魔王を倒した勇者たち一行は、それぞれ平和な生活を送っていた。
魔王を倒した勇者たち一行は、それぞれ平和な生活を送っていた。



師匠。この薬はどう、売れそう?


青い薬の入ったビンを指さして魔法使いは師匠に尋ねた。



うーん、これは無理だな。





ええー!?あたしの最高傑作だよ!





魔物はもうほとんどいなくなってるんだ。そんな世の中に魔力を無効化してもな。





……ほかのは。


少しテンションを落としながらも、旅で使ってきた薬を並べながら魔法使いは言った。



副作用がなくなれば売れそうな物もあるが…基本的魔力に対しての薬ばかりだからな。





もう!金勘定ができない癖に文句ばっか言って!





それは関係ないだろ!


玄関先から控えめなノック聞こえ、一人の兵士が現れた。



あの、魔法使い様はこちらにいらっしゃいますか?





なーに。あなただれ?





なあ先生、直さなきゃダメなのか。





当たり前だ。騎士とは仕える者に敬意を表さなくてはならない。まずはその口調を直せ。


女勇者の騎士に、騎士としての礼儀を習っている剣闘士は、ひたすら面倒そうな顔をしていた。



どう直すんだよ。





直せばいいのでしょうか、だ。





…直せばいいのでしょうか。





そうだ、そうやって習慣づけていけ。





先生!わたしは別に口調を変えるために騎士になったわけじゃねえよ!





強いだけで騎士が務められると思うな!





うえー。


そこに気真面目そうな兵士がやってきた。



失礼します!剣闘士様はこちらにいらっしゃるでしょうか!





ん?わたしだけどなんだ。





勇者!俺と勝負しろ!





…なんで。


町を歩いていた勇者は一人の男に絡まれていた。



魔王を倒したらしいお前を倒して、女の子にモテモテになるためだ。





別にオレ一人の力で倒したわけじゃないんだがな。





お前以外は全員女の子だったって聞いた。俺は女の子と戦う趣味はない。





さあ勇者!剣をとって俺と戦え!





……勇者。


二人の間に割って入るように騎士が勇者に声をかけた。



騎士、どうしたこんなところで。





……話がある。来てほしい。





わかった。





ちょっと待て勇者!


慌てたように勇者を呼び止める男。



なんだ…。





その子は誰だ。





騎士だ。一緒に魔王討伐に行った仲間だ。





こんなかわいい子とだと!絶対に許さないぞ勇者!





何で怒られてんのオレ。





……うるさい、私は勇者に用事がある。





は、はい。


騎士がすごむと怯えたような表情で男は返事をした。



行こう。





今に覚えてろよ勇者!





……。





うひい!





ここはこう…いや、こうですかね…。





なにやってんの女勇者。


何かものを書いている女勇者に女勇者の魔法使いは声をかけた。



自伝を書いているんです。





自伝?





はい。平和な世の中になってしまった以上、私の英雄伝を伝えるには私の活躍を記すしかありません。





私が魔王を倒していれば…、しっかりと伝説が語り継がれていったのに。





あるじあるじ、どんなこと書いてるの?


獣の耳の生えた娘が屋根の上から飛び降りてきた。



ああ、戻ったんですか。





ただいまー!





しかし、帰りにまた変なのを拾ったな女勇者は。





ちょうど情報収集役が欠けていましたからね。あの片眼鏡くんより獣娘のほうがよく働いてくれますし。





にしても意外にいる者なんだな、魔力を得た人間って。





私も強くなれるのならほしいですけどね。





それよりあるじー!なんか変な噂を聞いたよー!





変な噂?





なんか機械がどうとかって町で話してた。





なに一つわからないぞ、それ。





いえ、これは何かあるかもしれませんよ。





獣娘。引き続き情報収集をよろしくお願いします。





かしこまったー!


獣娘はぴょんと屋根に飛び乗ると、身軽に屋根を飛び移っていった。



さて、では私たちも騎士さんの元に行きましょうか。





ええー!これから姐さんのお店に戻る予定なんだけど。





そんな暇はありません!手伝いもしばらくは禁止です!





そりゃねえよ…。





ええええええええ!お父様操られていたんではなかったんですか!?


城では姫がいつものように騒いでいた。



いつも騒いでなんかいません!


私はなにも知らない。



魔法使いにそう言うように、私が頼んだんだ。





じゃあなんで私の同行を許可したんですか!


怒りの表情の姫に対して、王は真剣な表情で向かい合う。



姫よ。いつかはお前も王女となる。そのためにはいろいろな経験をしておくべきなんだ。





これもお前のためなんだ。





魔物にされたり、魔王に誘拐されたり、変な薬一杯飲まされることもですか?





もちろんだ。





絶対違います!


姫が親子喧嘩をしていると騎士が勇者を連れてやってきた。



王様、失礼します!勇者を連れてきました!





騎士、王のところに連れてきていったい何の用だ。





騎士様?それに勇者様まで。





ご苦労、騎士。





王、直々の呼び出しとは、いったい何の用ですか。





勇者よ。其方のおかげで世界に平和が訪れた。





はい。





魔物の数も減ってきている。しかし、機械の兵士からの被害が、このところ多く報告されるようになったのだ。





機械?





ああ。ここらの町ではあまりないが、遠くでは生活に使われている技術らしい。





魔物がいなくなったが、またも世界の平和を乱そうとするやつが現れている。





………。





勇者よ!この機械の兵士たちを倒し、世界を平和にしてくれ!





わかりました。必ずや平和を取り戻してみせます。





それで仲間たちには。





もう報告は済んでいる。そろそろ来る頃だろう。


そう言った頃、外からどたどたと足音が近づいてきた。



勇者!先生がうっさいんだ!やっぱりお前と旅してたほうがいい!





なんかまた変なのが出てきたらしいね。また薬の実験ができそう。





……平和のためなら手伝うぞ、勇者。


勇者たち一行が揃い、勇者は一呼吸つき彼女らに言った。



よし、早速出発するぞ!





勇者様、頑張ってきてくださいね!





なに言ってるんだ姫。行くぞ。





行きません!なんでまた行かなきゃならないんですか!





姫よ、行って来い。





お父様!





王の許可も下りた。行くぞ!


勇者は姫の手を取り走り出す。



ちょっと勇者様!引っ張らないで!





置いてくなって言ってただろ。





今は置いてってもらったほうがうれしいです!





今回はしっかり手を引いてやるからな。





なんで私まで一緒に行くんですかー!


こうして新たに現れた平和を脅かす存在を倒すため、勇者たち一行はわがまま姫を連れて、新たに旅立とうとしていた。
私が勇者とともに旅をする
完
