美琴と一緒に部室に戻った俺は、若林先生や真琴の出迎えを受けることになった。
美琴と一緒に部室に戻った俺は、若林先生や真琴の出迎えを受けることになった。



…先生、それに真琴達も…。ご心配をお掛けしすいませんでした…





沢継、理由も聞かないし、責めもしない。
ただ、お前はパソコン部の部長なんだ。そのことだけは、もう一度心に刻んでおけ!





はい、分かりました。真琴や紗代にも心配をかけて、すまなかった





いいえ。美琴が部長を見つけてくれたお陰なんで…。
それに、大会での先輩の座は、実力で奪い取りたいですから!





私は真琴先輩に言われて動いただけですから…





一番心配していたのは、部長さんを見つけた美琴だったんですよ





お姉!余計なことを…





そうだったのか?





えっ、ええ、まあ…





ここに戻って来る途中でも言ったけど、ありがとう。美琴!





先輩…いいえ、お力になれたみたいで、良かったです!





よし。役者は揃った。今日も活動頑張っていくぞ!





はい先生!


部室の奥で練習問題を準備しているのか、亜美の姿が目に入ってきたが、俺は目に入ったこと自体を無かったことにしようと心の中で努力し、部活動へ集中することにした。



!!先輩!良かった…はあ、はあ…


走りながら俺の名前を叫び続けていたのだろう。美琴は肩で息をしていた…。



美琴!どうしてここが…





誰よりも早く部室に来る煉先輩が今日は居なかったんで、心配して探しに来たんです…はあ、はあ…





そうか…それで、俺を探しているのは…





私以外には、お姉と紗代が校内を探しています。お姉が先生にも相談してみるって、言ってました…





それにしても、先輩、どうしてここに居るんです?今日は正真正銘、部活動の日ですよ!?忘れちゃったんですか?





いや、そういう訳じゃなくて…今日は部活に行く気分になれない、というか…





…先輩、何かあったんですか?また、亜美先輩とのことですか?





…実は、昨日の放課後、答えをはっきり出されたんだよ…





えっ、じゃあ、その…





美琴が想像している通りだよ。第一、もしOKの答えだったら、俺がこんなに凹んで部活に行く気分になれない、なんて言う訳ないしな…





…先輩、学校に戻りながらお話しませんか?お姉達も心配していますし…





…そうだな…そうしようか


美琴に昨日起こったことの片鱗を話したことで、少し気持ちに余裕ができたのだろうか?
俺一人では向かう気配すら見せなかった脚が、学校へと向かって進みだした。



それにしても、どうして俺が土手に居るって思ったんだ?





以前、先輩と話していて聞いたことを思い出したんです。
「何か困ったことや悩みごとがあるときは、浅見川の流れを見に行く」
って先輩が言っていたことを…





それって、遠征前に100円ラーメンに行った時に話したことだったよな…
食べながら話していたことを、よく覚えていたな…





えっ、いや、たまたまですよ。たまたま…





とてもじゃないけど、先輩と話したことは全部覚えてます!なんて言えない…





でも、美琴とこうやって話していると、何だかとっても楽な気分になっていくよ!
それに、元気も分けてもらっているみたいな気分になるし!!





ほんとですか!私みたいなのでお役に立ててるなら、とっても嬉しいです!





正直、失恋したことを誰にも話せなくて、すごくもやもやしていたんだ。
迎えに来てくれたこともそうだけど、話も聞いてくれて、ありがとな!





…いえ。私で良ければいくらでも力になりますよ!それに、失恋くらいで、先輩の力を世に示せなくなるのは、先輩も不本意じゃないんですか?





失恋くらいって…まあ、美琴にはそう映るのかも知れないけど、俺にとってはとても重要なことだったんだよ。
気持ちの整理がつかないまま、部室には入れない、とも思った訳で…





…そうですよね。
失恋した相手と部活では顔を合わさなけりゃですし、ね…





そうなんだ。でも、美琴に全部話してスッキリしたよ。もう大丈夫だ





はい!お姉も、先輩に実力で勝ちたいって、常に言ってますしね。





よし、部活開始まであと少しだな…。部室まで急ごう!





はい!


俺は自然と美琴の手を握ると、学校めがけて走りだした。
美琴の心の温かさが伝わってくるかのように、握ったその手からは俺を包み込むような温かさを感じた。



練習問題125-38。10分計測、よーい、始め!


いつも通り亜美率いるマネージャー陣3名が問題を配り終わると、タイマーを片手に持った亜美の声で部活動がスタートした。
美琴にはああ言ったものの、失恋による俺の精神的なダメージは大きかったようで、いくら集中しようとしても、問題になかなか集中ができず、得点が真琴と僅差になることもしばしばだった。
だが、俺は部長としてでなく、一人の選手として他の部員に負ける訳にはいかなかった。



本調子でない時こそ、本当の実力が出る!!


と部活中常に口にする若林先生の言葉を、声を出さない呪文のように唱えながら、俺は部活動に臨んだ。
そして翌日、地区予選の選手を決める校内選考が行われた…。
第3話 に続く
