百人一首を学びませう
百人一首を学びませう



あ~あ、忘れ物した


藤原トオルが下駄箱で靴を履きかえようとして忘れ物をしていることに気づき、教室に引き返すと、そこには見覚えのある人物が…



あれ? 笹塚先生


生物教師笹塚は、生徒の席に座って読書をしていた。
不意に名を呼ばれゆっくりと顔をあげる。



おう。トオルか





てか先生、なぜ教室にいらっしゃるんですか?


生物教師で同準備室に自室を持ち、なおかつそこを腐海の森の如く書類や書類や書類を足の踏み場無く展開させている笹塚先生が教室にいる理由、それは



え? 教室が広くて殺風景で落ち着く、から?


どうやら生物教師笹塚は掃除ができないらしい。



……いい加減部屋
片づけたらどうですか?





んー、めんどい





ところでそれ、
何読んでるんですか?


忘れ物を取りに戻っただけなのに、冬織はなかなか話を切り上げられないでいた。知りたくもないが、気になる人が自分の席に座って何を読んでいるかぐらいは聞いてもいいか、冬織の問いはそんな単純な理由で発せられた。



あーこれ?


笹塚先生は冬織に表紙が見えるように本を閉じる。



『小倉百人一首』





……へー


聞かなきゃよかったと後悔したがそれもあとの祭りである。



なんか嫌な予感





しょうがねえな。
どっこいしょ


楽しそうに言って笹塚先生は居直ると、冬織の顔を真正面から見据える。



笹塚せんせいがかわいい冬織くんの為に解説してやんよ♪





え。いりませんよ?





ばっっかお前。短歌は昔の人たちの恋愛ツールだぞ





うん。だから?





知りたくねえの?





……別に?





やめて。センセイ悲しくなっちゃう。そこは『知りたいです』って言って





嫌ですよ。誰が好き好んで百人一首なんか。パンダのぬいぐるみとでもやったらいいでしょう





ヒドい。けちんぼー





ひどくないし





じゃあ、どうすりゃいいの?





…そんなにやりたいんですか?
百人一首の解説なんか…





うん





まあ、別に構いませんけど、
そんなの、面白いんですか?





う……





何も考えてないんだ





ま、なんとかなるって





なにが、どう、
なんとかなるんですか?





♪~





おい





…次までに
考えてくるって





…もうしょうがないな。
じゃあ、どこからですか?





よし! まずは天智天皇からな





はいはい





俺は現代語訳をさらに噛み砕いてわかりやすく読んでみようと





はいはい





って聞いてるー?





はいはーい





…といわけでここでは
『小倉百人一首』を





男二人が





ゆる~く紐解いていく感じの御話です





興味のある方は次回をお楽しみに♪


つづく
