にされているのを見たら同情する。さぞかしこいつも無念だったろうに。





・・・・・・・・・・・・・


彼等が観ていたのは『魔王のミイラ』と表記されている展示物だった。防腐処理がされていてかつて魔王だった者は、生きていた頃のままの姿を保っていた。
だが、そこに魂はなく器だけの脱け殻だった。



こんなところで感傷に浸っている暇はない。行くぞメルル。





あっ、はい勇者様!


二人のコスプレイヤーは魔王の亡骸を後にその場から立ち去った。
