生徒会室に行くと、桃が携帯電話をじっと見つめながら小さくハローと呟いた。眉間にシワを寄せ、とても真剣な表情をしている。
生徒会室に行くと、桃が携帯電話をじっと見つめながら小さくハローと呟いた。眉間にシワを寄せ、とても真剣な表情をしている。



桃やん、どうしたの。怒ってるの





いんや、会長。私は真剣なだけ。いつウィッチが現れるのかなと思って





今日は自分で監視してるんだね





そう。いつでもどこでも、駆けつけて取っ捕まえてやるのです





まあ、前回みたいに事後報告だと、なんもできないけどね


忍が口を挟むと、うるさいよと桃に睨み付けられた。おおこわ、と忍は目をそらして、席につく。



この前も、第一発見者は桃だったの?


忍が訊くと、ううんと桃は首を横に降った。視線はずっと、携帯電話に注がれたままだ。



私が入ってきたときは、すでに晃弘と桜歌がパソコン立ち上げてた





じゃあ、晃弘が見つけたのか?


いや、と晃弘は首を降る。



あの日は桜歌が一番に来てたよ。俺が入ったときにはすでにパソコン立ち上げて、例の書き込みを見てた。友達が教えてくれたって言ってたよ





なるほどね


時系列としては、その後、忍が生徒会室に入るとすぐに、桜歌からことの概要を聞いた。そして、聞き終わるや否や、ウィッチからの書き込みがあったのだ。
何がなんだか分からないまま、桜歌に連れられて科学室まで行き――あの惨事だった。
まだかな、と言おうと忍が口を開きかけたそのときだった。



あっ! ウィッチだ! 書き込まれ――え、えぇ?


桃がすっとんきょうな声をあげる。ええ? ええ? と繰り返す。
どうしたんだよと晃弘が画面を覗きこみ、すぐに桃と同じようにはあ? とすっとんきょうな声をあげる。



どこだ? 何だって?


忍は桃から携帯電話を取り上げた。桃が、どうしようとつぶやく。書き込みに目を遠し、忍もこう言う他、なかった。



は、あ?





No.1550 ルビーウィッチ 2015/5/25 17:50:07
開かずの屋上を開けました!みんな来てね!
ちなみに、叶えた願いはこの願いだよ!
>No.665 わがまま君 2015/5/23 19:08:67
開かずの屋上を開けてほしい。
そこでどうしても、三年一組の宮野桃さんに伝えたいことがあるんだ
ということで、三年一組宮野さんも、屋上に来てね!
私がゴーサインを出すまで、勝手にはじめないでね!


確かにこういう書き込みがあったな、と忍は舌打ちをする。
これは、例えば晃弘とデートがしたいと言う書き込みがあったように、冗談の類いとして、ウィッチにもみんなにも、処理されると思っていたのに。
しかも、よりによって、このやろう。



屋上……だなんて


香里が、信じられないといったような口調で言った。その場にいる全員も、同じ気持ちだった。
屋上だなんて、信じられない。



桃、どうする


晃弘が訊くと同時に、桃は立ち上がっていた。



行くよ。ウィッチがいるかもしれないでしょ。何が起こるか分からないけど、みんなも一緒に来て、よくよく観察しといて


桃の表情に、笑顔はなかった。声こそ落ち着いているが、握りしめている拳が震えていることからわかる。



しかし、私を、というか三年生を屋上に呼び出すなんて、どんな神経してるんだろうね


桃は、怒っていた。それはそうだろう、と忍は思った。
屋上に、いい思い出がある三年生はいないだろう。



屋上に呼び出すなんて、ウィッチも依頼者も、年下だろうな


晃弘が、そっと忍に耳打ちした。
忍は、こくりとひとつ、頷くことしかできなかった。
