舌切り雀はたとえ羽ばたけなくとも
6話
むかしむかしあるところに、
気持ちの良い日差しと炊事のよい香り。



う~~ん、いい朝だ……


日が差し込むまで寝ているとは、ずいぶんとお寝坊さんです。



あれ!?!





わ、私は? 村は、消えてしまったんじゃないのか!?


スパ――ン
障子が勢いよく開かれます。



出来ましたわーー昼ご飯! 冷めてしまいますよ早く早く!





雀さん、どうなってるんだ! 私は、なんで!





なんでじゃありません。寝坊なんてするから朝ごはん抜きだったんですよ!





いやいや、そういうことではなく!





なんで、私は、消えずに残っているんだ?





イノリの翼を何だと思ってるんです。





あれが、この村の安定剤として設置されてから五年以上。





それだけの期間しっかり安置されていたのなら、村は十二分に安定しています。





多少、翼を使ったくらいで村やあなた達が消えてしまうことはありませんよ。





それでも寿命は多少なりとも削ってしまいましたけどね……





ともかく! 消えてしまうだなんて早とちり。お馬鹿さんね!





お陰で旦那さまの愛の言葉が聞けて、あたしは耳が大変幸せでしたよぉ!





ぐおおおおウソをついたのかーーーー!騙された……!





あら! あたし自身は消えてしまうなんて一言も。鬼が言ったことを勝手に解釈してしまったのでしょう?


忘れてはいけません! この女、しらを切るのです……!



もう一回聞きたいわ! ほら早く!





もう出てこない! 助けてくれ! 離してくれうおおおおお!





はい。これで翼はつづらにしまいましたからね。





本当は、軽々しく出しちゃいけないものなんですよ。





……





……





でも、みなさんの行動と気持ちが、うれしかった!





でも規則は規則。今度勝手に触ったらバチが当たりますからね!





なんか……でかくなっとらんか……?





そもそも蓋に手が届かん……





おねーさん、遊びましょ!





いいわよお♪





ねえおねーさん。





んー?





わたしたちは、オバケなんだよね?





この間のこと、大人はみんな口に出さなくて忘れたふりしてるけど……忘れたって逃げられないよ。





そうだね。





でも聞きたいのはそういうことじゃなくって。





おねーさんはどうして、そんなわたし達を守ってくれるの?





だって、オバケだよ……?





意味、ないじゃない……





意味は、あるよ。





あたしはこの村で、安らぎを得た。だから、守ることに決めたの。





!





あたしと遊んでて、楽しい?





……うん!





じゃあ、それが答え!


昔々あるところに。
魂だけとなった人間の成れの果てを、村として安定させ共に生きる、とんでもない女がおりました。
女は戦うためだけに作られた、戦闘兵器でした。彼女は戦いを捨て安住を求めました。しかし、村を守るため、やはり戦います。
お陰で村は守られ。常に活気に溢れ、時たま女の高笑いが響き、それはそれは賑やかであったそうな。
おしまい
