昔々、あるところに、3歳になる女の子と、その両親が住んでいました。女の子は”チビ乃”と呼ばれ、たいそう可愛がられておりました。
ある日ママが、チビ乃におつかいを頼みました。
昔々、あるところに、3歳になる女の子と、その両親が住んでいました。女の子は”チビ乃”と呼ばれ、たいそう可愛がられておりました。
ある日ママが、チビ乃におつかいを頼みました。



チビ乃、おばあちゃんの家に、おつかいに行ってくれないかしら





やだよ?





当然のように言ったね


チビ乃は第一次反抗期、いわゆるイヤイヤ期でした。



そっかー…、わかった!じゃ、こうしよう。このブドウ酒と、アップルパイを、おばあちゃんちに届けてちょうだいね





あい!





よし


ママも慣れたものでした。



さ、チビ乃。この赤ずきんをかぶって行きなさい





なんで?





あなたというターゲットを見失わないためよ





へ~、そうなのぉ~


ママは、たまに適当な説明をする人で、チビ乃は知ったかぶりが得意でした。



いってきましゅ!


チビ乃は、ママの言う通り、しっかりと赤いずきんをかぶり、ぶどう酒とママお手製のアップルパイが入ったバスケットを持って、元気よく家を出ていきました。
ママは、どうやら娘のはじめてのおつかいを、ツイッターで実況するつもりのようです。そろりそろりと、コードネーム・赤ずきんの後をつけていくのでした。
一方その頃、元気よく家を飛び出した赤ずきんは、早速目的を見失ってしまいました。



…なんだっけ?…ま、いっか。お花ばたけだーーーー!





きれいだなーーー?





…あれは完全に目的を忘れているな


ママが、この状況をどうしたもんだか悩んでいると、ママのもとへ狩人のパパがやってきました。



パ、パパ!?





はじめてのおつかいと聞いて飛んできました





え、仕事は?


パパは有給をとっていました。



…こいつ…





で、状況は?今どうなってる?





あの子、当初の目的を完全に忘れてるみたい





…よし、ここはパパに任せろー!


パパはそういうと、あらかじめ用意していたオオカミの着ぐるみに身を包み、チビ乃の元へ走っていきました。



やあ、お嬢ちゃん。こんなところで何をしてるんだい?





…あー、オオカミさんだーー。なにしてるのぉーー?





うん。こっちが聞いてるんだけどな





チビ乃ねー、おつかい中なのー!





そうなの?遊んでていいの?





いいんだよ?





いいのーーー!?…よくないよー、おばあちゃん待ってるよー!!!!





…そういうことかー。そうでしたー!オオカミさん、ばいばい!


チビ乃が出発したのを見届けたパパは、LINEでママに報告しました。



…なにしてるのぉー?





なんでもないよー❤


パパはチビ乃に見つからないように、おばあちゃんちに先回りをすることになりました。
そして、チビ乃より一足先に着いたパパは驚きました。そこには、誰もいなかったからです。それをパパからLINEで知らされたママは、大慌てでおばあちゃんに電話をかけました。



ちょっと、お母さん!?今日行くって行ったよね?今どこ!?





アラマッ!?今日だっけ!?


おばあちゃんは日付を勘違いしていて、遠いところへ外出中でした。
パパは大慌ててで寝室のタンスを漁り、着ぐるみの上からおばあちゃんのパジャマを身につけ、ベッドに潜り込みました。
そうこうしているうちに、チビ乃は無事、おばあちゃんの家に辿り着くことができました。



ばあばー!チビ乃だよー!一人で来られたよーーー!





俺はいったいどうしたら…?ママ…!応答セヨ、ママ…!


ママは感極まって一人で泣いていました。



ちょっとォーーーーー!!!???





こんちはーーーー!チビ乃だよーーー!


パパは上ずった声で答えました。



オバアチャンダヨォ~~


ママはツイッターを更新しました。



はいっていーい?





モチロンダヨォ~~~





どうしたのー?こえが、ヘンだよ~





…ヘリウムガスを吸い込んじゃったんだヨォ~





・・・・・・・・・・・





なんで吸ったの~?





興味本位ダヨォ~





…へぇ~、そうなのぉ~





こんな説明でいいんだ!?


色々と人のことは言えないママでした。



どうしてそんなに、おててがモジャモジャなの~?





…第二次性徴期ダヨォ~





そのうち喉仏も出てくるヨォ~





どんなババアだよ!!!!!!!


ママは突っ込まずにはいられませんでした。



じゃあどうして、そんなにおみみが大きいの?





…ナンデダロウネ~?





ね~?





あいつ、飽きて来たな…


ママはLINEでパパに指示を出しました。



…チビ乃チャン、バアバに、ドウシテ、会イに来テクレタノカナ?





あのね、あいたかったからーーー!!!





おつかい忘れてるぅーーーーーーー





…ナニカ、ママから頼まれたんじゃないノカイ?





あ、これねー、たべてほしいのー!


そういうとチビ乃は、バスケットから不穏な香りのするアップルパイを取り出しました。



…まさか。これ…ひょっとして、ママが作ったノ?


そのまさかでした。
そのアップルパイとされたものは、黒く固い、よく分からない物体でした。



…これを本物のお義母さんに食べさせるわけにはいかない…


パパは何かを決意したように、そっと目を閉じると、口に一気に放り込み、ぶどう酒で流し込みました。



……あれ?ばあば?ねんねー?


パパは、そのまま動かなくなってしまいました。
ママのフォロワーは色々と察したようでした。



ま、いっか★ちび乃、かえりゅねー!


そうして、チビ乃は無事、家に辿り着き、はじめてのおつかいは大成功に終わりました。



…あれー?パパはー?





遅いね~~


パパは帰宅したおばあちゃんに、泡をふいているところを発見され、救急車で運ばれたのでした。
めでたしめでたし
