【今回のまとめ】
・「亀夫君問題」はTRPGではない。しっかり「水平思考」を使おう!
・出されている情報には何か意味がある。いろんな情報を、いろんな視点から考えてみよう!



カメコと名乗る少女から、「ラテシン国物語」という本を探してほしいと頼まれたライナー君。
何とか貸し出し可能な1冊を見つけた物の、それは別の人に借りられてしまった。





「ラテシン国物語」は図書館にあった2冊とも貸出中。
カメコは無事「ラテシン国物語」を借りられるのだろうか?





……





で、ライナー君、何かいい案は思い浮かんだかい?





いや、全然……





頭の固いライナー君だから、そんなことだろうと思った。





仕方ない、とりあえず水平思考とは何か、という話から始めようか。





いや、それは分かっているよ。
そもそも最初に詳しく説明したの、私だったじゃないか。





あれ、そうだっけ?
どっちでもいいのだけれど。





「年老いた醜い金貸しに借金した父親と娘の具体例での水平思考」の話は知っているだろう?





ん、あ、いや、どこかで聞いたことがある気がするのだが、どこだったかな……





要するに知らないんだね。
ラテシンのルール説明の所に書いてあるじゃないか。





え、あ、そういえばそうだったな。





しっかりしてくれよ。私たちはラテシンのマスコットキャラクターなのだから、これくらい知っていて当然だろう。





すまないね、マスコットキャラクターなのに知らなくて。





一応、どんな話なのか話しておこう。登場人物は違うけれどね。





ライナー君は、私に庭にある白い石と黒い石を使ったゲームで勝負を持ち掛けられた。
袋に白い石と黒い石を1つずつ入れてそこからライナー君が1つ石を引き、白い石を引けばライナー君の勝ち、100円がもらえる。黒い石を引けば私の勝ち。ライナー君の髪の毛は全滅する。





不公平すぎるぞそのゲーム! そんなの絶対お断りだ!





しかし、ゲームをしなければライナー君の財産はすべて没収されてしまう。





だから不公平すぎるって! なんでシンディが圧倒的有利なんだよ!





大体そういうような話なんだし、それをわかりやすく例えているだけじゃないか。





たとえ話とはいえこの条件は酷過ぎるとおもうのだが……





さてさて、立会人のもと勝負をすることになったのだが、あろうことかライナー君は私が黒い石を2つ袋に入れるのを見てしまった。
普通にゲームしたのでは確実に負けてしまう。さて、どうする?





既に圧倒的に有利な状況なのに、さらにズルをするなんて卑怯だな。





まあ、元の話でも、借金をした少女を罠にはめるために仕組んだゲームだしね。





この状況から、ライナー君が取ると考えられる行動は?





いやまあ、普通に考えてシンディがズルしていることを立会人に公開するだろう。





ゲームに挑んで髪の毛を全滅させるか、ゲームを拒んで全財産失うかっていう選択肢もあるけれど?





どっちも嫌だよ! それならズルしているのをばらして五分五分の勝負に持ち込んだ方がまだましだよ!





五分五分、ねぇ。なんなら、条件を君が有利な方に変えてあげようか?





え?





さっきと同じ設定だけれど、私がゲームを挑まれる側。私が勝てばライナー君から1000円貰う、ライナー君が勝てば私は全裸。ゲームを拒めば私は全財産を失う。
で、ライナー君はズルして白の石を2個袋に入れる。
これでどうだい?





ほう、さっきと比べるとマイルドになった気がするけれど、確かに私の方が圧倒的に有利だね。それだったら是非ともそのゲーム、やってみたいね。





ふぅん、そうかい。石を引くのは私なんだけど、いいんだね?





そりゃだって、どっちを引いても白なんだから、私が勝つわけだろう?





そう。
じゃあまず、私はこのゲームを引き受けます。





ほぅ、全裸の方がマシだと?





私の裸なんて見たら、ライナー君も読者のみんなも、鼻血を出して倒れてしまうよ。
まあ、そんなことにはならないだろうけれどね。





なんだ、随分自分の身体に自信があるんだな。
別に私はロリコンではないから、シンディの裸を見たところで……





ん、「そんなことにはならない」?





別に、裸に自信があるわけじゃないけどね。
さて、ゲームを始めよう。
私は袋から石を引き、すぐさま庭に捨てます。





いや、捨てたところで、それは白の石なのは明らかじゃないか?





どうして明らかなんだい?
私は「白の石と黒の石がある庭」に、引いた石を捨てたんだよ?
混ざっちゃってどっちを引いたかなんて分かるわけないじゃないか。





いや、だって袋の中には白い石が2つ入っていたわけだし……





ほぅ、勝負を仕掛けたのは君の方だよ?
「袋には黒い石と白い石が1つずつ入っている」と言ってね。
「白い石が2つ入っている」と言うことは、君は大勢の立会人に、自分がズルしていると認めることになるのだよ?





なっ……





ちなみに、ズルが発覚した場合、勝負を仕掛けた方の白血球がすべて抜き取られます。





死んじゃうじゃないか!
そもそもそれなら、私が最初に言った通り、「ズルしていることを周りに告げる」で正しいじゃないか。





え、いや、もしゲームを始める前にばれたら、「石入れ間違えちゃった、てへっ☆」でごまかしてもう一度石を入れ直すけれど?





そんなのアリかよ。しかも「☆」は何なんだ……





そんなこんなで、ズルをしたことが発覚するのを恐れ、そのことは言えないライナー君でした。





いやしかし、だったら引いた石がどっちかなんて、わかんないじゃないか?





残った石を見たら分かるじゃん。





えっ?





だって、この袋には「黒い石と白い石が1つずつ入っている」のだろう?
だったら、残った石が白い石なら、私は黒い石を引いたことになるじゃないか。





なっ……





ライナー君はズルして白の石を2つ袋に入れている。どっちを引いても、残っているのは白い石。
ということは、周りから見れば「引いたのは黒い石」だと判断されるわけ。
ということで、このゲームは私の勝ちだから、1000円頂戴ね。





そんなん卑怯じゃないか!





最初にズルしたのはライナー君じゃないか。最初から白い石と黒い石を入れておけば、勝負は五分五分になったのにね。





いやまあ、それはそうだけどさぁ……





勝負の話は別として、これが「水平思考の考え方」さ。
「垂直思考」だと、どうしても引いた石に目が行ってしまう。だから、「引いた石の結果」を考慮した最適な方法はどれかを考えてしまうのさ。





しかし、「水平思考」は「残された石」に注目する。
与えられた条件をフル活用するのさ。





そうだねぇ、例えばゲームのルールを書いてある通りにとらえてそれを守るが「垂直思考」で、そのルールの穴をついてズルだと思われることをやるのが「水平思考」かな。





ふむ、少々真面目に考え過ぎたようだな。





真面目な人は、垂直思考にとらわれがちなんだ。
逆に計画的な犯罪を考える人は、たくさん水平思考をしているよ。悪いことをして捕まらないようにするためには、ルールの穴をつく必要があるからね。





そんなことを言われると、水平思考ゲームは犯罪者育成の場のように聞こえてくるな……





もちろん、犯罪者ばかりではないよ。
目の付け所を変えた新商品を開発したり、視点を変えた商売で成功している人もいるからね。
手品なんかも、人々の先入観を利用したものは沢山あるよ。





水平思考というものは、結構身近にあるものだな。





そういうことだね。





さて、長々と話をしたけれど、何かヒントになりそうなことはあったかい?





そうだな、さっきの「白い石と黒い石のゲーム」の話は参考になりそうだ。
さっきは「引く石」ではなく、「残った石」に注目していたわけだが……





……ん、今回の問題だと、「貸し出し可能な本」よりも、「貸出中の本」に目を付けろ、ということか?





お、分かっているじゃないか。





いやしかし、2冊とも貸出中の本を、一体どうやって手に入れるのだ?





1冊は読んでいた人が借りていっちゃったから、それを手に入れるのは難しいだろうね。





そもそも、貸し出し可能な本を借りればいいのであれば、わざわざ問題で「1冊は貸出中」なんて設定する必要はないとは思わないかね?





ふむ、そういえばそうだ。「1冊が貸出中」というのは、何かありそうだな。





ライナー君は、「貸し出し可能な1冊」に注目して話を進めていったけれど、これは「引いた石」に注目するのと同じ発想だよ。
だから、この1冊が借りられなくなると、手詰まりになってしまう。





「ウミガメのスープ」でもそうだけど、その設定にしているのには、基本的になんらかの意味があるんだよ。
もちろん、それは「クルー」とは限らないけれどね。





亀夫君問題でも、問題文の言葉の意味や、得られた情報の意味を考えることが重要なんだな。





そう、解決の糸口になるものは、どこにあるかわからないからね。





なるほど。とりあえず「貸出中の1冊」について調べてみるか。
これが鍵になるとすれば、この1冊を借りることが出来れば何とかなるかもしれないな。





カメコさん、「ラテシン国物語」の貸出中の本がいつ返却されるか、司書の人に聞いてもらえませんか?





司書に聞いたら、今日が返却期限になっているって言ってたわ!





おお、これなら返ってきた本を借りられれば、この問題は解決できる!





やったじゃないか、大進展だよ、ライナー君!





出題者に褒められても、素直に喜べないな。





まあ、まだすべてが解決したわけではないから、安心はできないけれどね。





やっぱりまだ何かあるのか……





さあ、どうかな。
それは次回のお楽しみということで。
あと、1000円は今日中にお願いね。





あげないよ! そんな卑怯なゲームで巻き上げられたらたまらないよ!


【今回のまとめ】
・「亀夫君問題」はTRPGではない。しっかり「水平思考」を使おう!
・出されている情報には何か意味がある。いろんな情報を、いろんな視点から考えてみよう!
